COP30を前に「ASEANとインドのカーボンニュートラルへの動き」を公表しました
電力・燃料部門における日本企業の海外市場への進出機会を考察
11月10日から開催予定の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)を前に、NEDOは経済成長の著しい東南アジア諸国連合(ASEAN)とインドの電力・燃料部門における、カーボンニュートラル政策と動向を調査、分析しまとめた、TSC Foresight短信レポート「ASEANとインドのカーボンニュートラルへの動き―電力・燃料部門における日本企業の市場機会を考える―」を公表しました。
調査の結果、国ごとに特徴のある再生可能エネルギー(以下、再エネ)資源を有効に活用すべく、それぞれ独自の政策を打ち出し、導入を推進していることが分かりました。またバイオ燃料に関してはエネルギー自給率の向上、石油購入のための外貨節減、新産業振興の三つの戦略で普及が目指されています。ここから食料安全保障に抵触しかねないことが予測でき、食料と競合しない非可食フィードストック(原材料)の開発が急務であることが明らかになりました。
さらに昨今の地政学的な不確実性の高まりにより、輸入化石燃料に依存する国は、その低減こそが安全保障上の優先事項となり、日本企業にとって市場参入の機会が拡大することが分かりました。
NEDOは今後も、これらの地域に注目して、各国のエネルギーおよびカーボンニュートラル政策、技術動向を調査し発信していきます。
1.概要
世界の地球温暖化対策・カーボンニュートラルに逆行する動きが出ています。その要因として、アメリカのパリ協定からの離脱宣言、新興国中心に化石燃料依存からの脱却が進まないこと、AI技術の進展やデータセンター増設に伴うエネルギー需要増などが挙げられます。温室効果ガス(GHG)の最大の排出国である中国は2030年頃にピークアウトする見通しです。一方でASEANとインドでは製造拠点の多角化の受け皿として産業移転が進み経済が急速に成長しています。そのためエネルギー使用量と二酸化炭素(CO2)排出量は大幅に増加しており、今後もこの傾向は続くと予測されます。
ASEANとインドは、化石燃料の依存度が高いものの、増大するエネルギー需要への対応と温暖化対策を両立させるため、ネットゼロの目標を掲げています。また国ごとに特徴ある再エネ資源を有効活用するため、個々の政策を打ち出して導入を推進しています。地球温暖化対策が軽視されがちな傾向にある昨今ですが、経済成長が著しく、再エネの導入に積極的なASEANやインドにこそ、日本企業が進出すべきチャンスがある、と私たちは考え、TSC Foresight短信レポート「ASEANとインドのカーボンニュートラルへの動き―電力・燃料部門における日本企業の市場機会を考える―」を公表しました。
本レポートは、ASEAN主要国とインドの電力部門における再エネの種類別の政策と動向を、同地域で特徴的な運輸部門におけるバイオマス燃料を含め調査してまとめたものです。
TSC Foresight短信レポート 「ASEANとインドのカーボンニュートラルへの動き―電力・燃料部
門における日本企業の市場機会を考える―」
https://www.nedo.go.jp/library/ZZNA_100122.html
2.世界の食卓からパーム油が消える?
(レポートからの一部抜粋「6-3-1.バイオディーゼル(インドネシア)」より)
パーム油は主に食用油として利用されている。世界のパーム油生産量の約6割を占めるインドネシアはエネルギー自給率の向上と石油購入による外貨流出削減のため、軽油へのパーム油原料のバイオディーゼルの混合率アップとその普及を推進している。現在はB40(軽油にバイオディーゼルを40%混合した燃料)が普及し始めたが、政府は2026年にB50、将来的にはB100の導入も視野に入れている。他方、新たなパーム農園の開墾は内外からの環境保護、森林伐採防止、労働環境問題などの観点で規制が厳しくなり、パーム油の生産量は頭打ちとなっている。政府は国内需要とバイオディーゼルの混合率アップを優先するため、パーム油の輸出量を年々減らしつつある。人口増加と経済成長が著しいインドネシアがこのままバイオディーゼル混合率アップを続けるとパーム油の輸出量はどうなるのか。NEDOで試算を行った結果、2040年の輸出量は現在の4割程度まで落ち込むことが予測された。このことは、最大の輸出先である中国とインド、そして現在も栄養不良に直面し人口増加が予想されるアフリカにおける食の問題に大きな影響を及ぼすことを意味する。
2050年には世界人口は90億人(2010年の1.3倍)近くまで増えると予測され、様々な可食資源作物の燃料用途への転換が進むとパーム油の同様の問題が拡大する可能性がある。燃料用途には食料と競合せず、農地開拓を必要としない非可食バイオマスなどの利用が求められ、その開発ニーズは世界的にも高まるものと考えられる。

試算の前提
・ 生産量は2023年レベルの55百万トンで頭打ちとした。
・ 食用消費量は人口増と比例。国家開発計画庁によれば2020年から2050年の平均人口増加率は0.67%。
・ 油脂化学品用はGDP成長と比例。世界銀行の予測ではインドネシアのGDPは2026年までは5%の成長を維持。それ以降
の記載はなく、3%成長とした。
・ バイオディ-ゼル燃料消費量はGDP成長率と政府の混合率目標を適用。政府発表に基づき2025年にB40、2026年にB50
導入とした。
図 インドネシアのパーム油の生産量と使用用途(GAPKI公表データを基にNEDO イノベーション
戦略センター(TSC)にて作成)
3.今後の予定
NEDOは、こうした国際的な動向も考慮に入れつつ、引き続き地球温暖化問題の解決の観点から、関連事業者や研究機関と共同で、各種プロジェクトの組成および実施に取り組んでいきます。
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