<黒字企業割合が11年ぶりに低下!> 令和3年版「TKC経営指標(BAST)」を発行 ― 全国352金融機関等で融資審査などに利用―
TKC全国会(会長:坂本孝司/事務局:東京都新宿区)は、6月1日より令和3年版「TKC経営指標(BAST)」をWeb方式で提供開始しました。
令和3年版BASTは昨年1年間(2020年1~12月)にTKC財務システムを利用して決算を迎えた年商100億円以下の中小企業の経営成績と財政状態を分析したもので、24万8,289社(全法人数の9%超)、1,170業種を収録しています。
昨年より深刻化した新型コロナウイルス感染症の拡大。その中小企業経営に与えた影響が令和3年版「TKC経営指標(BAST)」に以下のとおりはっきりと現れています。
Ⅰ 令和3年版「TKC経営指標(BAST)」のポイント
◆令和3年版「TKC経営指標(BAST)」のポイント(令和2年版との比較)
①黒字企業割合が2.3ポイント低下し、51.8%(11年ぶりの低下)
②1企業当り平均売上高は対前年比96.9%(7年ぶりの減少)
③経常利益が大幅に減少(対前年比:82.9%)
④1人当り売上高・人件費がそろって減少
⑤長期借入金が大幅に増加
1.【産業別黒字企業割合】黒字企業割合が2.3ポイントの低下
2020年の全産業の黒字企業割合は、コロナ禍の影響を受け、前年の54.1%から2.3ポイント低下して51.8%でした。
産業別に詳しく見ると、最も低い産業は宿泊業,飲食サービス業で、前年から9.9ポイント低下し26.2%でした。
2.売上高が減少
2020年の全産業の売上高(1企業当り平均額)は、前年から7,121千円減少し、225,556千円(対前年比96.9%)でした。
産業別に見ると、建設業を除くすべての産業で、前年と比べて売上高が減少し、その中で対前年比が最も低かったのは、宿泊業,飲食サービス業の89.5%でした。
3.経常利益が大幅に減少
限界利益率が前年から0.8ポイント上昇(44.2%→45.0%)しましたが売上高の減少をカバーできず、結果、2020年の全産業の限界利益は、前年から1,373千円減少(対前年比98.7%)しました。また、固定費も僅かに減少したものの、全産業の経常利益は、前年から1,290千円減少の6,245千円(対前年比82.9%)でした。
産業別に見ると、建設業を除くすべての産業で、前年と比べて経常利益が減少しました。
4.1人当り売上高・人件費がそろって減少
2020年の全産業の平均従事員数は、前年から0.3名増加(13.7名→14.0名)し、1人当り売上高(年)は前年から901千円減少の16,111千円、1人当り人件費(年)は41千円減少の3,919千円でした。全産業の労働分配率は、前年から1.4ポイント上昇の54.0%でした。
5. 長期借入金が大幅に増加
2020年の全産業の簡易キャッシュ・フロー計算書を見ると、前年と比べて、税引前当期純利益が1,141千円減少し、営業活動によるキャッシュ・フローは247千円減少の9,374千円でした。設備投資は前年と比べて718千円減少し、営業活動によるキャッシュ・フローを下回りました。また、長期借入金が大幅に増加(7,336千円増加)した結果、財務活動によるキャッシュ・フローは4,933千円増加の7,147千円となり、結果として、現金預金は7,476千円増加しました。
Ⅱ 金融機関における「TKC経営指標(BAST)」の活用
TKC全国会は、調査に協力したTKC会員、全国20のTKC地域会と「中堅・中小企業の持続的成長支援」の覚書を締結する金融機関、信用保証協会へBASTを提供しています。利用金融機関数は352機関(5月25日現在)で、約7,500のBAST利用IDを発行しています。金融機関数の内訳は、都市銀行3行(都銀における利用行割合60.0%)、地方銀行51行(79.7%)、第二地方銀行32行(84.2%)、信用金庫191庫(74.9%)、信用組合43組合(33.1%)、信用保証協会23協会(45.1%)、その他9機関となっています。
利用金融機関では、融資審査等での比較データとしての利用に加え、中小企業の経営改善を支援する際のベンチマークとして活用するなど、中小企業金融における“目利き力強化に役立っている”と評価が高まり、年々、利用機関数・ID数とも増加しています。
TKC全国会では地域金融機関と協力して中小企業、地域経済の健全な成長・発展を支援してまいります。
◆「TKC経営指標(BAST)」要約版・速報版
BASTは原則としてTKC会員以外への提供等を行っておりません。
ただし、より多くの企業経営者等に自社の現状分析や経営方針決定等でご活用いただくため、要約版および速報版を公開しています。
◇閲覧方法
下記のTKCグループホームページ「経営者の皆様へ」サイトから閲覧できます。
URL:https://www.tkc.jp/tkcnf/bast/sample/
〈ご参考〉
◆前金融庁長官・遠藤俊英氏の推薦のお言葉
前金融庁長官の遠藤俊英氏より、「TKC経営指標(BAST)」を推薦するお言葉を、次のように頂いています。
〈推薦のことば〉
TKC全国会の会員の皆さまにおかれましては、日頃より、全国の中小企業の適正申告と経営改善の実現に向け、積極的に取り組んでおられることと存じます。深く敬意を表する次第であります。
今回TKCから「TKC経営指標」(令和3年版)が発刊されました。この令和3年版は、令和2年1月期から令和2年12月期までの法人企業を母集団とする、速報性ある経営指標であります。これはまた、TKC会計人の関与先である24万社を超える法人企業が税務申告をした財務諸表を母集団として作成された、中小企業経営の指標でもあります。TKC会計人が実践してこられた、厳格な巡回監査の結果の集大成といえるものです。その意味で、地に足がついた大変貴重な資料だと思います。さらにこの資料は、TKCならではの精緻で実用的なものであり、業界毎、経済圏毎、会社の規模別、業績別(優良企業、黒字企業、欠損企業)など、実務に沿った分類でデータが取れるように工夫されております。
ひるがえって、世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の下、依然として厳しい状況ではありますが、着実な回復が見られております。国内経済も、「依然として厳しい状況」、「一部に弱さがみられる」と4月の月例経済報告で述べられているものの、感染拡大の防止策が確実に講じられる中、各種施策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続いています。
そうした中、我が国の金融機関は、コロナ禍の状況を見極めつつ、資金繰り支援から、資本性資金などを活用した事業者の経営改善・事業再生支援に軸足を移しつつあります。ぜひ、税理士・公認会計士の皆さまには、認定支援機関として中小企業の現場に入りこんでいただき、金融機関と中小企業との間をうまくブリッジしつつ、中小企業を支えていっていただきたいと存じます。中小企業をめぐる関係者の密接な協力があってこそ、コロナ後の新たな日常を踏まえた経済の力強い回復と生産性の向上が実現されるものと信じております。
中小企業がこの危機を乗り越え、経営改善を果たしていくために、このTKC経営指標が、最善・最強の武器として存分に活用されることを心より期待しております。(令和 3 年 5 月 31 日/前金融庁長官 遠藤 俊英)
<「TKC経営指標(BAST)」とは?>
TKC経営指標(BAST)は、TKC会員(税理士・公認会計士)が関与する中小企業の経営成績と財政状態を分析したものです。TKC会員が毎月継続して実施した巡回監査※と月次決算により作成された会計帳簿を基礎とし、そこから誘導された信頼性の高い決算書(貸借対照表および損益計算書)を収録データとしています。
これだけの精度と速報性を持つ中小企業の経営指標は、世界にも類例がなく、金融機関等から高く評価されています。令和3年版(2020年1~12月確定決算)の収録法人数は24万8,289社、分析対象は1,170業種に及びます。
BASTは個別企業の決算書を開示しているものではなく、2期比較が可能な、同業種同規模の3社以上の決算書を合算し、その平均値を優良企業、黒字企業、欠損企業、全企業、黒字企業中位Gの同類体系により表示しているものです。
※巡回監査:関与する中小企業を毎月および期末決算時に巡回し、会計資料ならびに会計記録の適法性、正確性および適時性を確保するため、会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめ、かつ指導すること。
1.提供開始 2021年6月1日
2.提供対象者 調査に協力したTKC会員、TKC全国会・全国20のTKC地域会と覚書「中堅・中小企業の持続的成長支援」を締結する金融機関や信用保証協会へ提供
【黒字企業割合と黒字申告割合の推移】
※1「BAST黒字企業割合」は、「TKC経営指標(BAST)」の「収録件数」及び「黒字件数」を基に計算しています。なお、「TKC経営指標(BAST)」の「黒字企業」とは、「期末純資産」及び「税引前当期損益」が、いずれもプラスである企業をいいます。
※2「国税庁公表黒字申告割合」については、2006(H18)年までは、国税庁「会社標本調査結果」における数値を採用し、2008(H20)年以後は、同庁「法人税の申告事績の概要」における数値を採用しています。
<収録企業における特性>
令和3年版収録の全企業データでは黒字企業割合が51.8%となっています。特に、
①TKCのパソコン会計ソフト「FXシリーズ」で業績管理を行っている
②TKCの経営計画ソフト「継続MAS」で経営計画を策定している
③「税理士法第33条の2による書面添付」を実践している
――これら3つの条件に合致している企業の黒字企業割合は55.7%となっています。
【BAST収録企業の黒字企業割合】
令和3年版 | 令和2年版 | 差異 | |
BAST収録全企業 | 51.8% | 54.1% | -2.3% |
うち、Fのみ利用企業 | 52.3% | 55.1% | -2.8% |
うち、KFのみ利用企業 | 53.0% | 55.1% | -2.1% |
うち、KFS利用企業 | 55.7% | 59.0% | -3.3% |
〈Fのみ利用企業〉
TKCのパソコン会計ソフト「FXシリーズ」で業績管理を行っている企業
〈KFのみ利用企業〉
FXシリーズ利用でTKCの経営計画ソフト「継続MAS」で経営計画をしている企業
〈KFS利用企業〉
FXシリーズと継続MAS利用で、「税理士法第33条の2による書面添付」を実践している企業
◆「TKC経営指標(BAST)」要約版・速報版
BASTは原則としてTKC会員以外への提供等を行っておりません。
ただし、より多くの企業経営者等に自社の現状分析や経営方針決定等でご活用いただくため、要約版および速報版を公開しています。
◇閲覧方法
下記のTKCグループホームページ「経営者の皆様へ」サイトから閲覧できます。
URL:https://www.tkc.jp/tkcnf/bast/sample/
◇収録内容
「BAST要約版」
①収録対象業種 中分類88業種、細分類485業種
②経営分析項目 14項目
「BAST速報版」
①収録対象業種 206業種
②経営分析項目 12項目
◆「TKC経営指標(BAST)」の著作権について
「TKC経営指標(BAST)」の著作権は株式会社TKCに帰属します。
「TKC経営指標(BAST)」の内容を論文等で引用又は参照する場合は、説明文として下記の文章を必ずご利用ください。
令和3年版「TKC経営指標(BAST)」(発行:TKC全国会)は、全国の248,289社の法人企業の令和2年1月期から令和2年12月期決算に基づく経営分析値を収録しています。 この「TKC経営指標(BAST)」は、TKC全国会に加盟する職業会計人(税理士・公認会計士)が、その関与先である中小企業に対し、毎月企業に出向いて行う「巡回監査」と「月次決算」により、その正確性と適法性を検証した会計帳簿を基礎とし、その会計帳簿から作成された「決算書」(貸借対照表・損益計算書)を基礎データとしています。なお、これらの決算書は、そのまま法人税申告に用いられています。 |
◆「TKC月次指標(月次BAST)」のサービスを本年5月から提供開始
当社では5月6日より、「TKC月次指標(月次BAST)」(発行人:TKC全国会)のサービスを提供開始しました。これは、TKC会員(税理士・公認会計士)による月次巡回監査を経た25万社超の「月次決算データ」を基にして作成された、今までになかった統計資料です。99の業種の業況を年商規模別、都道府県別などにタイムリーに把握することができます。
TKC経営指標(BAST)が確定決算のデータを基にしているのに対し、月次BASTは月次決算のデータを基にしています。TKC経営指標(BAST)の“鮮度”の面のメリットをさらに拡張したのが、月次BASTといえます。
なお、月次BASTは、TKCグループホームページからユーザ登録いただければ、どなたでも無料でご利用いただけます。(ただし、同業他社のご利用はお断りする場合がございます)
●月次BASTのご利用(ユーザ登録)はこちらから
https://www.tkc.jp/tkcnf/bast/monthly/
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザーログイン既に登録済みの方はこちら
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像