全国の書店員さんから絶賛の声、続々!激動の香港を描く、迫真の青春巨編、岩井圭也『水よ踊れ』本日発売!
中国返還に揺れる激動の90年代~国家安全法が施行された現在まで闘い続ける香港の街。彼らはなぜ抗い、何を目指すのか。いま日本の読者に小説で届けたい、覚悟と信念とは…
2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー、20年に『文身』(祥伝社)が「本の雑誌」2020年上半期エンターテインメントベスト10の第8位に選ばれるなど、業界最注目作家の岩井圭也さん。迫真の青春巨編『水よ踊れ』を本日6月17日、新潮社より刊行いたします。
デビュー前の「投稿時代」から長年構想を練り続けたという今作は、中国返還に揺れる90年代後半の香港を舞台に、主人公が謎の死を遂げた恋人と事件の真相を探る青春小説です。
骨太なストーリーとともに熱量たっぷりに描かれるのは、混沌とした社会情勢、それぞれの信念を貫こうとする香港市民のすがた……。そして終盤、物語は〈香港国家安全維持法〉が制定された現代へと繋がります。
作家・冲方丁さんと文芸評論家・北上次郎さんの推薦の言葉、そして、刊行前に読んでくださった書店員さんの熱い感想の一部をご紹介します。
■推薦の言葉
寄る辺なく脆弱そのものといった若者が、やがて途方もなく力強いメッセージを放つに至るさまは、読んでいて鳥肌ものだ。私は本書を読んで、日本人であるとはどういうことかを語ることに無為を抱かせられた世代の一人として衝撃を受けた。主人公の決断に、いよいよ日本人を覆うガラパゴスの膜が破れるときが来たと快哉を叫びたくなる。まさに現代の物語であった。
作中で採用された、ある闘争のためのフレーズは、まさに今後我々が古い世代の因習から解放され、新たな世界と対峙する上で不可欠な、痛快きわまりないメッセージだ。これからしばらく、私は折にふれて本書を読み返すだろう。そして歴史の推進力が我々をどこに運ぼうとも、抱くべき志(ウィル)をおのれのうちで確かめ続けることになるに違いない。――冲方丁さん(作家)
未来に向けて歩きだす強い意思が、ここにある。――北上次郎さん(文芸評論家)(「波」七月号より)
心を震わすアイデンティティの物語であり、込められたメッセージは社会に向けた拳でもある。今年のというより、この時代に刻まれるべき一冊だ!――内田剛さん(ブックジャーナリスト)
■全国の書店員さんから寄せられた絶賛の声
●濁流のようなうねりが、自由を求める叫びと共に胸に迫ってくる。間違いなく現在につながっている物語であると心が震えた。最近読ませていただいたなかでダントツです。書店員として、本当に読んでもらいたい作品だと思いました。(ジュンク堂書店 旭川店 松村智子さん)
●都市にあるべき理想とは、自由とは。未来を見つめるそれぞれの強い心に、胸が熱くなりました。圧倒的な読み応えですばらしい本でした!(紀伊國屋書店 京橋店 坂上麻季さん)
●混沌とする香港から、この物語から抜け出せなくなった。ありとあらゆる衝撃が、のほほんと生きてきた主人公を通して私の脇腹にもパンチを食わす。圧倒的な筆力。私の胸を熱くさせた!!(未来屋書店大日店 石坂華月さん)
●香港のその景色、匂いが苦しみ、輝きをかかえ、社会の重み、あきらめ、抵抗、その葛藤を色濃く映し、目と身体に染みついてきた。著者の切なる思いがあふれ迫ってくる、ものすごい気迫の圧倒的傑作。(ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理さん)
●ほどかれていく真実に息ができなくなる。日本に生まれ日本に育ち日本の歴史さえ正しく知ろうとせずにいる自分の愚かな頬を思いきり殴られた気がする。ページをめくる指先から感じた熱が消えないうちに、誰かに手渡さなければ。(精文館書店中島新町店 久田かおりさん)
●ページを追いながら、本の中に熱く世界が動く。タイトルの意味が生き生きと躍動感で胸に流れ込んでくる。小説で光をあてた香港への想いは、限りなく自由が尊い。とんでもなく凄かった!!(うさぎや矢板店 山田恵理子さん)
●すごいものを読んだ。そして、わたしが何も知らないことをとても恥ずかしく思った。衣食住に困らないこと、人間として生きられることがどれだけ幸せなのか。この本は他の人に伝えたい。今読むべき本です。(水嶋書房くずは駅店 枡田愛さん)
●ずっと激しい流れに身を任せ行き着いた先は、熱くむせかえる混沌とした人間の真摯な想いだった。文字通り著者の身を削るようなこの物語、多くの方の手に取って欲しい。(大盛堂書店 山本亮さん)
●香港という土地と、時代と、人々から放たれるむせかえるほどのエネルギーが圧倒的。大きなうねりの中で、迷いながらも前に進もうとする彼らの熱い想いが胸に迫り、自分自身までからめ取られてしまいそうな錯覚に陥りました。(鹿島ブックセンター 八巻明日香さん)
●この世界で生きるすべての人への永遠の課題がこの作品には詰まっている。(岩瀬書店富久山店 吉田彩乃さん)
●読後の余韻が身体を包み、体温が上昇したのは私だけではないでしょう。おそらく「アイデンティティ」とは何か、という鋭い刃を向けてきているからです。今後10年、いや20年と読み継がれる物語がここに誕生しました。(さわや書店本店 栗澤順一さん)
■いま小説で、香港を書かずにはいられなかった理由
幼少期から香港に関心を抱き、動向に注目してきた岩井さんは、本書へ挑戦した理由をこう語ります。
「まさにいま抗っている香港市民の「何かを変えようとする力」を描くことで、少しでも「日本人」の読者の意識を変える小説を書きたいと思いました。日本では、政治的に話題に対してどこか冷笑的な視点でみてしまう節があると思います。見てみぬふりとも言えるし、政治というものに対する諦念も抱いている。「どうせ何をしても変わらないのだ」と。確かにそうかもしれません。
ただ何も声を上げなければ、悪い方向に変わってしまうこと、変わらないと思っていたものが変わってしまう恐怖があること、香港の状況を見ているとその危機感を抱かざるをえません。香港を描いた今作が、日本の政治を自分ごととして捉えるきっかけとなってほしいと考えています。」
■フィクションだから提示できる可能性、フィクションにできること
物語の終盤、中国が香港の統制を強めた現代で、主人公は未来を切り開くための行動をとります。
「小説の最後には、現実的に中共の支配が着実に進んでいく香港で、対抗する手段を私なりの答えとして書きました。自分の行動次第で困難な状況も打破できる可能性がある。それはフィクションでしか提示できないものですし、いまだからこそ描ける希望だと考えています。」
■『水よ踊れ』あらすじ
七百万人都市、香港。一人の少女が、スラムの闇に飲み込まれた。
「ぼくは、彼女の人生を、まだ見届けていない」
日本の大学に通う瀬戸和志は、亡き恋人の幻影に導かれ、建築学院の交換留学生として、再び香港の地を踏む。
幽霊屋敷に間借りする活動家、ビルの屋上で暮らすボートピープル、黒社会の住人、〈共産党員〉と噂される大物建築家。さまざまな出会いを通じて、次第に浮かび上がる都市の実相。そして、彼女がひた隠しにしていた過去。
「誰も、この街の引力には勝てない」〈回帰〉の時が刻一刻と近づくなか、いくつもの謎と、矛盾と、混沌をはらみながら、和志は、民主化運動の狂騒へ引きずり込まれてゆく。若者たちの抵抗と魂の煌めきを描く、革命的青春巨編。
■著者紹介:岩井 圭也(イワイ ケイヤ)
1987年生まれ。大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。19年『夏の陰』(KADOKAWA)を刊行、20年に『プリズンドクター』(幻冬舎文庫)、そして同年『文身』(祥伝社)は「本の雑誌」2020年上半期エンターテインメントベスト10の第8位に選ばれるなど、若手最注目作家のひとりに挙げられる。
【タイトル】『水よ踊れ』
【発売日】2021年6月17日
【造本】四六判(400ページ)
【本体定価】2,420円(税込み)
【ISBN】978-410-354131-8
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