ノバルティス、オンコロジーのパイプラインを強化、MorphoSys社を1株当たり68ユーロ、合計 現金27億ユーロで買収することに合意
今回の買収には、開発後期段階の骨髄線維症(MF)に対するBET阻害薬pelabresib、開発初期段階の固形腫瘍またはリンパ腫に対するEZH2およびEZH1の二重阻害薬tulmimetostatが含まれる
pelabresibは、直近の第Ⅲ相MANIFEST-2試験において、JAK阻害薬による未治療のMF患者を対象としてルキソリチニブと併用した場合に、脾臓容積縮小の主要評価項目を達成するとともに、好ましい症状の改善と優れた忍容性プロファイルを示す1
pelabresibとルキソリチニブの併用療法は、医療の変革につながる骨髄線維症に対する一次治療となる可能性があり、2024年下半期に米国食品医薬品局(FDA)への申請が見込まれる
今回の買収は、オンコロジー領域への集中、がんの次世代治療薬の開発強化というノバルティスの戦略と一致
ノバルティスおよびMorphoSys社の取締役会は、1株当たり68ユーロ(合計27億ユーロ)のすべて現金による買収を全会一致で承認、発行済み株式の少なくとも65%が買収に応じることや、規制当局の承認などの通常の買収完了条件を満たすことを前提に、2024年上半期の買収完了を見込む
2024年2月5日、スイス・バーゼル発 ― 本日、ノバルティスは、自主的な株式公開買い付けにより、ドイツに本社を置く世界的なバイオ医薬品企業であり、オンコロジー領域の革新的医薬品を開発するMorphoSys社(FSE: MOR; NASDAG: MOR)を買収することで合意したと発表しました。発行済み株式の少なくとも65%が買収提案に応じることや、規制当局の承認などの通常の買収完了条件を満たすことを前提に、この買収は、ノバルティスの優先疾患領域の1つであるオンコロジー領域のパイプラインをさらに拡充・補完するとともに、当社の血液腫瘍分野の基盤をさらに強化するものです。
買収完了後、ノバルティスはpelabresib(CPI-0610)の権利を手にします。pelabresibは、骨髄線維症(MF)の患者に対するルキソリチニブとの併用により、優れた忍容性プロファイルを併せ持つ、画期的かつ治療を変革する選択肢となる可能性があります。さらに、現在、固形腫瘍またはリンパ腫の患者を対象に臨床試験が行われている、開発初期段階のEZH1およびEZH2タンパク質の二重阻害薬tulmimetostat(CPI-0610)も契約に含まれます。
pelabresibは、直近の第Ⅲ相MANIFEST-2試験において、JAK阻害薬による未治療のMF患者に対しルキソリチニブと併用した場合に、主要評価項目である脾臓容積縮小を達成しました1。さらに、治療開始から24週後の総症状スコア(TSS)のベースラインからの絶対変化量および50%改善という重要な副次的評価項目が立証され、良好な症状改善の傾向も示しました。pelabresibとルキソリチニブの併用により、骨髄線維症の4つの臨床的特徴(脾腫、疾患関連症状、貧血、骨髄の線維化)のすべてにおいて改善が見られました。さらに、先立って実施された第Ⅱ相MANIFEST試験では、MANIFEST-2試験と同様の患者層に対して行われた3つ目の患者群において、最長で60週にわたって脾臓容積の縮小と総症状スコアの双方の持続的な改善が確認されました2。米国食品医薬品局(FDA)への承認申請は、2024年下半期に行われる見込みです。
ノバルティスの開発部門のプレジデントであり、チーフ・メディカル・オフィサー(Chief Medical Officer)であるShreeram Aradhye M.D.は、「ルキソリチニブとの併用により、衰弱性の希少な血液のがんである骨髄線維症の次世代治療薬となる可能性があるpelabresibを医療現場に提供する機会を得たことをうれしく思っています」と述べています。「MorphoSys社の買収により、ノバルティスは、業界をリードしているオンコロジー領域のパイプラインとポートフォリオをさらに強化するとともに、私たちの能力と専門性を高めたいと考えています。ノバルティスとMorphoSys社は、これまでも協働を進めてきており、アンメットニーズを持つ患者さんへのインパクトと価値の最大化に向けて、同社の開発中の医薬品を生かせるよう、今後もともに働くことを楽しみにしています」
pelabresibは、ブロモドメインおよび余剰末端(BET)タンパク質の機能を選択的に阻害することにより抗腫瘍活性を促進し、がんにおける異常な遺伝子の発現を抑制するよう設計された開発中の低分子化合物です。pelabresibは、本態性血小板血症(ET)の患者を対象とした二次治療薬としての第Ⅱ相試験も進められています。MorphoSys社のパイプラインには、pelabresibのほかにも、他社との共同開発が行われている幅広いポートフォリオがあり、そのうち様々な免疫疾患や血液がんに対する臨床試験を実施中のianalumab(VAY736)を含めたいくつかのプロジェクトは、ノバルティスとの共同開発が進められています。
買収の概要
合意した取引内容は両社の取締役会において満場一致で承認されました。ノバルティスは、合意された取引内容に従い、MorphoSys社のすべての無額面無記名株に対し1株当たり68ユーロ(合計27億ユーロ)での自主的な株式公開買付けによる買収を行います。
この取引は、MorphoSys社の発行済み株式数の少なくとも65%が買収に応じることや、規制当局の承認などの通常の買収完了条件を満たすことを前提としており、2024年の上半期の買収完了を見込んでいます。MorphoSys社は、取引完了まで引き続き別の独立した会社として運営されます。
pelabresib(CPI-0610)について
pelabresib(CPI-0610)は、ブロモドメインおよび余剰末端(BET)タンパク質の機能を選択的に阻害することにより抗腫瘍活性を促進し、がんにおける異常な遺伝子の発現を抑制するよう設計された、開発中の低分子化合物です。pelabresibは、骨髄線維症の治療薬として開発が行われており、まだどの規制当局にも承認されていません。pelabresibの開発の一部は、Leukemia and Lymphoma Society®の資金提供を受けています。
骨髄線維症について
骨髄線維症は、骨髄幹細胞の遺伝的な異常により引き起こされる、骨髄増殖性腫瘍と呼ばれるグループに属する血液のがんです。脾腫、貧血、線維化の原因となる骨髄微小環境障害に加えて、重度の疲労、寝汗、掻痒、出血過多、脾腫に伴う著しい痛みなどの疾患関連の衰弱性症状からなる4つの臨床的特徴がみられます。骨髄線維症の患者さんの多くが、これらの複数の症状を併せ持つことにより、しばしば生活の質(QOL)が大きく損なわれます。診断時における年齢、遺伝的要因、血液検査の結果などいくつかの要素は、長期的な予後の予測に役立ちます。新たに診断された患者さんの約90%が、中等度から重度のリスクを伴い、予後の悪化と疾患関連症状を呈する可能性が高いことが予測されます。現在の標準治療薬であるJAK阻害薬が骨髄線維症のいくつかの側面に効果を示す一方で、広範な疾患コントロールに役立つ治療薬は存在しません。骨髄線維症の自然経過を変え、4つの臨床的特徴のすべてに対して深く持続的な奏功を示すような、まったく新しく忍容性の高い治療選択肢が強く求められています。
tulmimetostat(CPI-0209)について
tulmimetostat(CPI-0209)は、EZH2およびEZH1タンパク質のエンハンサー機能を阻害し、腫瘍抑制遺伝子のような抑制遺伝子を再活性化することで抗腫瘍活性を発揮するよう設計された開発中の化合物です。tulmimetostatは、ARID1A遺伝子変異卵巣明細胞がん、子宮内膜がん、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、BAP1遺伝子変異中皮腫、去勢抵抗性前立腺がんなどの進行性固形腫瘍またはリンパ腫の患者を対象に、1日1回投与の経口治療薬としての第Ⅰ/Ⅱ相試験(NCT04104776)が実施されています。
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ノバルティスについて
ノバルティスは、革新的医薬品の研究、開発、製造、販売を行うグローバル製薬企業です。ノバルティスは、患者さん、医療従事者、社会全体と共に病に向き合い、人びとがより充実した健やかな毎日が過ごせるため「医薬の未来を描く (Reimagining Medicine)」ことを追求しています。ノバルティスの医薬品は、世界中で2.5億人の患者さんに届けられています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
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以上
参考文献
1.2023-12-11_Rampal R_MANIFEST-2_ASH 2023_Oral 628
2.2023_Manifest Arm 3 results_Mascarenas et al J Clin Oncol 41:4993-5004