天才少年から肉体右翼へ。その裏にある一貫したストーリーを実力者が精確に描き出す! 『シリーズ・戦後思想のエッセンス 三島由紀夫 なぜ、死んでみせねばならなかったのか』が発売。
自伝『太陽と鉄』から“謎”を一挙に解明する
ノーベル賞候補にもなっていた日本社会のスーパースター・三島由紀夫はちょうど50年前、自衛隊に乗り込んで派手な自決を遂げた。三島はなぜこんなことをしたのか? この事件にはどんな意味があったのか?
従来、作品に三島の天才を認め心酔する読者も、1960年代からの彼が見せていた右翼的行動とその劇的な自決に対しては評価を保留する傾向――いわば作品と作家(思想)を分離する傾向――があった。しかしこの分離は正当だったのか? 彼の「言葉」と「行動」は断絶していたのか? そうではない、というのが本書の基本的立場だ。
一方、これまで数多ある三島論は、事実の発掘、エピソードの羅列、詳細な作品分析、印象批評、同時代者としての回想などが入り交じり、三島に馴染みのない人を「三島由紀夫の問題圏」に引き込んでいく力に乏しかったとは言えまいか。これでは三島はただの「過去の人」となってしまう――好悪は別として、三島の“自己否定”は本当に無意味だったのか? ニヒリズム(冷笑趣味)が蔓延する現代に示唆するところはないのか? 三島の没後に生まれた著者・浜崎洋介の視点はここにある。
実は、三島の“謎”を解く鍵の存在は三島自身によって明言されていた。作家自身が「これが分かれば、僕のやっていること全部がわかる」と評した『太陽と鉄』である。この自伝的作品に基づいて著者は、作家履歴の三期を「椿事」「忍苦・諦念」「われら」の三語で特徴づけ、その作品世界と「死」への道行きを、「言葉」と「現実」の関係の必然的展開のプロセスとして描き出す。あくまで作家自身の論理に内在して分析することで、「謎」を一挙に解明し、作家の「思想」の構造を精確に提示して見せるのだ。衝撃の「三島事件」から半世紀後にようやく登場した、気鋭の批評家による簡明かつ本格的な三島由紀夫論。これからの作家論がスルーできない記念碑的著作となるに違いない。
【著者】
浜崎洋介(はまさき・ようすけ)
1978年生まれ。文芸批評家。雑誌『表現者クライテリオン』編集委員、すばるクリティーク賞選考委員、日本大学非常勤講師。日本大学芸術学部卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻博士課程修了、博士(学術)。著書に『福田恆存 思想の〈かたち〉――イロニー・演戯・言葉』(新曜社2011)、『反戦後論』(文藝春秋2017)。共著に『アフター・モダニティ』(北樹出版2014)、『日本人とは、そも何ものぞ』(飛鳥新社2018)など。また、編著に福田恆存アンソロジー三部作『保守とは何か』『国家とは何か』『人間とは何か』(文春学藝ライブラリー2013―16)など。
【商品情報】
出版社:NHK出版
発売日:2020年10月24日
定価:本体1000円+税
判型:四六判
ページ数:144ページ
ISBN:978-4-14-081832-9
URL: https://honto.jp/netstore/pd-book_30534086.html
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