「彼女は、私の生涯のロールモデルだ」セリーナ・ウィリアムズも絶賛した、テニス界の伝説が初めて綴る『ビリー・ジーン・キング自伝』ついに邦訳。自身とすべての女性の平等のために闘いつづけた半生を描く
辰巳出版の翻訳書レーベル &booksより新刊『ビリー・ジーン・キング自伝 すべてに全力を尽くす』が12月12日(火)に発売された。
「世界一尊敬される女性」(米雑誌Seventeen)、伝説のテニスプレーヤー、ビリー・ジーン・キングが平等のために闘いつづけた80年間の軌跡を語る、パワフルでハートフルな自伝がついに邦訳。
【Amazon】www.amazon.co.jp/dp/4777830322
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圧倒的な強さで世界ランク1位に輝き、グランドスラム通算39勝、バトル・オブ・ザ・セクシーズでの歴史的勝利、国際テニス殿堂入りを果たした伝説のテニスプレーヤー、ビリー・ジーン・キング。
輝かしいキャリアのかたわら、スポーツ界の男女平等を実現すべく奮闘してきた彼女は、自身がレズビアンであることをアウティングされた経験から、LGBTQ∔の人権保護活動にも尽力し、オバマ元大統領から女性アスリート史上初の大統領自由勲章を授与された。
そのほか、「世界一尊敬される女性」(米雑誌Seventeen)や「最も重要な20世紀のアメリカ人100人」(米雑誌LIFE)など、多くの栄誉に輝いている。
本書は、ビリー・ジーンがテニスに出会う幼少から、世界ランク1位に輝くまでのハードなトレーニング、数十年にわたる摂食障害との闘い、セクシュアリティの葛藤、愛するパートナーとの出会い、命がけの人権保護活動――。すべての瞬間を全力で生きるビリー・ジーン・キングが80歳を目前に、コートの中で、コートの外で数々の勝利をつかみ取った軌跡を、余すところなく振り返る。
絶賛の声、続々!
社会に虐げられながらも、彼女は恐れず立ち向かった。
困難にぶつかっても、彼女は決してくじけなかった。
ビリー・ジーン・キングは、私の生涯のロールモデルだ。
―――セリーナ・ウィリアムズ
今を生きるすべての人に贈る、
モチベーションを高め、変化を起こすための1冊。
―――――全米女子テニス協会
真のチャンピオン、真のレジェンドがつづった、
すべての人に読んでほしいパワフルな自伝。
――パトリシア・コーンウェル
遠いけれどそう遠くない昔、大きな夢を描いた少女がいた。
その夢をかなえるにはまず「すべての人が平等な世界」が必要だと気づき、
彼女は一人、その実現に向けた闘いを始めた。
テニス界の偉人が語る、いま誰もが知っておくべき闘いのこれまでとこれから。
―――池田真紀子(本書 訳者)
本文より一部抜粋
「お母さん! お母さん! 将来、何になりたいかわかったよ!」緑色のクライスラー・デソートで迎えにきた母に、私は宣言した。「世界ナンバーワンのテニス選手になるんだ」
(中略)母は私を見て、一九五四年という時代を考えれば、私のような女の子に向かって言うには最高にすてきで最高に斬新なことを言った。「そう、それはいいわね、ビリー・ジーン」
――第一章 テニスに目覚めて より
私がやりたいのはテニスだった。人生のどの段階でも最優先はつねにテニスだった。どうすればテニスをプロスポーツにできるか、女子選手が除外されないようにするにはどうしたらいいか。そんな考えで頭がいっぱいだった。もしもいまの時代に生まれ、スポーツ選手を志望していたら、大学には進学せずに高校卒業と同時にプロになっていただろう。しかし当時の私は、女子選手にはまだ開かれていなかった道と世界を模索していた。(中略)私ならやれると自分で思っていることと、世の中の現実のあいだには大きな隔たりがあった。
――第六章 強敵マーガレット・スミス より
二日後に行われた決勝戦の相手は、ウィンブルドンのシングルスを三度制覇していたマリア・ブエノで、試合は第三セットまでもつれこんだ。(中略)第三セットで私の切り札になったのはバックハンドだった。第四ゲーム、私はマリアがコートの真ん中から一歩も動けないようなリターンを続けざまに決めて、マリアのサービスゲームをブレークした。そのあとは一ゲームたりとも渡さなかった。最終スコアは、6-3、3-6、6-1だった。試合終了と同時に私はラケットを高々と投げ上げ、顔を覆ってラリーを盗み見た。勝った。ウィンブルドンで優勝した!
――第九章 世界の頂点へ より
マンハッタンのタウン・テニスクラブで記者会見が開かれ、私はボビーと並んで壇上に座った。(中略)そのあとボビーと私は、計量日のプロボクサー同士みたいに軽口を叩き合った。
「彼女はウーマンリブの旗を掲げて戦ってる」ボビーは言った。「俺の旗は、年齢差に関係なく〝男は至上、男は王〟だよ。宮廷《コート》だろうとコートの上だろうと、たいがいのことで男は女に勝てる」
「それはどうかしらね」私は言った。「ボビーの言い分で一つ気に入らないのは、〝男が至上〟ってところ。第一に、男女関係なく人は人だし、どんな人にも優れたところがある。〝すべてにおいて男が優れている〟わけじゃない」
「俺たちと同じ賞金をよこせとか……冗談だろ」ボビーが言う。
「女がいなかったら、あなたは今回のチャンスにも恵まれていなかったはず」私は言い返した。「一九三九年以来、いいところなしだったでしょ」
〈男女対抗試合《バトル・オブ・ザ・セクシーズ》〉に向け、二カ月にわたる舌戦が幕を開けた。
――第一六章 ボビー・リッグズからの挑戦 より
ボビーと五セットを戦い抜くために、脚力を強化し、体調のピークを試合に合わせようとした。パーソナルトレーナーや科学に基づいたトレーニングはいまでは当たり前だが、そのころの私にはまだどちらもなかった。試行錯誤しながらトレーニングのプログラムを作り上げた。腹筋を二〇〇回、手製のアンクルウェイトを使ったレッグエクステンションを四〇〇回。毎晩少しずつ就寝時刻と起床時間を遅らせ、エネルギーレベルが試合当日の夜にピークになるよう調整した。
――第一七章 世紀の決戦に向けて より
その夜、エルトンと私はたちまち親友になった。音楽とスポーツは、人種やジェンダー、社会的地位を超えてあらゆる人を一つに結び合わせる最高の道具だと語り合った。私はエルトンの音楽が以前から大好きだったと話した。エルトンは、ロサンゼルスのホテルの部屋でバトル・オブ・ザ・セクシーズを観戦したことを教えてくれた。「きみがあのきらきらのウェアで登場したのを見て、こう思ったよ。〝ワオ! 彼女は僕をコピーしてるぞ!〟」からかうような調子でそんなことも言った。
――第二一章 大親友エルトン・ジョン より
四一歳のレネ・リチャーズがサウスオレンジで開催されたテニスウィーク・オープンに出場したとき、スポーツ界と社会でいまも結論が出ていない問題に関して激しい議論が沸き起こった。テニスを含め、競技スポーツのルールが定められた当時、〝男性として生まれた人物は女子として競技に出場できるのか。ホルモン療法や性別適合手術によって、男が女に、女が男に変わるのか。ジェンダーとは、出生時に割り合てられるものなのか、それとも成長とともに自認するものなのか。生理学的・心理学的・社会的な力はどのように影響を及ぼすのか〟といった問題について誰も考慮しなかった。
一九七五年に性別適合手術を受けるまで——この当時はきわめてまれにしか行われない措置だった——レネはドクター・リチャード・ラスキンドと名乗っていた。(中略)何もかもを手に入れたように見えた——クリニックは繁盛し、美しい妻と幼い息子がいて、彼を慕う大勢の友人に囲まれていた——が、彼には秘密があった。子供のころから、自分は男の体に閉じこめられた女だと感じていたのだ。
――第二三章 スポーツとトランスジェンダー より
イラナといると楽しくてしかたがなかった。地に足が着いていて、穏やかで、頭の回転が速くて。その日、別れてからも、ふと気づくと彼女のことばかり考えていた。イラナは美しい女性に成長していた。笑うとふいに明るく輝く濃い茶色の瞳。それにあのなんともいえないすてきなアクセント——朝から晩まで聞いていられそうだった。でも何より大事なのは、善良で繊細な心の持ち主であること、率直で思いやり深い人柄であることだ。(中略)
ある日イラナから思いがけない告白をされたのは、スウェーデン滞在中のことだった。「あなたに恋をしてしまったみたい」私はこう答えた。「私もこんな気持ちになったのは初めて」その夜、私たちは愛を交わした。
――第二四章 生涯の愛 イラナ・クロス より
プロツアーのシングルスで八五〇試合を戦い、把握しきれないほどの距離を旅し、二七年間プロのテニス選手として生きてきた私は、一九八三年一二月、競技生活に終止符を打った。(中略)通算戦績はシングルスとダブルス合わせて三九のグランドスラム。うち二〇はウィンブルドンで獲得した。七一年から七五年にかけ、シングルスで出場したグランドスラム一〇大会のうち七つで優勝し、その七つの優勝のうち六つはストレートで勝利した。グランドスラム決勝戦は12-6で勝ち越し、負けた六試合のうち四つまでが対戦相手は同世代のもう一人のトップ選手マーガレット・コートだった。トータルでは、一二六のシングルス優勝、三六の女子ダブルス優勝、三つのワールド・チームテニス年間優勝を手にした。六六年から七五年の一〇年間で七度、年末の世界ランキングで一位になった。私の墓碑銘にはこの事実も刻んでほしい——夢見たとおりの人生を生きたと。すばらしい人生だった。
――第二七章 新たなフェーズへ より
チョコレート・バーを一〇本も立て続けに食べたり、一クォート入り(およそ〇・九五リットル)のアイスクリームを一箱平らげてしまったりする日もあった。それでも満足感は続かない。ポテトチップスやスニッカーズを食べたいだけ食べたあと、極端なダイエットをして体重を減らすということを繰り返した。粉末をブレンダーで混ぜただけの飲み物しか口にせず、二〇キログラム以上減量したりもした。その直後にまた過食を始め、体重は風船のようにふくらんだ。こんな人生になるはずじゃなかった、もっといろいろなことに挑戦したかったのにと自分を責めて苦しんだ。
――第二九章 摂食障害治療センター より
日本人の母親とハイチ人の父親のあいだに生まれた大坂なおみは、試合ごとに異なるマスクを着けてコートに現われた。そのマスクには、人種差別や警察官の蛮行によって命を奪われた黒人の犠牲者の名前が書かれていた。どんなメッセージをマスクにこめたのかという記者の質問に、なおみはこう答えた。「みなさんがどのようなメッセージを受け取ったかのほうが重要です……いまの私は、差別についての意識を広めるための一つの道具なのだと思います」
――第三〇章 “クローゼットの外へ” より
ロスセリトス小学校には多様な生徒が通っている。生徒からの質問を募ると、人種やジェンダーに関することを尋ねる子が多かった。私も昔、同じようにこの教室で学び、大人になったら何をしたいだろうと夢想したこと、テニスの大会を観に行って、そこにいた全員が白人であることに気づいたとき、自分が何をすべきかわかったことを話した。
「あの日、自分に約束したの。一生を懸けて平等のために闘おうって。誰もが参加できる社会にしたかったから。誰もが大事な存在なのよ。かけがえのない存在なの。ほかの人がどう言おうと関係ない。あなたは大事な存在、かけがえのない存在なのよ。自分がどんな人間なのか、他人に決めさせてはいけない。自分で決めなさい。心と頭を使って、自分で決めるの」
――第三二章 私はビリー、平等の支持者 より
目次
まえがき
第一章 テニスに目覚めて
第二章 恩師クライド・ウォーカー
第三章 憧れのアルシア・ギブソン
第四章 アリス・マーブルの教え
第五章 いざウィンブルドンへ
第六章 強敵マーガレット・スミス
第七章 ラリー・キングとの出会い
第八章 試練つづきの新婚時代
第九章 世界の頂点へ
第一〇章 プロ転向と激動の日々
第一一章 “クローゼット”のなかで
第一二章 女子選手たちの反乱
第一三章 バージニア・スリム・ツアー
第一四章 新星クリス・エヴァート
第一五章 スキャンダルの火種
第一六章 ボビー・リッグズからの挑戦
第一七章 世紀の決戦に向けて
第一八章 すべてに全力を尽くす
第一九章 バトル・オブ・ザ・セクシーズ
第二〇章 女性たちの自由のために
第二一章 大親友エルトン・ジョン
第二二章 マルティナ・ナヴラチロワの台頭
第二三章 スポーツとトランスジェンダー
第二四章 生涯の愛 イラナ・クロス
第二五章 アウティング
第二六章 法廷での直接対決
第二七章 新たなフェーズへ
第二八章 スポーツに多様性を
第二九章 摂食障害治療センター
第三〇章 “クローゼット”の外へ
第三一章 奇跡の対面 マンデラとオバマ
第三二章 私はビリー、平等の支持者
訳者あとがき
付表
著者
ビリー・ジーン・キング(Billie Jean King)
1943年11月22日生まれ。カリフォルニア州ロングビーチ出身。11歳でテニスを始め、優れた運動神経と並外れた努力により、史上最年少の17歳で1961年のウィンブルドン選手権女子ダブルスで初優勝を果たす。4大大会では通算39勝という超人的な記録を達成。1987年には国際テニス殿堂入りを果たした。輝かしいキャリアのかたわら、男女の賃金格差の是正運動やLGBTQ+の人権保護活動にも貢献してきた。1973年、男性至上主義を掲げるボビー・リックスとの世紀の一戦<バトル・オブ・ザ・セクシーズ>では、見事な勝利をおさめて女性の能力を全世界に証明した。レズビアンであることを公表しており、パートナーは同じく元女子テニス選手のイラナ・クロス。
池田真紀子 訳
東京都出身。英米文学翻訳家。主な訳書にアーヴィン・ウェルシュ『トレイン・スポッティング』、チャック・パラニュー『ファイト・クラブ』(ハヤカワ文庫)、ミン・ジン・リー『パチンコ』(文春文庫)、ガブリエル・ゼヴィン『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』(早川書房)などがある。
書籍情報
書名:ビリー・ジーン・キング自伝 すべてに全力を尽くす
定価:2,420円(本体2,200円+税)
体裁:四六判/564ページ(オール1C)
ISBN:978-4-7778-3032-9
発売日:2023年12月12日
発行:&books(辰巳出版)
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