SSFF & ASIA 25周年記念:ジャパン・ハウス Los Angelesとハリウッドで開催した映画祭のイベントレポート&ムービーを公開 ヴィム・ヴェンダース監督作、濱口竜介監督作など6作品上映
高崎卓馬氏(『PERFECT DAYS』共同脚本・プロデューサー)&別所哲也(映画祭代表)によるパネルディスカッションアーカイブ映像も本日公開 ~長編映画にはできないことをショートフィルムで実現する~
イベントでは冒頭、ジャパン・ハウスLos Angelesの館長 海部優子氏が登場し、コロナ禍を経て2回目となるLos AngelesでのSSFF & ASIA開催を大変うれしく思っていると映画祭紹介を紹介。一方で、1月に起こった能登半島地震で被災された日本の方々へのお見舞いと、被害を受けられた方々、地域の安全と復帰、復興についてもコメントしました。
「自然災害だけでなく、戦争や気候変動など、私たちの周りではたくさんの不幸な出来事も起こっています。しかしながら、映画は、癒しとパワーを与えてくれます。人々をつなげてくれます。共感を与えるとともに、異なるビジョンや文化についても教えてくれます。こんな時だからこそ、こうして日本の作品をここロサンゼルスで紹介できることに意義を感じます。」と語り幕開けたイベント。
まずは『PERFECT DAYS』が世界の映画祭で注目を浴びるヴィム・ヴェンダース監督が日本で撮影した最新たショートフィルム『Some Body Comes onto the Light』や、黒澤明監督以来初めて、アメリカのアカデミー賞と世界三大映画祭全てで受賞を果たした日本人監督として世界から熱い視線が集まる濱口竜介監督によるショートフィルム『天国はまだ遠い』、SSFF & ASIA 2023でグランプリ=ジョージ・ルーカスアワードを獲得した『希望のかけ橋』など6作品の上映が行われました。
上映後には、南カリフォルニア大学の映画配給およびタレント開発部門シニアディレクターのSandrine Cassidy氏がMCをつとめ、『PERFECT DAYS』の脚・本プロデューサー高崎卓馬氏、映画祭代表の別所哲也を迎えてのパネルディスカッションが行われました。
高崎氏が審査員をつとめる、BRANDED SHORTSとは
別所と映画祭の紹介に続き、高崎氏が紹介されました。広告代理店の電通でクリエイティブディレクターをつとめてきた高崎氏は、SSFF & ASIAの企業のブランデッドムービーにフォーカスするBRANDED SHORTS部門の審査員でもあり、また、アカデミー賞国際長編長編映画賞にも見事ノミネートを果たした『PERFECT DAYS』の共同脚本、プロデュースを行っている、今最も注目のクリエイターであることから、今回のイベントへの参加をお願いした背景が説明されました。
高崎氏は、「BRANDED SHORTS」がスタートした2016年頃から、人々がテレビから離れ、コマーシャルの居場所がなくなってきた。そんなときに、映像という原点に立ち戻った。BRANDED SHORTSはもう8年目ですが、毎年、そこに集う作品の表現や内容は異なっている。しかしそこには共通して、クリエイターが作っている「映像」「映画」の世界があることに気が付く。この先の未来、どんな風にBRANDED SHORTSが進化していくのかはとても興味深い。」とコメント。
審査のプロセスはどんなふうに、どんなポイントで行われるのかとのCassidy氏からの質問には、
「映像としてエモーショナルであること どんなことでも良いので、観たときに心が動くかどうかを見ている」と回答しました。
兄弟のような関係:ヴィム・ヴェンダース監督のショートフィルムと長編『PERFECT DAYS』
その後、トピックは長編映画『PERFECT DAYS』と、今回上映したヴィム・ヴェンダース監督のショートフィルム『Some Body Comes into the Light』の関係についてに。
このヴェンダース監督のショートフィルムが長編作品の源になったという点について聞かれると、高崎氏は、「『PERFECT DAYS』は東京のトイレ清掃員が主人公の作品。もともとは、ヴィム・ヴェンダース監督と、トイレを舞台にした短編映画を作ろう、と動き出しのがきっかけだった。それが、作っている間に色々なエピソードが重なって長編化しようとなった。」と説明しました。
この他にも、東京のトイレを取材してシナリオを作っているときに、何か所かにはホームレスがいたことから、ヴィム・ヴェンダース監督とそのことをきちんと一つの話として映画の中に入れたい、と話し合ったこと、ホームレスは誰が演じるかを考えたときに、高崎氏が大好きな田中泯さんにお願いしようと思ったことなど、エピソードが語られました。
ヨーロッパでも舞踊家として広く知られる田中泯さんが、まさかホームレスの小さな役を演じてくれないだろう、ヴェンダース監督は当初そう考えていたとのこと。映画の中の一番ラストにふさわしい映像になるだろうからと、『パーフェクトデイズ』の撮影最終日に1日をかけて撮影されたダンスシーンは、編集の段階で、個性が強すぎて、泣く泣くカットしなくててはならなかったそうですが、しかしながら、気持ちが収まらなかったヴェンダース監督が、しばらくした後に、このシーンをショートフィルムにしようと、アイディアをひらめいたことも伝えられました。
「映画の種類としては短編と長編の『PERFECT DAYS』は全く違う種類のものですが、出自が一緒、兄弟のような関係です」と高崎氏は説明しました。
別所も、(『Some Body Comes into the Light』は)「すごく密度の濃い作品でした」と感想を述べ、以前、田中泯さんが「ぼく自身の舞踊はスクリーンでは見られない。でもヴィム・ヴェンダース監督が何を見たかったか、観客に何を見てほしかったか、は見ることができる。」と話していたことを伝え、映像に対するヴェンダース監督の思い入れが表現されていると語りました。
映画祭、学生の映像制作の現場で四半世紀 —変化と潮流、未来像は—
Cassidy氏から別所へは、25年間映画史をやってきた中で感じる変化についても質問がありました。
別所は、「社会の変化、テクノロジーの発展と共に制作環境、語られるストーリーの変化はもちろんある」としながら、近年では「価値観の多様性やジャンルを超えた新しい表現が見られる」とコメント。「Web3.0やNFTなど技術の発展と市場の変化によって、“クリエイターズ・エコノミー”が生まれ始めている。」とした上で、「SSFF & ASIAでは引き続き、映像表現の可能性を広げるクリエイターと作品を応援していきたい。」と語り、「SSFF & ASIA 2024に向けては、現在までに、AIをテーマにした、またはAIが制作に使用されている作品は71点、NFTに関するショートフィルムは21点集まっている」と加え、若いクリエイターたちはそうしたテクノロジーやコンセプトにも影響を受けているのではないかと述べました。
別所からも、南カリフォルニア大学(USC)の学生たちが作る作品を間近で見ているCassidy氏に対し、ここ最近の、ウェブ3.0やテクノロジーの発展によって見られる変化、潮流があるかとの問いがけがありました。
Cassidy氏は、「25年間働いてきて、たくさんのダイバーシティ、多くの自己表現を見てきました。実験的な手法や技術を使っている学生は多く、特に米国の映画業界はXR、VR、AIなどの動きが顕著で、その影響もある。」と回答。USCのプロジェクトでも、AIなどのテクノロジーを活用し、SXSWのエクスペリメンタル部門、ヴェニス映画祭でも上映されたことを紹介。昨年にはVRゲーミングプロジェクトもスタート、トロント国際映画祭で紹介されたことなど、学生たちも大いに新たな技術を駆使し、挑戦していることが伝えられました。また、一方で、「生徒たちはショートフィルムについて、商業的な側面を考えずに、シンプルに自分の表現を追求できるものと考えている。だから、ショートフィルムは素晴らしいのだなと私も思います。」と述べました。
ピュアにクリエイティブになれるのがショートフィルムの面白いところ
最後に、「未來のショートフィルムは?」と聞かれると、高崎氏は、「長編だとできないことをいかに楽しむか、が短編のポイントだと思う。2時間あると逆にできないことをやるべきだなと。起承転結やビジネス、といったしがらみから離れ、ピュアにクリエイティブになれる、というのが一番面白いところ。出来上がった作品を観て、自分自身で何をしたかったか、自分の心の声をもう一度聞く、そういう場所になると良い。そういう風に作ったものが結果的に短編としても魅力的だし、短編というカルチャーを作っていくのではないか」と語りました。
トークイベントのアーカイブ映像はこちらからご覧いただけます。
https://youtu.be/HOja8jTrkBQ?si=kEYK3yBf5TheOYJb
イベントのダイジェスト映像はこちらからご覧いただけます。
<上映作品>
左上より:
SSFF & ASIA 2023グランプリ=ジョージ・ルーカスアワード受賞
『希望のかけ橋』(The Bridge)監督:吉田和泉/22:30/ポーランド/アニメーション/2022
ポーランドと日本の絆を深めた 1920 年の出来事を映画化。 家族を失い、人生を生き抜くために自立を迫られる孤児の歴史を、
10歳の少年の視点から語っている。
監督:吉田和泉:1989年生まれ。ウッチ映画大学を卒業。2017年からウッチにあるアートスクールで教鞭を執っている。初の映画作品「Kinki」は多くの映画祭でノミネートされ、Split Film FestivalやAnimatorなどで、数々の賞を獲得した。2019年にはPolish Film Instituteにanimation film domainの専門家として参加した。
SSFF & ASIA 2022オフィシャルコンペティション ジャパン・カテゴリー ノミネート
『ありがとう』(Gratitude)監督:永山瑛太/20:55/日本/ドラマ/2022
家族と離れ、死に場所を求めてひとり彷徨う男。癒してくれるはずのマッサージ嬢からも逃げ出し、路上で盗んだ車で奥深い山へと入っていく。車を乗り捨て、さらに森の奥へ歩み入る男は、そこで奇妙な若者に出会う。
監督:永山瑛太:1982年生まれ。日本アカデミー賞、エランドール賞、ブルーリボン賞など数々の映画賞を受賞。自主映画の制作はあるが、本格的な映画は同作が初監督作品となる。
『MASKAHOLIC』 監督:洞内広樹/ 15:00/日本/サスペンス・ミステリー/2020
一般人の久美は、マスクをしていれば有名女優の襟谷麻衣子にそっくり。ある日、久美の写真が襟谷として週刊誌に掲載される。友人の和菜にそそのかされ、久美は襟谷の“なりすまし”インスタを開設。思わせぶりな写真を投稿するうちに、襟谷の“裏アカ”ではないかと話題になっていく。襟谷の事務所から呼び出された久美は─。
監督:洞内広樹:1985年日本生まれ。ジェームズ・キャメロン監督『タイタニック』を観て監督を志す。2018年『東京彗星』でSSFF & ASIA Cinematic Tokyo部門で受賞した他、『GHOSTING』(『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』)、『サムライソードフィッシュ』などを監督。
『天国はまだ遠い』 (Heaven is Still Far Away)監督:濱口竜介/38:00/日本/ドラマ/2016
AVのモザイク付けを生業とする雄三は、女子高生の三月(みつき)と奇妙な共同生活を送っている。ある日、三月の妹から雄三に、一本の電話が入る。
監督:濱口竜介:東京大学文学部卒業後、映画の助監督やTV番組のADを経て、東京藝術大学大学院映像研究科に入学。在学中は黒沢清監督らに師事し、2008年の修了制作「PASSION」がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスで高い評価を得る。酒井耕監督と共同制作した「東北記録映画3部作」と呼ばれるドキュメンタリー群(11~13)や、4時間を超える長編「親密さ」(12)などを経て、15年に発表した監督・脚本作「ハッピーアワー」でロカルノ国際映画祭やナント国際映画祭など、数々の国際映画祭で主要な賞を受賞し、一躍注目を集める。続けて、商業映画デビュー作品「寝ても覚めても」(18)がカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出。ベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞した黒沢清監督作「スパイの妻」(20)では共同脚本を担当した。21年、村上春樹の短編小説を映画化した「ドライブ・マイ・カー」が再びカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本映画で初となる脚本賞を受賞。同作は、ゴールデングローブ賞非英語映画賞を受賞するなど全米賞レースでも高く評価され、第94回アカデミー賞では日本映画史上初となる作品賞にノミネートされたほか、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の計4部門にノミネートされ、国際長編映画賞を受賞。
第90回米国アカデミー賞短編アニメーション部門ノミネート
『ネガティブ・スペース』 (Negative Space) 監督:桑畑かほる/マックス・ポーター/5:30/フランス・日本/アニメーション/2017
父に教わった僕のパッキングは完璧だ。だから気になる…
監督:桑畑かほる&マックス・ポーター:遊び心とユーモアにあふれたミクストメディア・アニメーションで知られるMaxとRuは、手作りのアート、写真及びデジタル技術を組み合わせて作品を作り上げる。2007年に共同制作を始めて以来、TVコマーシャル、ミュージックビデオ、公共広告、自主制作映画などを監督した。
『Some body Comes into the Light』 監督:ヴィム・ヴェンダース/9:00/日本/エクスペリメンタル/2023
ダンサー田中泯 氏とヴィム・ヴェンダース監督による美しいセッションが描き出す、私たちが言葉を交わし始める前のこと。
監督:ヴィム・ヴェンダース:ドイツ・デュッセルドルフ出身。ミュンヘン大学で映像制作を学び、映画評論家としてキャリアをスタートさせる。70年に長編監督デビューし、「都会のアリス」(74)、「まわり道」(75)、「さすらい」(76)の3部作で国内外から注目を集め、以降数多くのロードムービーを発表。「アメリカの友人」(77)を観たフランシス・フォード・コッポラ監督に招かれて、米国に渡り「ハメット」(82)を監督する。しかし、ハリウッド式の製作方法やコッポラと折が合わず、ドイツに戻った。米国での経験を反映させた「ことの次第」(82)で、ベネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞。カンヌ国際映画祭では、「パリ、テキサス」(84)がパルムドールに選ばれる。「ベルリン・天使の詩」(87)で監督賞を獲得し、続編「時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース!」(93)は審査員特別グランプリを受賞した。ドキュメンタリー作品にも定評があり、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(99)、「Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」(11)はアカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされている。
<「UNLOCK CINEMA | Short Films, Infinite Possibilities」 開催概要>
■日付:
2024年1月11日(木)
■上映会場:
TCL 6 Chinese Theater
(6925 Hollywood Blvd, Hollywood, CA 90028, United States)
■時間:
6:00 pm 開場
6:30pm – 6:45pm オープニング
6:45pm – 8:45pm 上映
• “The Bridge” (2022) Directed by Izumi Yoshida
• “Gratitude” (2022) Directed by Eita Nagayama
• “Heaven is Still Far Away” (2016) Directed by Ryusuke Hamaguchi
• “MASKAHOLIC” (2021) Directed by Hiroki Horanai
• “Negative Space” (2017) Directed by Ru Kuwahata / Max Porter
• “Some Body Comes into the Light” (2023) Directed by Wim Wenders
8:45pm – 9:15pm トークイベント
■料金:$10.
■パネルディスカッション アーカイブ映像
■イベントダイジェスト映像 https://youtu.be/q-jYljF_ZIw
<ショートショート フィルムフェスティバル & アジア>
米国俳優協会(SAG)の会員でもある俳優 別所哲也が、米国で出会った「ショートフィルム」を、新しい映像ジャンルとして日本に紹介したいとの想いから1999年にアメリカン・ショート・ショートフィルムフェスティバル創立。2001年には名称を「ショートショート フィルムフェスティバル(SSFF)」とし、2004年に米国アカデミー賞公認映画祭に認定されました。
また同年、アジア発の新しい映像文化の発信・新進若手映像作家の育成を目的とし、同年に 「ショートショート フィルムフェスティバル アジア(SSFF ASIA 共催:東京都)」が誕生し、現在は 「SSFF & ASIA」を総称として映画祭を開催しています。
2018年には、映画祭が20周年を迎えたことを記念し、グランプリ作品はジョージ・ルーカス監督の名を冠した「ジョージ・ルーカス アワード」となりました。 2019年1月には、20周年の記念イベントとして「ショートショートフィルムフェスティバル in ハリウッド」が行われ、2019年の映画祭より、ライブアクション部門(インターナショナル、アジアインターナショナル、ジャパン)およびノンフィクション部門の各優秀賞4作品が、2022年からはアニメーション部門の優秀賞を含む5作品が、翌年のアカデミー賞短編部門へのノミネート候補とされる権利を獲得しました。SSFF & ASIAは映画祭を通じて引き続き、若きクリエイターを応援してまいります。
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