漏水調査や管路更新などの計画策定をより迅速に。宇宙水道局に新たに「管路絞込み」機能を実装

JAXA認定の宇宙ベンチャー 株式会社天地人(東京都中央区 代表取締役 櫻庭康人)は、衛星データを活用し持続可能な水道事業の実現を支援する水道DXソリューション「宇宙水道局」において、漏水リスク診断結果と水道管属性を組み合わせ、漏水調査や管路更新の対象をより迅速かつ的確に選定できるよう支援する「管路絞込み」機能をリリースしたことをお知らせします。
背景となる課題
これまで、水道管の現状把握や調査、管路更新などの計画の策定の際には以下のような課題がありました。
-
どのような属性(用途、材質、布設年度、口径)を持つ水道管でリスクが高いのか、把握がしづらい
-
漏水リスクの診断結果と水道管の属性(用途、材質、布設年度、口径)を組み合わせた延長算出に手間がかかる
そのため、正確な現状把握が難しかったり、調査や管路更新などの計画に時間がかかっていました。
今回新たに追加した「管路絞込み機能」により、漏水調査や管路更新の対象選定がスピードアップし、効率的な検討と迅速な意思決定の実現をサポートします。限られた予算をより効果的に活用するための優先度判断に、ぜひご活用ください。

絞り込みができる項目と選択肢
今回新たに絞り込みができるようになった条件は下記の5つです。
① 漏水リスク診断結果(メッシュ)
宇宙水道局の「漏水リスク診断」の結果に基づき、メッシュ単位でリスクA〜Eの値ごとに絞り込めます。
② 用途
導水管や送水管、配水管、給水管など、10種の用途+その他という選択肢から絞り込めます。
③ 管材質
DCIP(ダクタイル鋳鉄管)、VP(硬化ポリ塩化ビニル管)、PP(ポリエチレン管)など10種の材質+その他・不明から絞り込めます。
④ 口径
mm単位での口径を指定して絞り込めます。
⑤ 布設年度
1950年から現在までの布設年度を条件に絞り込めます。
なお、今後も機能の拡充を予定しており、「管路単位の漏水リスク診断結果」や「管材質(継手)」での絞り込みや、「メーター数の算出結果の表示」など、順次実装してまいります。
■ 私たちは「水道管データの標準化」を目指しています
本機能の実装を支えたのは、天地人が取り組んできた「水道管データの標準化」です。
ひとつの水道事業体の中でも、同じ管を指す名称や記載方法が複数存在することは珍しくありません。というのも、台帳に記載されている水道管データは昭和から令和の今に至るまで数十年かけて蓄えられてきたため、当時の時代背景を鑑みれば、多数の表記揺れが存在してしまうのはむしろ当然のことです。
そのため、特定の材質だけを算出・除外しようとしても、台帳やGISシステムに登録されているすべての名称パターンを理解し、正確に指定しなければなりません。これはDXを推進するうえで大きな課題となってしまいます。
そこで私たちは、宇宙水道局における「データの標準化」に挑みました。この仕組みにより、同一材質のグルーピングや表記ゆれを自動的に名寄せでき、選択肢に迷うことなく正確な延長算出が可能になりました。
この標準化は、日本水道協会(JWWA)や日本産業規格(JIS)などで定められている公的・業界標準の分類体系を参照し、現場の実データに合わせて拡張・整理したものです(※現時点で JIS への完全準拠を主張するものではありません)。将来的な外部システム連携や他事業体との比較を見据えた設計になっています。
プロダクト開発メンバーのコメント
今回は水道管のさまざまな条件で絞り込める機能を追加しました。調査計画では細かな情報の精査が求められますが、それを補うことで漏水調査の促進を狙っています。従来は漏水リスク診断結果のレイヤーと管路情報レイヤーをそれぞれ表示していましたが、自ら条件を選択することで「この管路を調査したらどれくらいの長さか」など、シナリオ設計のきっかけを得ることができます。今後の現場のアクションにつながる橋渡しになればと思います。
「天地人コンパス 宇宙水道局」について

「天地人コンパス 宇宙水道局」は、衛星データを活用し持続可能な水道事業の実現を支援する水道DXソリューションです。
1. 漏水リスク診断に基づく音聴調査支援
衛星データを活用した数メートル単位での管路のリスク診断により、高い解像度で現在・近未来の漏水のリスクの把握が可能です。また用途に応じて、メッシュ単位での漏水リスク診断にも対応します。漏水する可能性が高いエリアを絞り込むことで、優先的に調査すべき場所を簡単に見つけられ、効率的な維持管理を実現します。
2. 地域特性に応じた水道管の管路の更新計画策定支援
管路診断結果に基づく「健全度」(漏水リスク診断結果)と、一般住宅から重要給水施設(病院、学校、避難所など)まで、あらゆる施設や暮らしへの影響を包括的に考慮した「重要度」を組み合わせて評価することで複数の「更新優先シナリオ」を作成します。平時の漏水リスクを重視するシナリオや、災害時の社会的影響を重視するシナリオなど、地域課題や目的に応じた柔軟な設定が可能です。環境の変動を考慮したシナリオを通じて、各管路の更新優先順位を合理的かつ透明性をもって決定することで、有用性の高い計画策定を支援します。
「宇宙水道局」の本質的な価値は、長年蓄積されてきた自治体のデータと最新の衛星技術を融合させることにあります。この融合から生まれる「漏水リスクの情報」という新たな視点により、従来の音聴調査や更新計画といったアプローチが進化すると考えています。
過去の英知と未来の技術をつなぐこの取り組みが、限られた資源でより大きな効果を生み出す新しい水道事業の実現となるべく今後も貢献してまいります。
会社概要
会社名:株式会社 天地人
所在地:東京都中央区日本橋1丁目4−1日本橋一丁目三井ビルディング5階
代表者:代表取締役 櫻庭 康人
事業内容:衛星データを使った土地評価コンサル
公式サイト:https://tenchijin.co.jp/
「宇宙水道局」特設サイト:https://suido.tenchijin.co.jp/
<本件に関するお問い合わせ先>
漏水事業担当:白坂、上村(うえむら)、伊藤、河瀬
お問合せ窓口:info-compass@tenchijin.co.jp
すべての画像
