【慶應義塾】iPS細胞由来運動ニューロン ✕ ゲノムの統合解析により筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療メカニズムを探索
-運動ニューロンにおけるコレステロール合成亢進がALS病態の鍵-
血中総コレステロールのPRSが高い、すなわち血中総コレステロールが高くなる遺伝的背景を持っているほど、iPSC-LMNの神経突起が脆弱で、ロピニロール処置による神経突起の改善度が大きいことが分かりました。この結果は、ロピニロール処置によってiPSC-LMNにおけるコレステロール合成酵素群の発現が抑制されるとの我々の研究結果と矛盾しない結果でした(Morimoto, et al. Cell Stem Cell. 2023)。また公開データを用いた解析によって、血中総コレステロールの8割が合成される肝臓と、LMNが位置する脊髄において、コレステロール合成に関与する酵素群の遺伝子発現変化を生じる遺伝子変異(expression quantitative trait loci; eQTLs)の効果量が高度に一致していることが分かりました。さらに、健常者由来腰髄単一細胞遺伝子発現(scRNA-seq)解析により、LMNでは、他の種類のニューロンやアストロサイトと比べてコレステロール合成に関与する酵素群遺伝子の発現が高く、コレステロール合成が活発であることが示唆されました。
以上より、孤発性ALS患者のLMNでは、遺伝的素因により生理的に活発なコレステロール合成が亢進しており、それを抑制することがロピニロールの治療メカニズムの一つである可能性を見出しました。この研究成果は、孤発性ALSの疾患理解だけでなく、治療戦略開発においても重要な知見であると考えます。本研究成果は、2024年9月4日に、BMJグループの『Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry』誌に掲載されました。
▼全文は本学のプレスリリースをご参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2024/9/11/240911-1.pdf
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像