【慶應義塾】新生児の素早い文法学習能力と生後半年の学習脳機能発達を実証
-言語野ネットワーク発達の解明へ寄与-
慶應義塾大学文学部心理学研究室、KGRI未来共生デザインセンター、ヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター(WPI-Bio2Q)の皆川泰代教授、同大学大学院理工学研究科大学院生(研究当時)の蔡林、同大学医学部小児科学教室の有光威志専任講師、篠原尚美兼担助教、高橋孝雄教授(研究当時)は、ウィーン大学(J. Mueller教授)やチューリッヒ大学(S. Townsend教授, S. Watson研究員)との国際共同研究により、行動的に1歳前後でないと不可能と言われていたある種の文法規則学習(以下文法学習)が新生児でも可能であることを、音の人工文法を用いた脳機能研究により明らかにしました。
新生児と6,7ヶ月児では学習した文法の正誤判断に関わる脳活動部位が異なり、新生児は左前頭前野であるのに対して、6,7ヶ月児では既に成人機能と相応する左半球の前方言語野(下前頭回)と後方言語野(縁上回、上側頭回)の関与を見出しました。さらに、新生児の文法学習に関わる脳機能回路を解析すると左前頭前野から6,7ヶ月児のみで反応が見られた後方言語野(縁上回、上側頭回)への脳機能結合が多くみられ、学習に関与する新たな神経回路が活性化していました。ヒト乳児はこのような学習の繰返しにより生後半年で言語野ネットワークが構築されることを示唆します。これらの学習による個人差の知見も得られ、新生児において安静時における後方言語野を含む左右の側頭部から左前頭前野の長い脳機能結合が元から強い乳児ほど文法学習が効率的に進む傾向が示されました。これにより、新生児の文法学習能力の個人差は自身に備わる脳機能結合が関与することが分かりました。
これらの研究成果は、文法規則を抽出し学習するヒト脳機能の生得性を示すのみでなく、生後急速に進む乳児の言語獲得を支える、言語野の神経回路の発達過程のメカニズムを一部解明したといえます。さらに新生児の文法学習の脳機能の個人差とその要因も明らかにした本研究は今後、言語発達遅滞の脳内機構の解明や効果的な言語学習の手法開発への応用が期待されます。本研究成果は2024年10月22日(米国東部時間14時00分)に「PLOS Biology」に掲載されました。
▼全文は本学のプレスリリースをご参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2024/10/23/241023-1.pdf
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