VISUAL MERCHANDISING STUDIOが大阪中之島美術館とともに、空間演出について登壇
上田安子服飾専門学校が開催のセミナーで共演
アパレルブランドと美術館の空間演出
VMSは2020年に「VMSアカデミー」を開講し、ブランドで活躍するプロフェッショナルなヴィジュアルマーチャンダイザーの育成を進めています。加えて、代表の堀田自らが大学や服飾専門学校においてグローバルレベルの新しい「VISUAL MERCHANDISING (VM) 特別講座」を行うなど、学生たちに向けたVM教育にも積極的に取り組んでいます。
上田安子服飾専門学校は伝統ある服飾専門学校としてしられており、VMSが講義や研修用アパレルショップリニューアルのデザインを担うなど継続的な交流を図ってきました。
2023年11月16日(木)、上田安子服飾専門学校が、参加者に空間演出について興味を持ち多角的な視点で知識を広げてもらうことを目的に、第1回セミナーを開催。副校長である 山田浩之氏が進行役を務め、VMS代表の堀田健一郎、そして大阪中之島美術館の館長 菅谷富夫氏がゲストとして登壇しました。
国内外の数多のブランドのVMを担ってきた堀田は、顧客獲得の戦略と位置づけられるVMの空間演出について、そして菅谷氏は“作品を見てもらい、安全に保護すること”を目的とする美術館の空間演出について、それぞれの現状を語り、共通する手法や課題、観点の違いなどを見出しながら意見を交えました。
【上田安子服飾専門学校セミナー 概要】
■テーマ: 「アパレルブランドと美術館のビジュアルマーチャンダイジング」
■開催日: 2023 年 11 月 16 日(木)
■会場:上田安子服飾専門学校 本館6F ライラックホール
(大阪市北区芝田 2-5-8)
■登壇者:
「アパレルブランドと美術館のヴィジュアルマーチャンダイジング」
大阪中之島美術館 館長 菅谷富夫氏:菅谷館長
VISUAL MERCHNDISING STUDIO㈱ 代表取締役社長 堀田健一郎:VMS代表 堀田
【ブランドと美術館それぞれの空間演出の捉え方】
VMは新規客のリクルーティングと既存客のリテンションのための戦略(VMS代表 堀田)
まず、外資と国産のファッションブランドでVMの考え方に大きな違いがある。国産ブランドは商品が主語のアクション重視。一方、外資ブランドはヴィジュアルをマーケティング戦略に合わせてネージメントし、お客様のリクルーティングとリテンションへの重要なアクションのひとつと位置付けている。
作品を見てもらい安全に管理するための演出(菅谷館長)
美術館の空間演出の目的は、①作品を見て理解してもらうこと ②作品の保存、および作品と来館者の安全を守ること。演出はこれらの目的を達成するためのもの。作品を空間の中で独立して見てもらうために、照明や大小の差、導線の描き方などを工夫する。しかし、見てもらうには効果的な距離だが来場者同士や作品にぶつかる危険性がある、ケースに入れると安全性は確保されるが見やすさを妨げるなど、ふたつの目的が対立することもある。
【空間演出の手法について】
ブランドのストーリーを感じてもらう(VMS代表 堀田)
最近の外資ブランドでは、ウィンドウと同等にインストアアニメーションを重要視する傾向があり、時代に合わせて演出の手法や形状が大きく変化している。そこでお客様に実店舗ならではの空間を体感してもらうアプローチを図り、強い印象を残して興味や意欲を一気に上げていく。店内を回遊してブランドのストーリーを感じてもらい店舗での体験の余韻を残し、たとえその場でのご購入に繋がらなくても、ECやSNSに誘導する。
単純な手法を工夫して空間演出を実現(菅谷館長)
壁がとても重要で、順路や映像作品用の空間を作るなど、既存の壁と可動壁を工夫して空間演出を実現している。作品を安全に展示するためには、ガードを設置して作品との距離を意識させたり、ケースに入れる。所蔵者からの制約やレギュレーションが多く自由に展示できない場合も多い。特に絵画の場合は“作品を見る”ためのものなので、思い切った演出が難しい。建築関係の展覧会では写真、模型、図面などを展示するものだが、テクニックを展示したくない建築家の意向を受けて、素材を組み合わせて映像化して見せたこともある。
【空間演出の共通点】
テクニックに共通点、“導線”に違い(VMS代表 堀田)
テクニックの部分、特に大小の比率を使って「対比」により演出する手法は、我々ヴィジュアルを手掛けるスタッフが使うテクニックと共通している。一方で、“導線”という言葉は、意味が同じでも、我々の場合はお客様を外から店内へ誘導する“導線”と、店内にできるだけ長く滞在し動いていただくための“動線”を考える。
【サステナビリティへの取り組み】
廃棄素材をリサイクル・リユース(VMS代表 堀田)
廃棄素材のリサイクルやリユースにはこの数年積極的に取り組んでいる(廃棄衣料をリサイクルしたパネル素材や廃棄花の活用など)。VMについても10年近く前からサステナビリティへの取り組みが始まっており、ヨーロッパブランドの取り組みは日本よりもずっと早かった。アメリカのブランドとの取り組みでは環境負荷を減らすために徹底して代替手段を追求し、多様性への意識も高い。協働により多くを学んだ。
“使いまわし”を工夫する(菅谷館長)
張り替えによるリユースやコンパネのレンタルなどで取り組んでいる。欧米の大きな美術館は高い意識を持っているが、日本の再利用、環境負荷削減への意識や取り組みはまだ遅れており、今後一層の対応が必要となる。サステナビリティを優先すると思い切った演出がしにくく展示が似通うという懸念もあるが、日本にはコンパネのレンタルのように”使いまわし”のシステムが確立されていて、その組み合わせを工夫して複雑な形を作る技術がある。大勢に変化がなくても、ポイントを変えて異なる印象へと変化させることはできる。一方で、作品移動用のケース(木箱)には保護のために二重箱が必要であるが、多くは廃棄となるため、リユースが課題となっている。
今回のセミナーでは、異なる立場から空間演出に携わるプロフェッショナルたちの話を通して、小売りの店舗と美術館には空間や目的に大きな違いがある一方で、商品や作品の見せ方、壁面の使い方やゾーニング計画、距離感や照明などの工夫、ストーリーテリングの考え方など、多くの共通点があることが提示されました。セミナー後には参加者との話が尽きず、空間演出への興味を深めていただく機会となりました。
■上田安子服飾専門学校について https://www.ucf.jp/
1941年創立、大阪・梅田にある西日本最大級のファッション専門学校。創立者上田安子はクリスチャン・ディオールに師事しオートクチュール技術を日本に紹介。その後ジバンシィ、バレンシアガの元で服飾技術を身につけ、世界各地でファッションビジネスの研究に取り組みました。最先端のノウハウを生かし、国際感覚を大切にした教育の姿勢は今も引き継がれており、国内・海外研修を積極的に実施しています。
■大阪中之島美術館について https://nakka-art.jp/
2022年2月、大阪の中核であり水都のシンボルである中之島に誕生した美術館。19世紀後半から現代までの日本および海外の美術とデザインを中心とするコレクションを所蔵。様々な展覧会の開催の他、訪れることが楽しみとなるような施設や機能を備え、「ここから始まるアート」を動かすプラットフォームとなることを目指しています。
■VISUAL MERCHANDISING STUDIO株式会社 について https://vmstudio.jp/
2019年設立のワールド・モード・ホールディングスのグループ企業。VMのコンサルティングから施工、オリジナル什器開発、研修ま で、VM領域のあらゆるソリューションを提供。作り手として「循環と継承」を常に意識し、パートナー企業に寄り添ったヴィジュアルマ ーチャンダイジングに積極的に取り組んでいます。2020年9月にはVM人材のプロを育成する「VMSアカデミー」を開講し、教育に も注力しています。
VMSアカデミー https://vmstudio.jp/vmsacademy/
VISUAL MERCHANDISING STUDIO株式会社 代表取締役社長 堀田健一郎
ルイ・ヴィトンジャパン、ドルチェ&ガッバーナジャパン、イッセイミヤケなどにて Visual Merchandising の責任者を15年以上歴任。自身の販売職経験から得 た「お客さま第一のVM」をベースに、最前線で培った視点から「マーケティング」 「店頭」「人材」をつなぐことができる多角的な「ヴィジュアルマーチャンダイジング =VM」を提供。セミナー、大学・服飾専門学校での講演他、メディア出演・掲載多数。
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