圧力容器の設計技術者必携!JIS B 8265改正 ~水素社会の到来を見据えて~
JIS B 8265:2024「圧力容器の構造-一般事項」
石油・化学工業、電気・ガス事業等の設備に広く使用されている圧力容器は、LNGや水素等の保管、移送のためにも使われており、日本の産業界において極めて重要なプラットフォームの一つです。そのため、製造事業に従事する者の安全性を確保するため、また、一般家庭等へのエネルギーの安定供給のためにも、常に規格・基準を整備していくことが求められています。JIS B 8265は、圧力容器に係る国の強制法規(高圧ガス保安法、電気事業法、ガス事業法及び労働安全衛生法の圧力容器関連4法)における技術基準の解釈例に共通する一般事項を規定することを目的に、ASME(The American Society of Mechanical Engineers)Boiler and Pressure Vessel Code Sec. VIII Div.1(以下,ASME Sec. VIII Div.1といいます。)の規定を参考にして2000年に初めて制定され、その後も、最新の技術動向を反映し、解釈例との整合を図るなど、数度の改正を経ています。
直近の改正から7年が経過し、このたび、水素社会の実現への技術的対応(最低使用温度の導入)とともに、代替規格であるJIS B 82671)との整合化、ASME Sec. VIII Div.1の改訂への対応などを含め、大きな改正を断行しました。
注1) 圧力容器の計算厚さの式に用いる安全係数がJIS B 8265とは異なる代替規格(JIS B 8265は4.0であり、JIS B 8267は3.5)です。
JIS B 8265:2024
圧力容器の構造-一般事項
Construction of pressure vessel -- General principles
税込価格:11,770円 A4判 376頁
この規格は、原則として設計圧力30 MPa未満の圧力容器(安全係数4.0)の構造について規定しており、圧力容器関連4法における技術基準の解釈例の一般事項を規定するとともに、解釈例に独立の規格として引用されることを意図しています。水素ステーションの場合には、設計圧力30 MPa超が適用できます。
★改正のポイント
・附属書Bに規定している材料に対して、衝撃試験の判定基準を満足する低温使用限界を“最低使用温度”として、許容引張応力表に新たに設定しました。特に、地球温暖化対策の切り札の一つとして多くの利用が見込まれる液体水素(-253℃)を初め、液体窒素(-196℃)、液体ヘリウム(-269℃)の温度が最低使用温度の目安として表示されており、材料は最低使用温度まで衝撃試験をせずに使用できることから、圧力容器の設計において高い利便性が得られます。
・技術の進展及び水素ステーション等の新規分野での要請によって、新規材料を追加しました。
・旧規格では、突合せ溶接継手の衝撃試験の試験方法及び判定基準を本文において直接規定していましたが、JIS B 8267:2022の附属書R(圧力容器の衝撃試験)をこの規格に取り込むことによって、本文からはこの試験方法及び判定基準の規定を削除し、附属書Rの規定を引用することとしました。これに伴い、鋼の衝撃試験の判定基準を、引張強さ区分から降伏点区分に変更しています。
・厚肉円筒胴及び厚肉球形胴に対する計算厚さの式を、これまでの厚肉弾性の式(Laméの式)から弾塑性の式に置き換えました。これは、今後の計算厚さの式の高度化の出発点になります。
※規格類は価格が変更される場合がございます。ご了承ください。
(担当部門:出版情報ユニット 出版情報サービスチーム MAIL csd@jsa.or.jp)
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