IOWNを活用した3次元点群データの遠隔解析・遠隔閲覧の実証に成功
~データの物理的な輸送をなくし、インフラ点検の効率化に貢献~
三菱電機株式会社
東日本電信電話株式会社
三菱電機株式会社(本社:東京都千代田区、執行役社長:漆間 啓、以下「三菱電機」)と、東日本電信電話株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:澁谷 直樹、以下「NTT東日本」)は、インフラ点検の効率化を目的に、IOWN(※1)におけるオール・フォトニクス・ネットワーク(以下「APN(※2)」)を活用した3次元点群データ(以下「点群データ」)の遠隔解析・遠隔閲覧の実証を2024年10月7日から2025年1月17日にかけて実施し、成功しました。本実証では、三菱電機の三菱多次元施設・設備管理システム(以下「MDMD®(※3)」)とAPN装置(※)4を接続し、三菱インフラモニタリングシステム(以下「MMSD®(※5)」)で取得した点群データの遠隔解析・遠隔閲覧の有効性を確認しました。
1. 背景
我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、その多くが今後急速に老朽化することが懸念されています。2020年からの20年間で、建設後50年以上経過する施設の割合は加速度的に増加し、特に道路・橋梁においては、約7割(※6)を超える見込みです。このため、インフラを計画的かつ効率的に維持し、必要に応じて更新することが求められています。安全なインフラ維持の実現に向けて、三菱電機はMMSDやMDMDによるトンネル等のインフラ点検を支援する計測および解析サービスを提供し、NTT東日本はMMS(※7)を利用した電柱点検を行うなど、両社は点群データを活用したインフラ維持管理に関する取り組みを進めています。しかし、点群データはデータの容量が非常に大きく、一般的なPC等では限られた範囲しか解析できないため、高性能な解析マシンを用いて解析する必要があります。また、従来のインターネット回線を利用したデータの送信や遠隔での解析・閲覧などの作業は困難なため、取得した点群データをSSD(※8)などに保存し、高性能な解析マシンが設置されている拠点へ物理的に輸送して解析する必要があります。このため、点群データの取得から解析結果を得るまでにタイムラグが生じ、タイムリーな異常個所の確認やデータ不備による再計測の対応が迅速に行えないという課題があります。
この課題に対し、三菱電機とNTT東日本は、APNの「大容量」「低遅延」「ゆらぎゼロ」の特長を活かした点群データの遠隔解析・遠隔閲覧の実現に向けて実証を試みました。
1. 概要
本実証では、点群データが保存されているPCを設置したNTTe-City Labo(※9)内の「IOWN Lab(※10)」(調布市)と、解析マシンを設置したNTT東日本初台本社ビル(新宿区)の拠点間を、1波長あたり100Gbpsの大容量かつ低遅延、ゆらぎゼロの特長を持つAPNで接続し、点群データの遠隔解析・遠隔閲覧の実証を行いました。
今回、大容量・低遅延・ゆらぎゼロの特長を持つAPNを活用し、遠隔からの伝送による点群データの解析・閲覧を検証した結果、点群データと解析マシンが離れていても、ローカル環境と遜色ない速度・品質で解析および閲覧が可能であることを確認できました。
<点群データ解析・閲覧の構成>
・点群データの物理的な輸送による解析・閲覧の構成
・本実証における遠隔での点群データ解析・閲覧の構成
<点群データ遠隔ビューア画面>
3. 今後の展開
三菱電機とNTT東日本は、本実証で得た知見を基に、点群データの遠隔解析および閲覧における新たな取り組みを進めていきます。遠隔で点群データのリアルタイムな解析・閲覧が可能になることで、インフラ管理において、異常を即座に検知し、インフラ設備の補修対応の迅速化、予防保全の効率化に貢献できます。また、街づくりでは、都市の3Dモデルをリアルタイムで更新し、交通渋滞の緩和や新しい建造物の影響をシミュレーションすることで、住みやすい都市設計が可能になります。
これからも両社は協力し、将来的には、IOWN構想における「デジタルツインコンピューティング(※11)(DTC)」を支える4Dデジタル基盤(※12)を実現し、それによって可能となる高精度3D空間情報(※13)の整備における点群データの効果的かつ効率的な活用をめざします。
4. 本件に関するお問い合わせ先
三菱電機株式会社
社会システム事業本部 通信システム事業部 IOWN・新規事業開拓グループ
MELCO_tsushin@rm.MitsubishiElectric.co.jp
東日本電信電話株式会社
経営企画部 IOWN推進室
iownlab-ml@east.ntt.co.jp
※1 IOWN (Innovative Optical and Wireless Networkの略、アイオン)とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。
※2 オール・フォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network)とは、通信ネットワークの全区間で光波長を専有する通信サービスです。NTT東日本は、2023年3月にオール・フォトニクス・ネットワークであるAPN IOWN1.0の提供を開始し、2024年12月には最大800Gbpsの「All-Photonics Connect powered by IOWN」の提供を開始しました。
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230302_01.html
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20241118_01.html
※3 三菱多次元施設・設備管理システム(MDMD)とは、道路や鉄道沿線などのデジタルツインを構築することで、利用者が現場に行かずにインフラ設備の寸法計測や現地状況の確認を可能とする三菱電機が開発したサービスです。MDMDは三菱電機の登録商標です。
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/mmsd/mdmd/index.html
※4 APN装置とは、三菱電機がAPN向けに開発した光伝送装置です。IOWN APNで定義されるAPN-I、APN-G、APN-T機能を有します。イーサネットフレームなどのユーザデータを透過的に転送することで低遅延なネットワークを実現します。
※5 三菱インフラモニタリングシステム(MMSD)とは、計測車両が道路や鉄道沿線などを走行しながら、高精度な点群データを取得した上で解析する三菱電機が開発したシステムです。MMSDは三菱電機の登録商標です。
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/mmsd/index.html
※6 2023年インフラメンテナンスにおける包括的民間委託導入の手引き 国土交通省 総合政策局公共事業企画調整課を参照しています。
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001595230.pdf
※7 MMSとは、レーザスキャナ・カメラを搭載した計測車両が道路を走行しながら、道路周辺の3次元位置情報を高精度で効率的に取得する車両搭載型計測システムです。NTT東日本では、NTT東日本管内において、MMSによる電柱の点検を実施しています。
https://www.ntt-east.co.jp/info/detail/180406_01.html
※8 SSDとは、フラッシュメモリを用いた記憶装置です。
※9 NTTe-City Laboとは、地域の課題解決に向けてNTT東日本グループが取り組むソリューションを体感できる施設です。
https://business.ntt-east.co.jp/content/regional_revitalization/labo/
※10 IOWN Labとは、IOWNのユースケース創出に向けて、さまざまなパートナーと共同実証を行う環境としてNTT東日本が2024年1月24日に開設した共創環境です。
https://business.ntt-east.co.jp/content/iown/iownlab/
※11 デジタルツインコンピューティングとは、IOWNを構成する主要な技術分野の一つであり、実世界におけるモノ・ヒト・社会に関する高精度なデジタル情報を掛け合わせることで、従来における情報通信技術の限界を超えた大規模かつ高精度な未来の予測・試行や、新たな価値を持った高度なコミュニケーションなどの実現をめざすものです。
https://group.ntt/jp/group/iown/function/dtc.html
※12 4Dデジタル基盤とは、様々なセンシングデータをリアルタイムに収集し、「緯度・経度・高度・時刻」の4次元の
情報を高い精度で一致・統合させ、多様な産業基盤とのデータ融合や未来予測を可能とする基盤です。https://www.rd.ntt/4ddpf/0001.html
※13 高精度3D空間情報とは、フィジカル空間における位置の基準となる地理空間情報のことです。
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