TPP:ウィキリークスの新たな漏えい文書についてMSFの見解
各国政府や諸機関の機密情報などを公開することで注目を集めているウェブサイト「ウィキリークス」が、秘密交渉の進む環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の知的財産権保護条項の改訂案を暴露した(https://wikileaks.org/tpp-ip2/)。同サイトに掲載された文書は2014年5月付で、交渉における現在の各国の立場も見て取れる。ウィキリークスは2013年11月にも、知的財産権保護条項案をリークしていた。
国境なき医師団(MSF)でも文書を確認したが、改訂案もTPP協定の公衆衛生上の影響に対する深い懸念を払しょくするものではなかった。極めて有害な知的財産権関連条項の一部が維持されているためだ。現行案が採用となれば、アジア・太平洋地域における適正価格の薬剤購入に悪影響を与え、何百万人もの健康が損なわれるだろう。
<ジュディ・リウス・サンフアン(MSF必須医薬品キャンペーン米国マネージャー兼法政策顧問)>
改訂案が漏えいしたことをMSFは前向きに受け止めています。ただ、TPP協定交渉の特徴となっている極端な秘密主義を、参加国が自発的に放棄することの方がはるかに望ましいと思います。TPP協定がMSFの活動に与える影響や、交渉参加国の枠を超えた何百万もの人びとが被る公衆衛生上の影響について、透明性の高いオープンな議論が促されるからです。
今回の文書からは、既存の規制よりも強硬な条項案の大部分は米国と日本が積極的に進めようとしており、他の交渉参加国の多くは反対していることがわかります。オーストラリアは、強硬な条項案の大半に反対していますが、製薬企業が既存薬の改変に対して不適切に追加特許を行うことを許容する規定については米国の要求を支持しており、懸念されます。
米国の要求通りになれば、より安価なジェネリック薬(後発医薬品)による競合が阻害されてしまうでしょう。TPP協定交渉は10月19日にオーストラリアで再開される予定です。薬の入手を阻む有害な知的財産権条項案の撤廃を、すべての交渉参加国に改めて求めます。
修正案の中で特に有害な条項案について予想される影響例
・ドーハ宣言(2001年)で各国に認められた権利の行使要件を、特定の疾病や状況のみに制限してしまう。
・「既知の製品の新たな使用目的または使用方法」に関する特許を認める事で、不適切な追加特許を取得しようとする行為に対し、政府が発揮できる抑止力が制限されてしまう。
・既製品の追加特許の承認の要件として必要な公衆衛生保護策を、政府が国内法に盛り込む余地を制限してしまう。例えば、インドは特許法第3条(d)で、追加特許の承認には「確かな有効性の向上」を要件として歯止めをかけているが、こうした法整備が難しくなる。
・強制実施権や特許への異議申し立てのような、「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」で認められている公衆衛生保護策の活用を制限してしまう。
・特許リンケージ(※)、特許期間の延長、従来の米国主導の貿易協定にもなかったバイオワクチン・薬品の臨床データ独占に基づく新たな形態の専売権などを、国内法への盛り込むことが各国に義務づけられる
※ 薬事管轄官庁にジェネリック薬などの販売申請があった際、同官庁が「特許が存在する薬品の流通に悪影響を及ぼす」と判断した場合には、申請を却下できる仕組み。ジェネリック薬の流通を妨げる恐れがあるため、MSFはこの仕組みの導入に強く反対している。
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