新規医薬品添加剤「ソナノス™」の品質保証付き有償サンプル提供を開始 2027年のGMP製造品提供開始を目指す
旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:工藤 幸四郎、以下「当社」)は、新規医薬品添加剤「ソナノス™」(ヒアルロン酸ナノゲル)について、品質保証※1を伴う有償でのサンプル提供を開始し、供給契約に応じる体制を整えました。2027年のGMP製造品※2提供開始を目指しています。
なお、本製品は、2025年11月に米国テキサス州サンアントニオで開催される医薬品製剤分野の学会「AAPS 2025 PharmSci 360」への出展を予定しています。
1.「ソナノス™」について
当社は、コンフォートライフ事業において、医薬品などに広く使用される添加剤「セオラス™」(結晶セルロース)等の製品を提供しています。現在、「セオラス™」の事業基盤を活かし、新製品「ソナノス™」の開発を進めています。

「ソナノス™」は、薬物と混合するだけで、疎水性相互作用※3により、タンパク質やペプチド、難水溶性の低分子薬物などさまざまな成分を封入することができるヒアルロン酸誘導体です。「ドラッグデリバリーシステム(DDS:薬を体内の必要な場所に、必要な量、タイミングで届ける技術)」に適した基剤として使用できます。
既存の徐放化技術※4や血中半減期延長技術※5に比べ、封入時に有機溶媒を使わないため有機溶媒で活性を失いやすいタンパク質にも適用可能なこと、薬物の化学構造の改変が必要ないことが特長です。また、既存の可溶化剤※6と比較して、少量で可溶化できること、従来は適用が難しかった成分(難水溶性ペプチドなど)にも適用可能なこと、安全性が高いといった強みがあります。

2.「ソナノス™」事業化に向けて
当社は2020年より、国内外の製薬企業を中心に60件以上の無償サンプル提供を行い、フィージビリティスタディを実施いただきました。現在、その中でいただいたご要望をもとに、バイオ医薬品などの皮下徐放※7に適した「徐放化グレード ソナノス™PG」と、水に溶けにくい有効成分への適用に適した「可溶化グレード ソナノス™DS」の2種のグレードで、製薬企業を中心とする幅広い顧客向けに事業開発を加速しています。いずれのグレードも、2020年のサンプル提供開始当初のサンプルよりもさらに高濃度の成分の封入が可能になるなど、より使用しやすい設計に改善しております。
このたび、製薬企業などに「ソナノス™」を用いた医薬品の非臨床試験や臨床試験への移行を安心して進めていただけるよう、品質保証付きの有償サンプル提供を開始し、供給契約に応じる体制を整えました。「ソナノス™」単独の安全性データ※8の拡充も予定しており、2027年のGMP製造品提供開始を目指しています。

なお、2024年に設立した当社発のスピンアウトベンチャーDiveRadGel株式会社では、「ソナノス™」のがんワクチン用途への展開を目指しており、本用途に適した「ワクチングレード ソナノス™DV」については、2024年にGMP製造を先行して開始しています。
3.学会出展について
米国テキサス州サンアントニオで開催される医薬品製剤分野の学会「AAPS 2025 PharmSci 360」にて、本製品の詳細をご紹介します。ポスター発表にて最新の技術データも公開予定です。
【出展概要】
開催日:2025年11月10日(月)~12日(水)
当社ブース:3443(Asahi Kasei Americaブース)
出展内容:「ソナノス™」および当社結晶セルロース製品(「セオラス™」、「セルフィア™」)
学会公式サイト:https://www.aaps.org/aaps/pharmsci/annual-meeting
【出展社セミナー】
11月11日(火)12:30(現地時間)よりExhibitor Hall, Stage Cにて
演題:「Hyaluronic Acid Nanogel: A Next-Generation Excipient for Injectable Formulations to Prolong Drug Release and Enhance API Solubility」
講演者:旭化成株式会社 ヘルスケアマテリアル事業部 新製品開発推進室 中川 慶之
当社は、「ソナノス™」の医薬品への採用により、今まで困難だった医薬品の製剤化の実現、頻回投与が必要な注射剤の投与回数削減など、お客さまの製剤開発における問題解決を支援し、患者さんのQOL(Quality of Life)向上に貢献することを目指していきます。
■関連プレスリリース
新規医薬品添加剤「ヒアルロン酸ナノゲル」サンプル提供開始について(2020年8月5日)
https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2020/ze200805.html
旭化成発のスピンアウトベンチャー「DiveRadGel株式会社」を設立(2024年10月9日)
https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2024/ze241009_2.html
※1 分析結果の提示による品質保証
※2 GMP製造品:医薬品・医薬部外品の製造管理・品質管理の基準に基づいた製造品。本製品は、医薬品添加剤の国際的なGMPガイドライン「IPEC-PQG」および、国際的な不純物に関するガイドライン「ICH-Q3」に準拠することを目指している。
※3 疎水性相互作用:水に溶けにくい分子同士が水中で集まり合う性質のこと。タンパク質の構造形成や薬物の封入などに利用される、生体内で重要な働きを持つ現象。
※4 徐放化技術:薬が体内で長く効果を発揮できるようにする技術の1つであり、有効成分がゆっくりと、かつ、持続的に放出されるよう医薬品を設計する技術をさす。これにより、薬物の血中濃度を長期間安定に保つことができ、服用回数の減少や副作用の低減につながる。乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)マイクロ粒子技術などのマイクロカプセル基材の技術が知られている。
※5 血中半減期延長技術:薬が体内で長く効果を発揮できるようにする技術の1つ。通常、薬は一定時間が経つと体外に排出されるが、本技術により薬の有効成分が血液中にとどまる時間を延ばすことができる。これにより、投与回数を減らし、患者の負担を軽減しながら、より安定した治療効果が期待できる。
※6 可溶化剤:難水溶性薬物を水に溶けるようにするために使われる医薬品添加剤。
※7 皮下徐放:注射で皮下(皮膚と筋肉の間)に投与する薬物が、長時間にわたり徐々に放出されるよう製剤設計されたもの。
※8 non-GLP試験の安全性データを想定
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