【国立科学博物館】環境毒ミクロシスチンを生産する新種のシアノバクテリアを霞ケ浦から発見 ー環境DNAでのみ存在が分かっていたシアノバクテリアー

 独立行政法人国立科学博物館(館長 林良博)は、国立環境研究所、福井県立大学との共同研究により、霞ヶ浦から環境毒ミクロシスチンを産生するシアノバクテリアの新種 アンナミア・デュビア(Annamia dubia)を発見しました。その研究論文がチェコ藻類学会誌(Fottea:フォッテア)に掲載される事になり、このたびオンライン先行公開されます。

 
  • 研究の背景
 本種は、霞ヶ浦の湖水から遺伝子を直接取り出し分析する環境DNA法で存在は推定されていましたが、実際に存在することは確認されていませんでした。この度、国立環境研究所が実施している霞ヶ浦モニタリング(※1)において得られた湖水から、本種を分離・培養することに成功し(※2)、国立科学博物館が分類学的な検討を行ったところ、新種であることが分かりました。

 

 
  • 研究内容と成果
 シアノバクテリアは大きく8つのグループに分類されています。今回発見されたアンナミアは、このうちクロオコックス目と呼ばれるグループに入ります。このグループのほとんどの種は単細胞や多数の細胞が集合しているのですが、アンナミアは多数の細胞が連結した細長い糸状(写真1)で、他の種と異なった形をしています。また、光合成を行うチラコイドの配列もこのグループの中では例外的で、放射状に並んでいます(写真2)。
本種は環境毒として世界中の淡水環境において問題となっているミクロシスチン(※3)を産生します。

写真1 本種は青緑色の糸状であり、その直径は1-3 µmと非常に細い写真1 本種は青緑色の糸状であり、その直径は1-3 µmと非常に細い

写真2 糸状体のシアノバクテリアとしては珍しい放射状のチラコイドを持つ写真2 糸状体のシアノバクテリアとしては珍しい放射状のチラコイドを持つ


 
  • 今後の展開
 本種が霞ヶ浦以外の湖沼にも存在するのか、また湖沼のミクロシスチン濃度にどの程度影響を与えているかなどはまだ分かっていません。地球温暖化などの気候変動に伴い、近年、日本の湖沼には様々な見たこともない種類が出現し、その中には今回の様な有害有毒藻類も含まれます。国立科学博物館では他にも過去四年間に水道水のカビ臭問題の原因となるシアノバクテリアの3種5分類群を新種記載しています。このような、気候変動による環境問題に対応すべく、私たちはこれからも協力して、日本の水域における有害有毒藻類を監視していく予定です。また、現在本種の遺伝子について全ゲノム解析を行い、クロオコックス目で例外的な形態をしている理由や、ミクロシスチンを産生する遺伝子についての解析を行っています。

 
  • 用語解説
※1 霞ヶ浦モニタリング:国立環境研究所が1976年から実施している霞ヶ浦(西浦)の総合的な調査・研究。以下のURLから各種のモニタリングデータを公開しています。
https://db.cger.nies.go.jp/gem/inter/GEMS/database/kasumi/index.html
 
※2 アンナミア・デュビアの培養株は国立環境研究所微生物保存施設(https://mcc.nies.go.jp/index.html)から分譲可能です。

※3 ミクロシスチン(ミクロキスティン):世界保健機構(WHO)の飲料水水質ガイドラインにおいて暫定基準値を持ち、日本においては水道水質基準で要検討項目として指定されている環境毒です。淡水域の湖沼などでアオコをつくるミクロキスティス属に多く含まれることで知られています。国外では人畜に対する被害が報告されていますが、国内では現在の所、人に対する被害は報告されていません。

 
  • 掲載論文
【題 名】 Annamia dubia sp. nov. with a description of a new family, Geminocystaceae fam. nov. (Cyanobacteria).
     (シアノバクテリアの新種アンナミア・デュビアとゲミノキスティス科の新科記載)

【著者名】Tuji, A., Yamaguchi, H., Kataoka, T., Sato, M., Sano, T. & Niiyama, Y.

【掲載誌】Fottea 2021 (vol. 21) issue 1 2021年4月1日発行予定
オンライン先行公開(Ahead of Print)は上記に先行して行われる予定

 
  • 謝辞
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「ナショナル バイオリソースプロジェクト藻類」および日本学術振興会科学研究費補助金(科研費)(Grant Number 20K12201 and 19K15860.)のサポートを得て行いました。

国立科学博物館、国立環境研究所、福井県立大学国立科学博物館、国立環境研究所、福井県立大学

 

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