本物の裳束で、『源氏物語』の「宇治十帖」を華麗に舞い、歌う。詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』開幕!

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東京国際フォーラム×J-CULTURE FEST presents 井筒装束シリーズ詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』が、2月8日東京・東京国際フォーラム ホールD7で開幕した(12日まで)。

詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』は、日本文化の魅力を発信するという目的で2018年から行われているJ-CULTURE FESTの企画公演の最新作。世界最古の長編小説のひとつといわれる『源氏物語』五十四帖のなかから、宇治を舞台に光源氏亡きあとを描いた、「橋姫」から「夢浮橋」までの物語である、「宇治十帖」を、尾上菊之丞演出、戸部和久脚本、中村智也音楽監督により、和楽器の生演奏、京都の井筒企画製作による、本格的な装束で綴る、美しき世界が展開されている。

何よりもまず改めて感じるのは、本来舞台衣裳には使われない井筒装束のずっとりとした重みと、だからこその流れるような落ち感がもたらす、登場人物たちが纏う装束の美しさだ。しかも舞台に近い席ばかりでなく、後方の席でもその装束の豪華さを間近に感じられる尾上菊之丞の演出が巧みで、是非客席で確かめていただきたいが、その重厚さはため息もの。そんな装束の魅力を活かすべく、『源氏物語』の主人公としてその名の通り光り輝き続けてきた光源氏が儚くなったあとの物語である「宇治十帖」の、複雑な想いをうちに秘めた人間模様と、根底に悲しみを湛えた展開のなかで、自然に装束の説明や、舞台上での着付けを映像も使って描く脚本も巧みだ。

特に、日本もののイメージからは普段あまり浮かばないむしろ現代的な照明効果が、意外なまでに物語展開にマッチしていて、源氏の子である薫と源氏の孫にあたる匂宮を中心に、彼らに想いを寄せられる大君や中君、浮舟などの女君たちとの恋が、装束、歌、音楽で多様に表現されていく様にワクワクさせられる。

その中で、光源氏の異母兄弟・八宮の長女の大君と、その異母妹の浮舟を二役で演じる北翔海莉は、妹の中君の幸せをひたすら願う大君の心が掛け違いを生んでいく様を短い場面で十全に表現。大君に生き写しという設定の浮舟との演じ分けも巧みで、後半の山場と言うべき場面を美しく見せた。中君との琴の生演奏も、努力家で知られる北翔の面目躍如で、高音域まで芯の通った美声でも魅了した。

源氏の息子であり「宇治十帖」の中心人物・薫の中村莟玉は、出生の秘密に悩み出家を考えた薫が宇治に赴いたことからはじまっている物語世界を体現して、常にどこかで憂いのある表現が、口跡の良い台詞発声との対比の美を生んで惹きつける。匂宮との舞い比べ、琵琶の演奏、そして歌と様々な挑戦が舞台の趣を深くした。

今上帝と光源氏の娘、明石中宮との間に生まれた匂宮の和田琢磨は、薫とは対照的に己に全くコンプレックスを持たない当代の貴公子を磊落に具現。持ち前の美貌と長身で、豪華な衣裳を着こなす様から自然にあふれ出る輝きが、今上帝の第三皇子という役柄の自信と、自由奔放な振る舞いに説得力を与えていた。

大君の妹中君の天華えまは、宝塚星組の男役スターとして活躍し、退団後初の女性役を華やかななかに、しとやかさもにじませて好演。星組トップスターだった北翔の背中を、下級生時代の天華が追ってきた間柄でもあり、琴の演奏も含めて二人の信頼感が自然と仲の良い姉妹を感じさせた。もうひと役光源氏も演じるが、この登場は男役の出自を持つ人ならではの鮮やかさで、和楽器で?と驚く楽曲を粋に歌う姿を含め是非注目して欲しい。

物語世界の語り部でもある喜撰法師の尾上菊之丞は、実在したのか自体に諸説ある役柄の自由度を活かした飄々とした演じぶり。演出家として古典を愛すると同時に、新たな表現にも果敢に取り組む、全体を俯瞰している菊之丞の視点が役柄にも通じていて、軽やかに場面を進めてくれていた。

また、共演の羽鳥以知子、藤間京之助、藤蔭慧、中村梅寿、高橋諒にもそれぞれに見せ場があり、和楽器の生演奏の力強さと自由度を改めて感じさせる中井智弥、長須与佳、吉井盛悟の演奏も大きな聞きもの。何よりも、五十四帖の『源氏物語』の終わり方としてしばしば論議を呼んできた「夢浮橋」を、希望への架け橋に感じさせる、全員の歌唱による「夢の浮橋」へとつなげた構成が見事で、この尊いメッセージを是非多くの人に体感して欲しい。

初日を前日に控えた2月7日、初日前舞台挨拶が行われ、北翔海莉、中村莟玉、和田琢磨、天華えま、尾上菊之丞が登壇。初日に向けたそれぞれの想いを語ってくれた。

【舞台挨拶】

──北翔さん、作品の見どころと演じる上での注目ポイントをお願いします。

北翔 本物の装束、そして豪華な生演奏による素晴らしい楽曲と共に、尾上菊之丞先生のユニークで親しみやすい演出が見どころです。私はいつも初日前には不安でいっぱいなのですが、今回は早く幕が開いて欲しいというワクワク感があって。いつも以上に自分が本当にこの作品が好きなんだなという想いがこもっている公演になるのではないかと思っています。今回私が着させていただいてるこの「細長」という井筒企画さんの衣裳なのですが、なかなか舞台で見ることのできない衣裳で、『源氏物語』のマニアックなファンの方々でしたらご存じの方もいらっしゃると思いますが、知る人ぞ知るの衣裳で。姫しか着られない「細長」を着させていただけること、もう二度とないだろうと噛みしめながら、今回舞台に立たせていただきたいと思っております。

──莟玉さん「詩楽劇」とはどういうものなのでしょうか。

莟玉 わたしも「詩楽劇」とお聞きした時に「それはなんでしょうか?」と最初は思ったのですが、実際に台本をいただいて稽古をしているうちに、なるほどこれは詩楽劇としか表現のしようがないなと思うものでございました。音楽が最初からあってそれに歌詞がついていて、ということよりも、まず先に言葉が来て、それをお客様に表現する為にメロディーをつけ歌にすることを詩楽劇というのだなと。ですから歌の場面もありますけれども、台詞から地続きな感じです。とは言え和製ミュージカルというのとはまた違う、確かに詩楽劇としか形容しがたい、言い様のないものです。またわたしは個人的に宝塚が大好きで、現役の頃から「素晴らしい」と思って拝見していた北翔さん、天華さんのお二人がいまいらっしゃって、何故かそのお二人と一緒に歌うという。僕は歌が上手くなりたいとはひと言もいったことがないんですが(笑)菊之丞先生はどうしても僕に歌をうまくなって欲しい、ということなので、お二人に負けないつもりで和田さんと力を合わせて歌の稽古もたくさんしていただきましたので、この公演を通してレベルアップをしていきたいなと思っています。

──和田さんこれまでの稽古を通して印象的だったことは?

和田 莟玉さんもおっしゃっていましたが、宝塚歌劇団ご出身の方、歌舞伎俳優の方、そしてわたしと様々な道を歩まれてきた方々が一堂に会せる舞台ですので、稽古場から皆様の所作など勉強になることがたくさんあり、毎日楽しく演じさせていただきました。時には菊之丞先生にワッと言われることもありますが、日々和気藹々と楽しく過ごさせていただきました。

──天華さん『源氏物語』の「宇治十帖」を演じられた感想は?

天華 「宇治十帖」をどうまとめられるんだろうな?と思っていて、台本を読んだ時にもこれに歌が入るとどうなっていくのかなと感じていましたが、どんどんお芝居ができていくうちに、この長いストーリーがこんなに短い時間のなかにキュッとまとまるんだ、と思いました。「宇治十帖」という『源氏物語』のなかではフォーカスされることの少ないものを、持ってこられたところも挑戦だなと。この装束でお芝居をさせていただけるのは本当にすごいなと思いましたし、その中でも『源氏物語』の講座などもあって、どの場面にも興味を持っていただける作りになっていますので、色々な方に観ていただけたらと思っております。

──演出・振付・出演の様々な役割を務められている尾上菊之丞さんから改めてこの作品について。

菊之丞 J-CULTURE FEST として今までやってきた経験を活かしつつ、戸部(和久)先生の脚本を基に、芝居と音楽、歌と踊り、また劇中での楽器演奏など、普段とはちょっと違う、逆に言うと皆さんにやったことがないことにチャレンジしていただくことによって、生み出せるものをお客様に感じとっていただく。また僕らもそれを楽しみながら、この経験が血となり肉となり、それぞれの次のステージに生きていく。ということをどんな仕事でも一緒ですが、特にこの舞台に関しては思っています。日本の芸能を愛していただくひとつのきっかけにお客様にも、演者にもなってくれたらいいなぁというのがすごく思うところです。それだけ僕らも古典というか、日本の伝統的なものをずっと積み重ねてやってきた、その良さ、ポテンシャルを伝えたいというのがこの詩楽劇を作っているひとつの動機です。今回も琴や琵琶の演奏であったり、普段歌わない歌を歌っていただいたり、絶対に着ない装束で踊っていただいたりを、これだけ近い空間でどう楽しんでいただけるのかを演出としては考えてきました。どこのお席に座っていただいても、例えばこの装束を近くで感じていただけるように、ということも大事だなと思っています。色々な仕掛けがありますので、是非まず観ていただけたらと思います。

──では北翔さんから公演を楽しみにしている方にメッセージを。

北翔 『源氏物語』「詩楽劇」「邦楽」と言うと堅苦しいイメージをお持ちのお客様ももしかたらいらっしゃるかと思いますが、今回の作品は本当に親しみやすくて見どころもたくさんありますし、客席にいるお客様がワクワクするシーンもたくさん出てきますので、さすが菊之丞先生だなと思う、そんな演出の部分も楽しんでいただけたら。また中井(智也)先生が考えてくださった楽曲に、戸部先生の言霊を乗せてこの世界観をしっかり劇場空間で楽しんでいただきたいと思います。また劇中でこれだけ近い距離で芝居をする、ライブハウスとはまた違う感覚で歌を歌う機会もあまりないので、役者自身が緊張しますけれども、この作品のなかにしっかりお客様が溶け込んでいただけたら嬉しいですね。私たちも舞台に立たせていただきながら感動する、照明をはじめ色々な効果で出てきますので、是非皆さまも楽しみに劇場にいらしてください。

(取材・文/橘涼香)

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【公演概要】
東京国際フォーラム×J-CULTURE FEST presents 井筒装束シリーズ
詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』
構成・演出:尾上菊之丞/脚本:戸部和久

■出演
北翔海莉 中村莟玉 和田琢磨 天華えま/尾上菊之丞
羽鳥以知子 藤間京之助 藤蔭慧 中村梅寿 高橋諒
演奏:中井智弥 長須与佳 吉井盛悟

■劇場:東京国際フォーラム ホールD7(〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目5番1号)

■上演日程:2025年 2月8日(土)~2月12日(水)
2月8日(土)12:00/16:00
2月9日(日)12:00/16:00
2月10日(月)12:00/16:00
2月11日(火祝)12:00/16:00
2月12日(水)12:00/16:00

■STAFF
主催:井筒/井筒企画/東京国際フォーラム
企画・制作:井筒企画
特別協力:style office/風俗博物館/京都宮廷文化研究所

公式サイト: https://ujijujo.com/
公式X:https://x.com/ujijujo_2025
お問い合わせ:stage.contact55@gmail.com


※『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』関連講演
特別講座 『源氏物語』を識る、聴く、詠む

公式サイト: https://ujijujo.com/lecture/

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URL
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業種
サービス業
本社所在地
東京都新宿区中落合2-12-23 中銀落合マンション602
電話番号
03-6677-5375
代表者名
米田基
上場
未上場
資本金
100万円
設立
2014年04月