ランサーズ、「インボイス制度に関する実態調査」を実施 - 約7割が登録メリットを実感せず
登録手続きハードル、対応コスト負担が浮き彫りに。フリーランスが感じる情報・支援の不足
フリーランスマッチングプラットフォーム『Lancers』を運営するランサーズ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 CEO:秋好 陽介、東証グロース:4484、以下「ランサーズ」)は、ランサーズに登録しているユーザー617名を対象に「インボイス制度に関する実態調査」を実施いたしました。本調査では、インボイス制度に関するフリーランスの対応状況、課題、制度がもたらす影響を分析しています。
■結果サマリー
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インボイス発行事業者の登録率は約3割
インボイス発行事業者として登録しているフリーランスは全体の28.7%にとどまり、多くのフリーランスは登録を見送っていることが判明した。制度対応の負担や必要性の低さが影響していると考えられる。
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インボイス制度対応のために法人化した方は1.4%
制度に対応するために「研修やセミナーに参加」(26.9%)や「会計ソフトの導入」(16.9%)を選択する人が多く、対応の主軸は知識の習得やソフトウェアによる効率化であった。大幅な組織変更や法人化は少数にとどまった。
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インボイス発行事業者に登録したことによるメリットの実感が乏しい
登録後にメリットを実感したフリーランスは少なく、66.2%が「特になし」と回答。取引先との信頼関係強化(19.0%)や透明性向上(10.3%)はあるものの、全体的な効果は限定的である。
■調査結果
【インボイス発行事業者として登録していますか?(n=617)】
インボイス発行事業者として登録しているフリーランスは全体の28.7%にとどまり、71.3%が「いいえ」と回答した。この結果から、インボイス制度自体の認知度は高いものの、実際に登録するフリーランスは少なく、制度への対応に対して慎重な姿勢が見受けられる。多くのフリーランスが、手続きの複雑さや制度に対する負担を理由に登録を見送っていると考えられる。
【インボイス制度のために新しく導入したこと、実践したことはありますか?(n=177)※複数選択可】
インボイス発行事業者として登録しているフリーランスを対象に、登録にあたっての対応について尋ねたところ、「インボイス制度関連の研修やセミナーに参加した」と回答した方が26.9%で最も多く、次いで「会計ソフトやSaaSツールの導入」(16.9%)と続いた。これに対し、「法人化した」との回答はわずか1.4%にとどまった。
多くのフリーランスはまずインボイス制度の知識を深めることを優先し、研修やセミナーへの参加やツールの導入することで対応している様子がうかがえる。また、法人化といった大規模な体制変更には踏み切らず、既存の業務体制の範囲内で制度対応を進めようとする傾向が見られた。
【インボイス制度の対応における主な課題を教えてください。(n=177)※複数選択可】
制度対応において感じる主な課題について尋ねたところ、「特に課題はない」という回答が27.6%で最多となった。一方で、「業務負担が増えた」(25.3%)、「税務処理の難易度が上がった」(24.5%)も多く挙げられ、業種や個々の対応状況により課題感にはばらつきがあることが示されている。また、「請求書や領収書が要件を満たすかの判断が難しい」(13.0%)といった具体的な業務上の困難も指摘されている。
【インボイス発行事業者に登録したことによって得たメリットはありますか?(n=177)※複数選択可】
インボイス発行事業者の登録によって感じたメリットは、「特になし」(66.2%)と回答した方が最も多く、メリットを実感しているフリーランスは少数派であることがわかった。
次に多い回答は「取引先との信頼関係が強化された」(19.0%)、「取引の透明性が向上した」(10.3%)と続いたが、どちらも割合としては少なく、多くのフリーランスにとってインボイス発行事業者の登録がメリットには繋がりにくいと感じている。
【インボイス制度の対応において、どれくらいの業務量の増加を感じますか?(n=177)】
インボイス制度の対応により増加した業務量については、「30分未満」と回答したフリーランスが36.7%で最も多く、次いで「1時間~2時間」が21.5%となった。一方で、「業務量の増加は感じない」と答えたフリーランスも14.1%おり、対応による業務量の増加は個々の状況によって異なることが示されている。全体として、一定の業務増加を感じているものの、過半数の方が1時間未満の負担増に収まっている。
【インボイス発行事業者に登録したことによって、取引先からの発注・業務量に影響はありましたか?(n=177)】
インボイス発行事業者に登録した後、取引先からの発注や業務量に変化があったかを尋ねたところ、「変わらない」と回答したフリーランスが71.8%と大多数を占めた。一方で、「発注・業務量が減少した」と感じたフリーランスは6.2%、「増加した」と回答したのは4.5%にとどまった。この結果から、インボイス制度が取引量に与える影響は全体的には限定的であることがわかるが、一部のフリーランスには取引量の減少という影響が出ていることも示されている。取引先によって制度への対応姿勢が異なることが、影響のばらつきに繋がっていると考えられる。
【インボイス発行事業者として登録していない理由を教えてください。(n=440)※複数選択可】
インボイス発行事業者として登録していない方に理由を尋ねたところ、「経済的なメリットを感じない」(20.5%)が最も多く、次いで「事務負担が増える」(14.4%)、「制度についてよく理解していない」(13.4%)が挙げられた。多くのフリーランスが、インボイス発行事業者に登録することの直接的なメリットを実感できていないことが、登録を見送る要因となっていることがわかる。また、手続きの複雑さや理解不足が障壁となっており、理解促進や手続きの簡素化が求められる。
【今後、インボイス発行事業者として登録する可能性はありますか?(n=440)】
「登録予定がない」が51.9%で最多だが、「条件が整えば登録を検討する」という回答も45.4%と多い結果となった。多くのフリーランスが現時点でのインボイス発行事業者への登録に消極的であるものの、条件が整えば登録を検討する意向があり、登録のハードルが下がることで、登録者が増加する可能性があると考えられる。
【インボイス発行事業社に登録する際、どのようなサポートがあればハードルが下がると感じますか?(n=440)※複数選択可】
インボイス発行事業者に登録する際に求められるサポートとして、「シンプルな手続きガイド」(19.2%)、「税務や経理に関するサポート」(15.2%)、「自動化された会計ソフトやツールの提供」(14.0%)といったサポート要望が多く挙がった。手続きの複雑さや税務の煩雑さに対するサポートが強く求められており、簡易な手続きガイドやツールの提供が、制度対応のハードルを下げるために重要な役割を果たすと考えられる。
■まとめ
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多くのフリーランスが感じるインボイス発行事業者登録のメリット不足
登録のメリットについて「特になし」と回答した登録者が66.2%に達し、登録により期待される「取引の透明性」や「信頼性の向上」といった効果も限定的であることが明らかになった。また、未登録のフリーランスにおいても、登録しない理由として「経済的なメリットを感じない」という回答が最多となり、登録者・未登録者ともにインボイス発行事業者登録に対するメリットを感じられていない状況が浮き彫りとなった。一方で、制度対応における課題については「特に課題はない」との回答が最多であり、制度対応そのものが大きな障害になっているわけではないことも示された。つまり、インボイス発行事業者登録による明確なメリットやデメリットを感じているフリーランスは少なく、フリーランスが実感できる具体的なメリットを提供することが求められる。
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登録者が感じる制度対応の金銭的負担の大きさ
インボイス発行事業者に登録したフリーランスの多くは、登録手続きやその後の対応をスムーズに進めるために「インボイス制度関連の研修やセミナーに参加」や「会計ソフトやSaaSツールを導入」といった対応を行っている。これに伴い、研修・セミナーの参加費用やツール導入費用といった金銭的負担が増加していることがうかがえる。一方で、取引先からの発注や業務量について「変わっていない」と回答したフリーランスが多数を占めており、収入金額に関しては登録前後で大きな変化が見られない場合が多いと考えられる。しかし、発行事業者に登録することで課税事業者となり、課税処理の影響によって所得金額が実質的に減少しているフリーランスも存在すると予想される。収入金額が増えない状況で金銭的コストが発生している点は、制度対応を継続する上での大きな課題と言える。これらの結果から、制度の対応負担と効果のバランスに改善の余地があることが浮き彫りとなった。
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情報収集の簡易化・サポート体制の強化が登録率向上のカギ
インボイス発行事業者として未登録のフリーランスの中で、「条件が整えば登録を検討する」と回答した割合は45.4%にのぼり、登録意欲が低い現状ながらも、適切な支援があれば登録の可能性が高まることが示されている。登録のハードルを下げるためには、シンプルで分かりやすい手続きガイドの配布や、会計ソフトの提供によるコスト負担軽減といった具体的な施策が有効と考えられる。また、登録することで得られるメリットをフリーランスが実感できる形で提供することも重要である。今後、インボイス発行事業者登録の増加を促進するためには、手続きの簡略化やサポート体制の充実を図り、フリーランスが安心して制度に対応できる環境を整えることが不可欠であると考えられる。
■調査概要
調査期間:2024年10月28日(月)〜11月1日(金)
対象者:ランサーズに登録しているユーザー(受注者のみ)
調査方法:オンラインアンケート
有効回答数:617名
■ランサーズ株式会社について
ランサーズ(東証グロース:4484)は、「個のエンパワーメント」をミッションに掲げ、個人と企業をオンラインでマッチングする受発注プラットフォームを運営しております。テクノロジーを活用した新しい働き方を提供することで、個人の生活・働き方、あり方を変革し、一人でも多くの個人が働き甲斐を感じられるよりよい豊かな社会づくりに貢献します。また、200万人を超えるフリーランスとの適切なマッチングにより企業の人材不足、生産性向上、DX化促進への課題にも寄与し、外部人材活用によるイノベーション、技術革新を推進しております。
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