野生動物の”ペット化”の見直しを訴えるキャンペーン、新たに「フクロウ」を追加 愛鳥週間を前に
~「飼育員さんだけが知ってる あのペットのウラのカオ」クイズ形式のショート動画を新たに公開~
この度、対策が必要な6種類の動物(※3)に「フクロウ」を新たに加え、5月10日から始まる愛鳥週間を前に、フクロウの生態やそれに合わせた飼育の難しさ、飼育に伴うリスクに関するウェブページを公開しました。また、より多くの人にコンテンツを届けたいとの想いから、フクロウの生態や特性をクイズ形式でまとめたショート動画も新たに制作しました。
フクロウ ウェブページURL:https://www.wwf.or.jp/campaign/uranokao/index.html?animal=7
フクロウ ショート動画URL:https://www.youtube.com/shorts/KtSyipno20g
フクロウの取引の現状と課題
日本は世界有数の野生動物ペット市場を保有しています。野生動物のペット飼育は生物多様性に悪影響を及ぼしていると指摘され(※4)、絶滅や違法取引といったリスクが伴う動物種もいます。
フクロウはペットやアニマルカフェでも人気が高く、アニマルカフェで展示されていた419種3,793個体の40%がフクロウだったことが明らかとなっています(※5)。また、2013年~2022年に日本で55羽のフクロウの密輸事件が発覚しています(※6)。
国立科学博物館 動物研究部 非常勤研究員 樋口亜紀氏コメント
フクロウ類は夜行性の猛禽類として進化したことから、多くのすぐれた能力を持ち、そのユニークな容姿からも大変人気があります。自然界では生態系の上位捕食者として孤高に生活し、警戒心の強い繊細な生き物です。近年フクロウのペットブームや「フクロウカフェ」の急増は我が国特有の現象で、フクロウが商業目的に利用され、動物福祉の観点において問題となる場合も多く、また、衛生面への注意も必要です。フクロウ類の中には絶滅危惧種もおり、現地での乱獲にも懸念があります。フクロウへの真の理解を深め、適正に見守っていく必要があります。
「飼育員さんだけが知ってる フクロウのウラのカオ」ウェブページ概要
フクロウの生態や飼いにくさの情報を切り口に、ペット飼育の難しさを伝えています。
「飼育員さんだけが知ってる フクロウのウラのカオ」クイズ形式 ショート動画概要
動物園で飼育されている実際のフクロウの映像とともに、クイズ形式でフクロウの”ウラのカオ”を伝え、フクロウのペット利用を見直してもらう動画です(60秒)。動画ではフクロウ飼育に関して2問が出題され、フクロウ飼育の難しさに焦点を当てて紹介しています。
ウラのカオ①:「排泄」に関するクイズ
フクロウは1日10回ほどフンをするほか、フンもしくは尿にはきついアンモニア臭があります。すぐに掃除をしないと固まってしまい、専用の洗剤でこすり落とさないと取れません。
ウラのカオ②「食べもの」に関するクイズ
スーパーで売られている鶏肉では栄養が不十分なため、ネズミを与える必要があります。ネズミを引き裂いて食べる個体もおり、食べ残しをすぐに片づけないと虫がわくことがあります。
なお、人気があるコツメカワウソ、ショウガラゴ、スナネコもこの度新たにクイズ形式のショート動画を制作し、YouTubeで公開します。
★クイズ形式 ショート動画
・フクロウ : https://www.youtube.com/shorts/KtSyipno20g
・コツメカワウソ: https://www.youtube.com/shorts/qgxr9QF4xHs
・ショウガラゴ : https://www.youtube.com/shorts/Iz4c9UaGgf0
・スナネコ : https://www.youtube.com/shorts/zvwfRGpennk
「飼育員さんだけが知ってる あのペットのウラのカオ」キャンペーンについて
2022年8月より、動物園の協力のもと、野生動物の”ペット化”の見直しを訴えるキャンペーン「飼育員さんだけが知ってる あのペットのウラのカオ」を展開し、特設ウェブサイトのほか、動画を制作し公開しています。ウェブサイトおよび動画ではフクロウを加えた7種類の動物(コツメカワウソ、スローロリス、ショウガラゴ、フェネック、コモンマーモセット、スナネコ、フクロウ)を紹介しています。
注釈一覧:
(※1) 協力動物園:井の頭自然文化園、上野動物園、京都市動物園、那須どうぶつ王国(五十音順)。フクロウは多摩動物公園の協力のもと、動画を制作しています。
(※2)野生動物のペット飼育に伴う5つのリスク
1. 絶滅のリスク:IUCN のレッドリスト掲載動物の20%(約19,000種)が絶滅危機種であり、そのうち11%でペット・展示利用が脅威となっています(※6)。コツメカワウソは、過去30年間で、個体数は30%以上も減少。現在『IUCNのレッドリスト』で絶滅危機種に指定されています。
2. 密猟・密輸のリスク:2007 ~2018 年に合計78 件、1,161 匹の動物が、日本向けの密輸として税関で発見されました。2018年~2022年にショウガラゴ、スローロリスを含む23頭のサルが差止めされています。
3. 感染症のリスク:野生動物は、様々な「動物由来感染症(人獣共通感染症)」の病原体を保有している可能性があります。
4. 動物福祉のリスク:動物福祉の指標である、飢えと渇き、不快、痛み・傷害・病気、恐怖や抑圧、正常な行動を表現の「5つ自由」(※7)を実現するのは極めて困難です。
5. 外来生物のリスク:アライグマやグリーンアノールなど、ペット目的で動物が野外に遺棄され、在来種やその土地固有の生態系に悪影響を与える事例が多発しています。
(※3)コツメカワウソ、スローロリス、ショウガラゴ、フェネック、コモンマーモセット、スナネコ
(※4)Lockwood et al. When pets become pests: the role of the exotic pet trade in producing invasive vertebrate animals. FRONTIERS IN ECOLOGY and the ENVIRONMENT. 2019, Volume 7, Issue 6, 323-330.
(※5) Sigaud et al. Exotic animal cafés in Japan: A new fashion with potential implications for biodiversity, global health, and animal welfare. Conservation Science and Practice. 2023, Volume5, Issue2.
(※6) 税関 ワシントン条約該当物品輸入差止等実績をもとに、WWFジャパンが算出 https://www.customs.go.jp/mizugiwa/washington/washington.htm
(※7) IUCNレッドリスト(2023.1)をもとにWWFジャパン算出 https://www.iucnredlist.org/
(※8)公益社団法人 日本動物福祉協会(2017)「動物福祉について」 https://www.jaws.or.jp/welfare01/
WWFについて
WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年にスイスで設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、サステナブルな社会の実現を推し進めています。特に、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現に向けた活動を行なっています。
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