【プレスリリース】「お母さんの命を守る」 国連機関の報告書で着実な進展 未だ1時間に33人の妊産婦が死亡

健診を受ける妊娠9か月の母親(インド)© UNICEF/INDA2013-00356/Manpreet Romana 健診を受ける妊娠9か月の母親(インド)© UNICEF/INDA2013-00356/Manpreet Romana

【2014年5月6日 ジュネーブ/ニューヨーク発】

国連の最新データによると、妊産婦死亡率が1990年から45%減少したことが明らかに
なりました。妊娠・出産中の合併症が原因で死亡した女性の数は、1990年の約52万
3,000人から、2013年には約28万9,000人に減少しています。

また、妊産婦の死因における新しい事実が、世界保健機関(WHO)による別の研究で
判明し、世界的医学雑誌『ランセットグローバルヘルス』のなかで発表されました。
WHOの体系的な分析によると、世界の妊産婦死亡原因の4分の1が、もともと患って
いた糖尿病、HIV、マラリア、肥満などの病気に起因することが判明しました。これらの
病気をもともと患っていた患者が妊娠すると、症状がさらに悪化する可能性があります。
この数字は、妊娠・出産時に出血多量で死亡する割合に近い値です。

「これらの最新のデータにより、すべての妊産婦への高精度な医療の提供や、病気を
患っている妊婦への特別なケアなど、すでに効果が実証されている解決策に焦点を
当て実施していく必要性が強調されました」と、WHOの家族・女性・子どもの健康事務局
のフラビア・ブストレオ事務局補は述べています。


「1時間あたり33人の妊産婦が亡くなっているというのは、あまりにも多すぎます」と、
世界銀行グループ 健康・栄養・人口局のティム・エヴァンス局長は話します。
「これらの悲劇的な死のひとつひとつを、文書に書きとめ、死因を特定し、緊急に
是正措置を行っていく必要があります」

1990年から2013年の妊産婦死亡率推計には、2012年発表版には含まれていなかった
新しいデータが含まれ、出生数とすべての女性の死亡数を推計するための、改良された
算出方法が用いられました。


1990年に妊産婦死亡率の高かった11カ国(ブータン、カンボジア、カボヴェルデ、
赤道ギニア、エリトリア、ラオス、モルディブ、ネパール、ルーマニア、ルワンダ、
東ティモール)は、2015年までに1990年の死亡率の75%を削減する「国連ミレニアム
開発目標(MDG)」を既に達成しています。しかし、最新のデータによると、多くの
低・中所得国はこの目標を達成することは出来ない見通しです。

ユニセフが支援する病院で破傷風のワクチンを受ける新生児と母親。(グアテマラ) © UNICEF/NYHQ2012-2264/Susan Markisz ユニセフが支援する病院で破傷風のワクチンを受ける新生児と母親。(グアテマラ) © UNICEF/NYHQ2012-2264/Susan Markisz


サハラ以南のアフリカは、妊娠・出産中の合併症で
死亡するリスクが、依然として世界で最も高い
地域です。

「サハラ以南のアフリカに住む15歳の少女が、
生涯に妊娠・出産で死亡する確率は、
約40分の1です」とユニセフのジータ・ラオ・
グプタ事務局次長は話します。「一方で、
ヨーロッパに住む同年齢の女の子の、生涯に妊娠・
出産で死亡するリスクは、3,300分の1
です。地域や国によって、いかにバラつきが
あるかは明らかです」

過去20年間さまざまな進歩があるなかで、思春期の
妊娠、中絶、妊産婦の死亡、
性的感染症とHIVの予防に関しては、ほとんど改善がみられません。また、特に低所得国
の若者に対する、包括的な性教育やサービスに対する、利便性や品質、アクセスには
大きな格差が存在しています。

「15歳から19歳までの1,500万人以上の女の子が毎年出産しています。女の子の5人に
ひとりは、18歳になる前に出産します。そしてこれらの妊娠の多くは非合意の性行為に
よるものです」と国連人口局(UNFPA)のケイト・ギルモア事務局次長は強調しました。
「助産ケアや性暴力の防止・対処など、比較的難しくなく、すでに実施されている
方法がさらに普及し、特に避妊具などの技術革新が伴えば、大きな変化を生むことが
できます」


115カ国、6万人以上の妊産婦の死因に関するWHOの研究では、妊娠する前から患って
いた病気(糖尿病、マラリア、HIV、肥満など)が、妊娠によって悪化したことに起因
する死亡が、全体の28%を占めていたことを示しています。

その他の妊産婦の死因:
・出血多量(主に出産中および出産後)27%
・妊娠高血圧症14%
・感染症11%
・停止分娩やその他の直接的な原因9%
・中絶による合併症8%
・血栓(塞栓症)3%


適切な医療従事者がいて、適切な機器や医薬品のある施設を持つ、土台がしっかりと
した医療システムは、妊婦と新生児の命を守るための高精度な医療を提供する上で
重要です。

「新しいデータは、妊産婦の死因が変化してきていることを示しています。世界中で
女性の非感染性疾患が増えていることが反映されています。予防可能な妊産婦の死を
なくすためには、妊娠合併症の減少にむけた継続的な取り組みだけでなく、非感染性疾患
そのものや、非感染性疾患が妊娠へ与える影響に焦点をあてることが必要です。糖尿病
や肥満などを患っている女性のための総合的なケアによって、妊産婦の死亡を減少させ、
長期的な健康問題を防ぐことができます」と、WHOの性と生殖にかかわる健康局長であり、
研究の共著者であるマーレーン・テママン医師は述べています。

妊産婦の死亡に対する取り組みを行う上での大きな課題は、正確なデータが欠如している
ことです。死亡する女性の数とその死因についてのデータは、精度が良くなってきている
ものの、まだまだ記録や報告されていないケースも多くあります。多くの低所得国では、
特に女性が自宅で亡くなった場合、妊産婦死亡数に含まれていなかったり、死亡原因が
はっきりしなかったりして、正しく報告されません。世界中をみても、死亡者のうち
記録されているのは、3分の1のみで、WHOの疾病に関する国際的分類を使用して、死因を
記録しているのは、100カ国未満です。

政府が提供する国民健康制度では、最も必要とする人に必要な資源を割り当てることは、
しばしば困難が伴います。「国連女性と子どもの健康のための情報と説明責任委員会」
が、母子死亡に関する正確なデータを求めているのはこのためです。委員会は、
「2015年までに、すべての国が出生登録、死亡および死因を登録するシステムの確立に
向けて、重要な措置を講じる」ことを要求しています。

すべての女性が高精度の医療を利用できるようになれば、予防可能な妊産婦の死亡を
なくすことが出来る、という世界的なコンセンサスが形成されてきています。妊産婦
死亡数減少の進捗状況を追跡することと、妊産婦の健康を守ることが、全世界の開発に
おける優先事項であり続けるために、2015年以降の世界、及び、各国の目標は重要です。

病院で母親に抱かれる子ども(シエラレオネ) © UNICEF/SLRA2013-0821/Olivier Asselin 病院で母親に抱かれる子ども(シエラレオネ) © UNICEF/SLRA2013-0821/Olivier Asselin


■1990年から2013年の妊産婦死亡率推定の動向

・妊産婦死亡率は減少:世界の妊産婦死亡率
(MMR)は、2013年には、10万人の出生に
対して210人の妊産婦の死亡でした。1990年には
10万人の出生に対して380人の妊産婦の
死亡(45%削減)でした。

・より速い進歩が必要:世界的な妊産婦死亡率の
年間減少率は、1990年から2000年の間の
1.4%と比較して、2000から2013まで3.5%と、
減り続けています。しかしながら、
現在の傾向では、ほとんどの国が、1990年から
2015年の妊産婦死亡率の75%削減という
国連ミレニアム開発目標を達成できない見通しです。期限内に目標を達成するには、
1990年以降、平均で年間5.5%以上の減少が必要です。

・最も多い10カ国:10カ国の妊産婦死亡率の合計が、世界全体の約60%を占めます。
インド(5万人)、ナイジェリア(4万人)、コンゴ民主共和国(2万1,000人)、
エチオピア(1万3,000人)、インドネシア(8,800人)、パキスタン(7,900人)、
タンザニア連合共和国(7,900人)、ケニア(6,300人)、中国(5,900人)、
ウガンダ(5,900人)。

・ソマリア、チャドは最も死亡リスクが高い:生涯に妊娠・出産で死亡するリスクは、
それぞれソマリアで18分の1、チャドで15分の1、と最も高いです。


■妊産婦死亡率推定について

1990年から2013年の妊産婦死亡率推定の推移は、世界保健機関(WHO)、国連児童基金
(UNICEF)、国連人口基金(UNFPA)、国連人口部(UNPD)と世界銀行グループを含む、
国連妊産婦死亡率推定に関する機関間グループ(MMEIG)によって公表されています。
算出は、シンガポール国立大学と米国カリフォルニア大学、バークレー校の大学の
学術チームと共同で行われました。

5月2日に、『ランセット』は、1990年から2013年までの、全世界、地域、国レベルの
妊産婦死亡率と妊産婦の死亡原因を公表しました。2013年の全世界の疾病に関する
体系的分析です。WHOとパートナー団体は、国連の機関間グループの国連ミレニアム
開発目標4と5に関する取り組みが適切に行われていることを確認するため、これらの
報告書を歓迎しています。


■参考情報

妊産婦死亡率に関するWHO概況報告書
www.who.int/mediacentre/factsheets/fs348

全世界の妊産婦の死亡原因:WHOの体系的な分析、『ランセット』
www.thelancet.com/journals/langlo/article/PIIS2214-109X(14)70227-X

1990年から2013年までの妊産婦死亡率推定の推移
www.who.int/reproductivehealth/publications/monitoring/maternal-mortality-2013


■ 本件に関するお問い合わせ
日本ユニセフ協会 広報室
TEL:03-5789-2016  FAX : 03-5789-2036  Eメール:jcuinfo@unicef.or.jp
または

WHO: Glenn Thomas, Communications Officer, WHO, Geneva. Tel: +41 22 791 3983,
Mobile: +41 79 509 0677, Email: thomasg@who.int
UNICEF: Kate Donovan, Deputy, Media Section, UNICEF, New York.Tel: +1 212 326 7452,
Mobile: +1 917 378 2128, Email: kdonovan@unicef.org
UNFPA: Etienne Franca, Coordinator, Sexual and Reproductive Health Communications,
UNFPA, New York. Tel: +1 212 297 5208, Mobile: +1 917 310 8957,
Email: franca@unfpa.org
World Bank Group: Melanie Mayhew, Communications Officer, World Bank Group,
Washington D.C. Tel: +1 202 458 7891, Mobile: +1 202 459 7115,
Email: mmayhew1@worldbank.org


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公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国36の国と地域にあるユニセフ国内委員会の
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