絶滅危惧鳥種「ヤンバルクイナ」の消化管内に認められた微小黒色片の発生源と暴露経路がわかりました。

国立大学法人熊本大学

1.発表のポイント

  •  沖縄島の絶滅危惧鳥種「ヤンバルクイナ」消化菅(砂のう)内に、長径1 mm以下の微小黒色片と透明球体が複数確認されました。

  • 材質分析の結果、微小黒色片は車のタイヤゴム、透明球体は路面標示塗料中のガラス製反射材であることがわかりました。

  • 路面または路面標示塗料とタイヤの摩擦で生じた黒色片と透明球体は、道路塵埃⇒側溝堆積物⇒ヤンバルクイナ餌生物(ミミズ等)⇒ヤンバルクイナの順に移行・残留することがわかりました。

  • 今後、ヤンバルクイナへのタイヤ摩耗片の蓄積とそれから溶出する有害化学物質の暴露リスクを調べる必要性が高まりました。

2. 概要説明

ヤンバルクイナ (Hypotaenidia okinawae; 右写真)は、 沖縄島北部のやんばる地域に生息する固有種で、環境省レッドリスト2020において絶滅危惧ⅠA類に分類されています。このたび、熊本大学大学院先端科学研究部の中田晴彦准教授、山原慎之助大学院生、琉球大学理学部の小林峻助教、環境省沖縄奄美自然事務所やんばる自然保護官事務所の椎野風香自然保護官および沖縄県立衛生環境研究所の宮城俊彦元所長らの研究グループは、沖縄島で交通事故死した絶滅危惧鳥種のヤンバルクイナ砂のう内に含まれる人工物の調査を行いました。その結果、分析した42検体のヤンバルクイナのうち24検体から黒色片が検出されました (中央値:18個/個体)。また、全体の2割の検体から直径1 mm以下の透明球体も認められました。これらをフーリエ変換赤外分光光度計 (FT-IR)*で分析した結果、黒色片と透明球体の発生源はそれぞれ車のタイヤと路面標示塗料の摩耗物であることがわかりました。

この種の人工物によるヤンバルクイナの暴露レベルは、国内外の陸棲鳥種を対象に行われた既往研究の結果と比較して高く、消化管内から複数のタイヤ摩耗片が検出されたことは世界的にも極めて稀有な事例といえます。さらに、道路塵埃や側溝堆積物に加えヤンバルクイナ餌生物のカタツムリやミミズを分析したところ、その大部分から黒色片とガラス製透明球体が検出されました。そこで、各種試料中のタイヤ摩耗片とガラス製透明球体の濃度間の相関を調べたところ、ヤンバルクイナとミミズおよび側溝堆積物において同じ傾きの有意な相関が得られました(右図)。このことは、車の走行により路面または路面標示塗料とタイヤの摩擦で生じた黒色片と透明球体が雨水等で側溝堆積物に移行しミミズがそれらを誤食し、さらにヤンバルクイナが捕食するという暴露経路の存在を示しています。

タイヤには機能性の向上を目的に様々な化学物質が添加されています。ヤンバルクイナ砂のう内でタイヤ摩耗片からこれらが溶出・蓄積し、影響を与える可能性があります。今後、ヤンバルクイナを含む野生生物へのタイヤ片の暴露リスクに関する調査研究を行う必要があると思われます。

(論文情報)

掲載誌:Environmental Science and Technology

論文タイトル:Tire-Road-Wear Particles and Glass Beads in the Gizzard of the Endangered Terrestrial Bird, Okinawa Rail (Hypotaenidia okinawae)

著者: Shinnosuke Yamahara, Shun Kobayashi, Fuka Shiino, Ichiko Ishikawa, Toshihiko Miyagi, Haruhiko Nakata*

DOI:10.1021/acs.est.4c11843

URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.4c11843

▼詳細

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未上場
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設立
1949年05月