2020年の倒産件数は7809件、2000年以降で2番目の低水準
負債総額は1兆1810億5600万円、2000年以降最小
帝国データバンクは、2020年における負債1000万円以上の法的整理について集計を行った。
<主要ポイント>
■件数 2年ぶりの前年比減少、2000年以降で2番目の低水準
2020年の倒産件数は7809件(前年8354件、前年比6.5%減)と、2年ぶりに前年を下回り、2000年以降で2番目の低水準となった。また月別では12カ月中6カ月で前年同月を下回り、とくに下半期で減少が目立った。
2020年の上場企業倒産は、東証1部上場の(株)レナウン(東京都、民事再生→破産、5月)と、ジャスダック上場の(株)Nuts(東京都、破産、9月)の2件。
2020年の負債総額は1兆1810億5600万円(前年1兆4135億8500万円、前年比16.4%減)と最小だった前年をさらに下回り、2000年以降で最小となった。月別では、12カ月中8カ月で前年同月を下回った。
負債額最大の倒産は、三菱マテリアル(株)の事業を分社化する目的で設立され、自動車用部品などを製造していた(株)ダイヤメット(新潟県、民事再生、12月)の約577億9000万円。
業種別にみると、全業種で前年を下回った。建設業(1266件、前年比10.5%減)は公共工事や通信インフラに関する工事の受注が堅調だったことから、職別工事・総合工事が減少し、過去最少となった。また、卸売業(1041件、同13.7%減)は、自動車・同付属品卸(32件)などで減少が目立ったほか、木材・建築材料卸(61件)、貴金属卸(16件)は過去最少となった。
一方、サービス業(1872件、同5.2%減)では宿泊業(127件)が前年比76.4%の大幅増。小売業(1879件、同3.4%減)では飲食店(780件、同6.6%増)が過去最多となった。
主因別の内訳をみると、「不況型倒産」の合計は6179件(前年比6.6%減)となった。構成比は79.1%(同0.1ポイント減)を占めた。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
負債額別にみると、負債5000万円未満の倒産は4925件(前年比4.6%減)となった。構成比は13年連続で上昇し2000年以降最高の63.1%(同1.3ポイント増)を占めた。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産は5291件(前年比5.5%減)、構成比は67.8%(同0.8ポイント増)を占めた。
地域別にみると、9地域中8地域で前年を下回った。北海道(173件、前年比18.8%減)は全業種で減少。3年連続の前年比減少となり、過去最少となった。また、東北(361件、同10.4%減)、中国(346件、同8.2%減)、四国(156件、同13.3%減)の3地域は4年ぶりに減少へ転じた。関東(2743件、同8.0%減)は6業種で減少し、過去2番目の低水準となったものの、居酒屋をはじめとする飲食店は増加した。
一方、北陸(261件、前年比3.6%増)は唯一前年を上回り、3年連続の増加となった。
態様別にみると、会社更生法は3件、破産は7212件(構成比92.4%)、特別清算は320件(同4.1%)、民事再生法は274件(同3.5%)となった。
人手不足倒産:2020年は150件(前年比18.9%減)、5年ぶりの減少
■倒産件数は20年ぶりの低水準、負債は過去最小に
2020年(1~12月)の倒産件数(7809件、前年比6.5%減)は2年ぶりに前年比で減少し、20年ぶりに8000件を下回る低水準となった。業種別にみると、7業種全てが前年比で減少。さらに建設(1266件)、卸売(1041件)、製造(867件)、不動産(231件)の4業種は過去最少を記録した。態様別では、特別清算(320件)が3年ぶりに前年比で増加し過去10年で最多となった一方、民事再生(275件)は前年比で2割ほど減少している。
負債総額(1兆1810億5600万円、前年比16.4%減)は、2000年以降最小となった。負債50億円以上の倒産件数(19件、同29.6%減)が過去最少と、大型倒産も低水準で推移した。
■新型コロナ対応の特別融資や各種給付金など資金繰り支援策が奏功
新型コロナウイルス感染拡大による企業経営へのダメージが危惧されるなか、金融機関は実質無利子・無担保の新型コロナ対応融資などを実施した。2020年12月時点の銀行・信金の貸出平残は前年同月比6.2%増の577兆6393億円と過去最高で、金額は34兆円近く増加している(貸出・預金動向 速報、日本銀行)。
貸出金、劣後ローンなどの資本性資金、2021年1月11日までに約402万件実行(給付額5.3兆円、経済産業省)された持続化給付金など、国をあげた支援策が、総じて多くの企業の資金繰りを支え倒産の歯止めとして奏功した。
■飲食業の倒産が過去最多、宿泊業は過去3番目に多く
観光や飲食関連などの支援策「Go To キャンペーン」は、展開中に一定の需要を喚起したものの、新型コロナ感染再拡大を受けたキャンペーン中断などで関連業界の需要は大きく揺さぶられた。各種資金繰り支援策が追い付かない事例もあり、2020年の飲食業の倒産は780件と過去最多を記録。宴会需要の冷え込みを背景に居酒屋業態などが件数を押し上げた。ホテルなど宿泊業の倒産は前年比1.8倍の127件となり、2011年(131件)、2008年(130件)に次ぐ過去3番目の高水準。旅行業の倒産は前年比2割増の24件となった。
旅行業として過去最大の負債となった(株)ホワイト・ベアーファミリー(6月、負債278億円)は、国内・海外旅行の企画販売を手がけていたが、コロナ禍の渡航制限などで受注が激減し、関係会社のホテル経営、WBFホテル&リゾーツ(株)(4月、負債160億円)とともに経営破綻。この他、LCC事業のエアアジア・ジャパン(株)(11月、負債217億円)やアパレル大手の(株)レナウン(5月、負債138億円)など、人々の行動自粛が影響する新型コロナ関連倒産が2020年の負債上位に名を連ねた。
■新型コロナ第3波への対応状況に注目
政府は2020年12月8日、新型コロナ感染拡大防止策、ポストコロナにむけた経済構造の転換や国土強靭化を柱とする73兆円超の追加経済対策を閣議決定した。今後、地方創生臨時交付金、中小企業の業態転換や生産性向上にむけた補助金など、予算実行の動向が注目される。
一方、目の前では懸念材料が山積している。新型コロナの感染が再拡大するなか、政府は1月7日、首都圏1都3県に緊急事態宣言を発出。これを受け、首都圏の経済活動の停滞が予想されるほか、関西3府県などにも拡大する動きにある。また、2020年11月の就業者数は8カ月連続で前年同月比減少(労働力調査、総務省)、企業の32.5%が冬季賞与減少と回答(「2020年冬季賞与の動向調査」帝国データバンク、2021年1月発表)するなど個人消費の下振れの影響が危惧される。企業の資金繰りを支えてきた新型コロナ対応融資は最長5年の元本返済猶予に応じている。他方、返済開始時期までに、ビジネスモデルの再構築や収益性の向上に見込みが立たない企業は少なくないとみられる。急激な業績の落ち込みに各種支援策が追い付かないケースを含め、年度末にむけて企業倒産が増加局面に移る可能性は否定できない。
- 1. 2020年の倒産件数は7809件(前年8354件、前年比6.5%減)と、2年ぶりに前年を下回り、2000年以降で2番目の低水準
- 2020年の負債総額は1兆1810億5600万円(前年1兆4135億8500万円、前年比16.4%減)と最小だった前年をさらに下回り、2000年以降で最小
- 負債額最大の倒産は、㈱ダイヤメット(新潟県、民事再生、12月)の約577億9000万円
- 業種別にみると、全業種で前年を下回った。建設業(1266件、前年比10.5%減)は過去最少となった。一方、サービス業(1872件、同5.2%減)では宿泊業(127件)が大幅増。小売業(1879件、同3.4%減)では飲食店(780件)が過去最多
- 主因別の内訳をみると、「不況型倒産」の合計は6179件(前年比6.6%減)となった。構成比は79.1%(同0.1ポイント減)を占める
- 負債額別にみると、負債5000万円未満の倒産は4925件(前年比4.6%減)となった。構成比は13年連続で上昇し2000年以降最高の63.1%(同1.3ポイント増)を占める
- 地域別にみると、9地域中8地域で前年を下回った。北海道(173件、前年比18.8%減)は3年連続の前年比減少となり、過去最少となった。また、東北(361件、同10.4%減)、中国(346件、同8.2%減)、四国(156件、同13.3%減)の3地域は4年ぶりに減少へ転じた
- 「人手不足倒産」は150件(前年比18.9%減)、5年ぶりの減少
- 「後継者難倒産」は452件(前年比1.7%減)、3年ぶりの減少も依然高水準
- 「返済猶予後倒産」は491件(前年比6.3%減)、2年ぶりの減少
■件数 2年ぶりの前年比減少、2000年以降で2番目の低水準
2020年の倒産件数は7809件(前年8354件、前年比6.5%減)と、2年ぶりに前年を下回り、2000年以降で2番目の低水準となった。また月別では12カ月中6カ月で前年同月を下回り、とくに下半期で減少が目立った。
2020年の上場企業倒産は、東証1部上場の(株)レナウン(東京都、民事再生→破産、5月)と、ジャスダック上場の(株)Nuts(東京都、破産、9月)の2件。
■負債総額 2000年以降最小を更新
2020年の負債総額は1兆1810億5600万円(前年1兆4135億8500万円、前年比16.4%減)と最小だった前年をさらに下回り、2000年以降で最小となった。月別では、12カ月中8カ月で前年同月を下回った。
負債額最大の倒産は、三菱マテリアル(株)の事業を分社化する目的で設立され、自動車用部品などを製造していた(株)ダイヤメット(新潟県、民事再生、12月)の約577億9000万円。
■業種別 全業種で前年比減少
業種別にみると、全業種で前年を下回った。建設業(1266件、前年比10.5%減)は公共工事や通信インフラに関する工事の受注が堅調だったことから、職別工事・総合工事が減少し、過去最少となった。また、卸売業(1041件、同13.7%減)は、自動車・同付属品卸(32件)などで減少が目立ったほか、木材・建築材料卸(61件)、貴金属卸(16件)は過去最少となった。
一方、サービス業(1872件、同5.2%減)では宿泊業(127件)が前年比76.4%の大幅増。小売業(1879件、同3.4%減)では飲食店(780件、同6.6%増)が過去最多となった。
■主因別 「不況型倒産」の構成比79.1%
主因別の内訳をみると、「不況型倒産」の合計は6179件(前年比6.6%減)となった。構成比は79.1%(同0.1ポイント減)を占めた。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別 負債5000万円未満の構成比63.1%、2000年以降最高
負債額別にみると、負債5000万円未満の倒産は4925件(前年比4.6%減)となった。構成比は13年連続で上昇し2000年以降最高の63.1%(同1.3ポイント増)を占めた。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産は5291件(前年比5.5%減)、構成比は67.8%(同0.8ポイント増)を占めた。
■地域別 北海道、関東など8地域で前年比減少
地域別にみると、9地域中8地域で前年を下回った。北海道(173件、前年比18.8%減)は全業種で減少。3年連続の前年比減少となり、過去最少となった。また、東北(361件、同10.4%減)、中国(346件、同8.2%減)、四国(156件、同13.3%減)の3地域は4年ぶりに減少へ転じた。関東(2743件、同8.0%減)は6業種で減少し、過去2番目の低水準となったものの、居酒屋をはじめとする飲食店は増加した。
一方、北陸(261件、前年比3.6%増)は唯一前年を上回り、3年連続の増加となった。
■態様別 「破産」は7212件、構成比は92.4%
態様別にみると、会社更生法は3件、破産は7212件(構成比92.4%)、特別清算は320件(同4.1%)、民事再生法は274件(同3.5%)となった。
■特殊要因倒産
人手不足倒産:2020年は150件(前年比18.9%減)、5年ぶりの減少
後継者難倒産:2020年は452件(前年比1.7%減)、3年ぶりの減少も依然高水準
返済猶予後倒産:2020年は491件(前年比6.3%減)、2年ぶりの減少
<今後の見通し>
■倒産件数は20年ぶりの低水準、負債は過去最小に
2020年(1~12月)の倒産件数(7809件、前年比6.5%減)は2年ぶりに前年比で減少し、20年ぶりに8000件を下回る低水準となった。業種別にみると、7業種全てが前年比で減少。さらに建設(1266件)、卸売(1041件)、製造(867件)、不動産(231件)の4業種は過去最少を記録した。態様別では、特別清算(320件)が3年ぶりに前年比で増加し過去10年で最多となった一方、民事再生(275件)は前年比で2割ほど減少している。
負債総額(1兆1810億5600万円、前年比16.4%減)は、2000年以降最小となった。負債50億円以上の倒産件数(19件、同29.6%減)が過去最少と、大型倒産も低水準で推移した。
■新型コロナ対応の特別融資や各種給付金など資金繰り支援策が奏功
新型コロナウイルス感染拡大による企業経営へのダメージが危惧されるなか、金融機関は実質無利子・無担保の新型コロナ対応融資などを実施した。2020年12月時点の銀行・信金の貸出平残は前年同月比6.2%増の577兆6393億円と過去最高で、金額は34兆円近く増加している(貸出・預金動向 速報、日本銀行)。
貸出金、劣後ローンなどの資本性資金、2021年1月11日までに約402万件実行(給付額5.3兆円、経済産業省)された持続化給付金など、国をあげた支援策が、総じて多くの企業の資金繰りを支え倒産の歯止めとして奏功した。
■飲食業の倒産が過去最多、宿泊業は過去3番目に多く
観光や飲食関連などの支援策「Go To キャンペーン」は、展開中に一定の需要を喚起したものの、新型コロナ感染再拡大を受けたキャンペーン中断などで関連業界の需要は大きく揺さぶられた。各種資金繰り支援策が追い付かない事例もあり、2020年の飲食業の倒産は780件と過去最多を記録。宴会需要の冷え込みを背景に居酒屋業態などが件数を押し上げた。ホテルなど宿泊業の倒産は前年比1.8倍の127件となり、2011年(131件)、2008年(130件)に次ぐ過去3番目の高水準。旅行業の倒産は前年比2割増の24件となった。
旅行業として過去最大の負債となった(株)ホワイト・ベアーファミリー(6月、負債278億円)は、国内・海外旅行の企画販売を手がけていたが、コロナ禍の渡航制限などで受注が激減し、関係会社のホテル経営、WBFホテル&リゾーツ(株)(4月、負債160億円)とともに経営破綻。この他、LCC事業のエアアジア・ジャパン(株)(11月、負債217億円)やアパレル大手の(株)レナウン(5月、負債138億円)など、人々の行動自粛が影響する新型コロナ関連倒産が2020年の負債上位に名を連ねた。
■新型コロナ第3波への対応状況に注目
政府は2020年12月8日、新型コロナ感染拡大防止策、ポストコロナにむけた経済構造の転換や国土強靭化を柱とする73兆円超の追加経済対策を閣議決定した。今後、地方創生臨時交付金、中小企業の業態転換や生産性向上にむけた補助金など、予算実行の動向が注目される。
一方、目の前では懸念材料が山積している。新型コロナの感染が再拡大するなか、政府は1月7日、首都圏1都3県に緊急事態宣言を発出。これを受け、首都圏の経済活動の停滞が予想されるほか、関西3府県などにも拡大する動きにある。また、2020年11月の就業者数は8カ月連続で前年同月比減少(労働力調査、総務省)、企業の32.5%が冬季賞与減少と回答(「2020年冬季賞与の動向調査」帝国データバンク、2021年1月発表)するなど個人消費の下振れの影響が危惧される。企業の資金繰りを支えてきた新型コロナ対応融資は最長5年の元本返済猶予に応じている。他方、返済開始時期までに、ビジネスモデルの再構築や収益性の向上に見込みが立たない企業は少なくないとみられる。急激な業績の落ち込みに各種支援策が追い付かないケースを含め、年度末にむけて企業倒産が増加局面に移る可能性は否定できない。
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