「100円ショップ」好調、2020年度の売上高は過去最高を更新へ コロナ禍の節約志向、雑貨の需要増が後押し
100均が好調の一方、300均「ミカヅキモモコ」が破綻などワンプライス業態でも競争は激化
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100円ショップの業界売上高(事業者売上高ベース)は、大手の業績好調を背景に2020年度は過去最高を更新することがほぼ確実となった。店舗数も過去10年で4割増えた最大手のダイソーをはじめ、大手5社の店舗数は8000店規模に迫る(写真=上:ダイソー 下:キャンドゥの各店舗)
- コロナ禍で「おうち時間」が増加するなか、キッチン用品からインテリア用品まで幅広く需要が伸長。セリアやキャンドゥなど、大手で増収増益となるケースが相次いだ
- 消費者の根強い節約志向も背景に、今後も100円ショップの好調は続く。ただ、20年度には店舗数が8000店を超える見込みのほか、300円ショップなど他のワンプライス業態も進出するなど飽和感もある。顧客獲得競争の激化も予想されるなか、各社とも価格にこだわらない消費者目線のアイテム供給で、100円ショップ業態としての成長を目指す
100円ショップ業界の売上は過去最高見込み、 店舗数も10年間で4割増えた(100円ショップ業界の推移)
100円ショップはこれまで、ファッション性や実用性に優れたアイテムをワンプライスで提供することで消費者の支持を集めることに成功し、規模を拡大してきた。ダイソーなど大手5社の店舗数は19年度期末時点で7600店を超えており、10年間で4割超増加。積極的な出店が続いたこともあり、2019年度の売上高は8722億円に到達した。2020年度は新型コロナの感染拡大による外出自粛や店舗休業などの影響を受けたものの、巣ごもりにともなう「おうち時間」の増加で生活雑貨を中心に幅広いアイテム需要が拡大。消費者の節約志向も相まって、生活雑貨からアイデア商品までが揃う100円ショップがコロナ禍で脚光を浴びた。今後も積極的な事業展開が各社で進む見通しで、100円ショップ各社の業績に追い風となりそうだ。
コロナ禍で増えた「おうち空間」の雑貨需要 各社とも増収、セリアは過去最高売り上げへ
家庭用の消耗品・雑貨を中心に需要が増加(生活雑貨類の支出状況)
雑貨類の中でも、巣ごもり下でおうち時間が増加したことで室内雑貨類などの需要が高まった。コロナ禍で外食が手控えられた一方、中食や自炊ニーズが高まったことで鍋などキッチン用品の需要が伸長。また、清掃商品や生活消耗品、手芸品、インテリア用品など「おうち空間」を飾る雑貨需要が増加したことも背景として挙げられる。
こうした環境も背景に、大手家具店やホームセンターなどと同様、生活雑貨からDIY用品まで幅広い品目が揃う100円ショップが台頭。特に、アイテム当たりの単価が低いため送料との釣り合いが難しく、同価格帯でネット通販との競合が少ないこと、コロナ禍での所得減などで高まった消費者の節約志向も追い風に、実用的で割安感がある100円ショップが存在感を増し、各社とも好調な売り上げが続く。
ファッション性の高い雑貨で女性顧客層に人気のセリアは、21年3月期の売上高を従来予想から積み増し、前年比1割の増収となる1987億円を予想、売上・利益ともに過去最高を更新する見通しとした。大手の一角を占めるキャンドゥも、20年11月期の売上高は連続増収を記録し、21年期も引き続き増収予想。各社とも、自宅で過ごす時間が増えたことで清掃道具など家庭用品全般の売れ行きが順調だった。
300円ショップのミカヅキモモコが経営破綻 出店続くワンプライス業態には飽和感も
300円均一ショップで全国的に有名だった「ミカヅキモモコ」の経営破綻は、多くの人に衝撃を与えた
こうしたなか、今年2月には全国的に知名度の高い300円ショップのミカヅキモモコ(大阪)が経営破綻した。同業他店との競争激化に加え、インバウンドの失速を中心にコロナ禍で店舗への来客数が落ち込んだことが要因で、価格帯や立地、顧客層によっても明暗が分かれる。出店競争が加速するなか、既に同業や自社ブランド間での顧客獲得競争は激化しており、店舗と来客数双方の増加を前提とする「薄利多売」の100円ショップにとっては影響が大きい。そのため、クオリティやデザインの見直し、最新のトレンドや細かな需要をつかむ新商品の投入など、価格面以外の訴求力で顧客獲得に繋げられるよう各社とも戦略を練る。
ダイソーの電子メモパッドはSNSを中心に話題となり、500円と高額ながらも品切れが相次いだ(写真=同社のメモパッド:筆者撮影)
ただ、価格にこだわらない消費者目線のアイテムを送り出すことで、魅力や訴求力を高める点は各社ともに共通している。こうした取り組みが、コロナ禍の新しい生活様式のなかでどのように消費者に受け止められるのかが注目される。
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