エボラ出血熱:未承認薬の臨床試験が中止にーリベリア
リベリアで行われていた、エボラ出血熱の実験的治療薬「ブリンシドフォビル」の臨床試験が中止された。同試験は、英オックスフォード大学主導のもと、国境なき医師団(MSF)がリベリアで運営するエボラ治療センターで今年1月上旬に開始されたが、製薬企業が試験から離脱すると発表したことに加え、エボラの新規症例が大幅に減少したため中止が決定された。他の未承認薬の臨床試験およびエボラ対策の活動は引き続き行われる。
シエラレオネへの編入計画も中止
科学的に確かな結果を得るためには、被験者として多数の患者が必要となる。しかし直近の数週間、リベリアの首都モンロビアのMSFエボラ治療センターでは患者数が減少傾向にあったため、オックスフォード大とMSFは隣国シエラレオネの治療センターに試験編入する検討を行っていた。ところが、ブリンシドフォビルの製造企業Chimerix社は1月30日、モンロビアに限らず今後一切の臨床試験に参加しないと発表、編入計画はなくなった。
リベリアの科学者、オックスフォード大、MSFで構成される臨床試験運営委員会はこうした展開を受けて、2月3日、臨床試験の即時中止を決定した。臨床試験を監督してきたMSF医療ディレクターのベルトラン・ドラゲ医師は「リベリアでエボラウイルスに感染する人が減少し、安堵しています。臨床試験の確かな結果が得られず、効果的なエボラ治療薬が特定できないことは残念ですが、長期にわたり苦しんできたリベリアの人びとにとって、患者数減少は朗報でしょう」と話す。
残りの臨床試験と現地での活動は続行
患者数の減少は、西アフリカでMSFが関わるその他の臨床試験にも影響を与えつつある。しかし、MSFは今回の試験から有益な結果が導き出されるよう最善を尽くしたいと考え、ギニアでは抗ウイルス薬ファビピラビル(商品名アビガン)の臨床試験に継続して協力。2月第2週にはエボラ回復者の血漿を用いる試験も開始する予定。
今回のリベリアにおける臨床試験中止は、エボラ被害の特に深刻な国々を対象としたMSFの活動終了を意味するものではない。ドラゲ医師は「患者数は減っているかもしれませんが、流行が終息したわけではありません。現在は、疫学的監視や感染者と接触した人の追跡調査に重点を移すなど、状況に合わせた対応を行っています。それと並行し、今回の流行や今後の流行でこれ以上尊い人命が失われることのないよう、有望な治療薬、ワクチン、診断方法の追求に注力していきます」と述べている。
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