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学校法人 順天堂
会社概要

食後高血糖となる耐糖能異常が痩せた若年女性に多いことが明らかに

~ 痩せていても肥満者と同様の体質 ~

学校法人 順天堂

順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの田村好史 先任准教授、河盛隆造 特任教授、綿田裕孝 教授らの研究グループは、日本人の痩せた若年女性 (BMI *1<18.5kg/㎡) に食後高血糖となる耐糖能異常*2が多く、その原因として、主に肥満者に生じるインスリン抵抗性*3や脂肪組織の異常が関連することを世界で初めて明らかにしました。本研究結果は、痩せた若年女性の比率が先進国の中でも最も高い(約20%)本邦において、痩せた若年女性に対する生活習慣病発症への予防的取り組みが必要であることを示唆しており、我が国の予防医学を推進する上でも、極めて有益な情報であると考えられます。本研究は米国内分泌学会雑誌「Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism」のオンライン版で公開されました。
本研究成果のポイント
  • 日本人の痩せた若年女性は標準体重者に比べて耐糖能異常の割合が顕著に高かった
  • 痩せた若年女性の多くは食事量が少なく、運動量も少ないという「エネルギー低回転タイプ」となっており、骨格筋量も減少していた
  • 痩せた若年女性の耐糖能異常の原因として、主に肥満者に生じると考えられてきたインスリン抵抗性や脂肪組織の異常となる「代謝的肥満」が関与する可能性を世界で初めて明らかにした

背景
食後高血糖となる耐糖能異常は、主に肥満が原因で生じ、糖尿病や心血管障害のリスクとなることが知られています。欧米諸国では若年層における肥満の増加とともに耐糖能異常も増加してきており、肥満の若年者に対する減量指導が推進されています。日本では、痩せた女性(BMI 18.5 kg/㎡未満)の比率が先進諸国の中で最も高く、特に若年女性では、痩せ願望を反映してその比率が約20%と極めて高くなっています。最近の研究により、意外なことに痩せていても肥満と同等に糖尿病のリスクが高いことがわかってきましたが、あくまでも中年以降を対象としたデータであり、痩せた若年女性でも糖尿病のリスクが高いのか、高いとすると、なぜ痩せていてもそのような異常が生じるのか、に関しては全く明らかになっていませんでした。そこで今回、研究グループは痩せた若年女性の耐糖能異常の割合とその特徴を明らかにすることを目的に調査を実施しました。

内容
本研究では、18-29歳の痩せ型のBMI 16.0-18.49 kg/m2の若年女性98名と標準体重のBMI 18.5-23.0 kg/㎡の56名を対象に、耐糖能異常かどうか判定するための検査である75g 経口糖負荷試験を行い、耐糖能異常(糖負荷2時間後140mg/dl以上)の割合を調査しました。また、体組成測定(DXA法)、体力測定、食事内容や身体活動量に関するアンケートを実施しました。
その結果、標準体重に比べて、痩せ型の女性では耐糖能異常の割合が約7倍高いことが明らかになり(13.3% vs 1.8%)、その率は米国の肥満者における割合(10.6%)よりも高い率でした。また、痩せ型の若年女性の特徴として、エネルギー摂取量が少なく、身体活動量が低く、筋肉量が少ないことがわかりました(図1)。

図1 痩せた若年女性では耐糖能異常が多い図1 痩せた若年女性では耐糖能異常が多い

次に、痩せ型の若年女性の耐糖能異常の特徴を詳しく解析したところ、インスリン分泌が低下しているだけでなく、主に肥満者の特徴とされてきたインスリン抵抗性も中年肥満者と同程度生じていることが明らかになりました。さらに、痩せているのにもかかわらず脂肪組織から遊離脂肪酸*4が溢れ出て、全身にばら撒かれている状態(脂肪組織インスリン抵抗性とリピッドスピルオーバー*5)をきたしているという予想外の結果が得られました(図2)。さらに、体力レベルが低く、糖質からのエネルギーの摂取割合が低い一方で、脂質からの摂取割合が高いということがわかりました。

図2 痩せた若年女性の耐糖能異常の特徴図2 痩せた若年女性の耐糖能異常の特徴

従来、インスリン抵抗性は肥満に伴って出現し、痩せ型の糖代謝異常はインスリン分泌障害が主体でインスリン抵抗性はあまり関係しないと考えられていましたが、本研究は、痩せた若年女性における耐糖能異常にも、肥満者と同様にインスリン抵抗性や脂肪組織障害が生じている「代謝的肥満」があることを世界で初めて示しました。

今後の展開
本研究により、日本人の痩せた若年女性では耐糖能異常の比率が顕著に高い(13.3%)ことが明らかになりました。痩せた若年女性の多くは食事量が少なく、運動量も少ないという「エネルギー低回転タイプ」となっており、それとともに骨格筋量も減少していることから、痩せた若年女性に対する取り組みとしては、十分な栄養と運動により筋肉量を増やすような生活習慣の改善が重要と考えられます。また、耐糖能異常の病態に、インスリン抵抗性も関与する可能性が明らかになりましたが、昨今の研究でインスリン抵抗性は運動をしたり、食事の脂質摂取割合を減らすことにより改善する可能性が示唆されており、糖尿病の予防のためにそのような生活習慣の見直しが必要かもしれません。しかしながら、本研究で見つかった痩せた若年女性のインスリン抵抗性や脂肪組織異常が生じるメカニズムについてはまだ明らかになっていないため、更なる研究が必要です。

用語解説
*1 体格指数(BMI)
体格指数は通称BMI(body mass index)といい、その人がどれくらい痩せているか、太っているかを示す指数です。体重(kg)を身長(m)で2回割って算出します。我が国の基準として18.5 kg/㎡未満を痩せ、18.5~25 kg/㎡を標準体重(体格)、 25 kg/㎡以上を肥満としています。

*2 耐糖能異常
75g経口ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が140 md/dl以上、200 mg/dl未満となっている状態を指します。インスリン分泌量の低下やインスリンが効きにくいこと(インスリン抵抗性)により生じます。

*3 インスリン抵抗性
膵臓から分泌され、肝臓や骨格筋に作用して血糖を下げるホルモンであるインスリンの感受性が低下して効きにくい状態(抵抗性)を指します。主に肥満に伴って肝臓・骨格筋にインスリン抵抗性が出現し、糖尿病やメタボリックシンドロームの重要な原因の一つとなることが知られています。

*4 遊離脂肪酸
遊離脂肪酸は脂肪組織から血液に放出され、エネルギーの源として活用される脂肪分です。人の体では、脂肪は主に中性脂肪として皮下脂肪や内臓脂肪といった脂肪組織に蓄えられています。しかし、主に空腹時などでは脂肪をエネルギーとして利用するために脂肪組織に蓄えられた中性脂肪が分解され、遊離脂肪酸となって放出されます。この放出や貯蔵をコントロールしているホルモンがインスリンです。

*5 脂肪組織インスリン抵抗性とリピッドスピルオーバー
インスリンは脂肪組織にも作用し、脂質を脂肪細胞に貯蔵させる作用があります。しかしながら、肥満者では脂質を貯蔵する脂肪細胞が容量オーバーとなり、十分にインスリンが作用しなくなります(脂肪組織インスリン抵抗性)。すると、脂肪細胞から脂質が遊離脂肪酸として溢れ出し、この状態をリピッドスピルオーバーと呼びます。放出された遊離脂肪酸は肝臓や骨格筋といったインスリンが作用する臓器に到達すると、細胞内で毒性を発揮し、インスリン抵抗性が生じると考えられています。本研究では、痩せているにも関わらず、痩せた若年女性の耐糖能異常者では肥満者で認めるような脂肪組織インスリン抵抗性・リピッドスピルオーバーが生じていることを世界で初めて発見しました。

原著論文
本研究成果は米国内分泌学会雑誌「Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism」のオンライン版(2021年1月29日付)で公開されました。
英文タイトル: Prevalence and features of impaired glucose tolerance in young underweight Japanese women
タイトル(日本語訳): 日本人低体重若年女性の耐糖能障害(IGT)の割合と特徴
著者: Motonori Sato, Yoshifumi Tamura, Takashi Nakagata, Yuki Someya, Hideyoshi Kaga, Nozomu Yamasaki, Mai Kiya, Satoshi Kadowaki, Daisuke Sugimoto, Hiroaki Satoh, Ryuzo Kawamori and Hirotaka Watada
著者(日本語表記): 佐藤元律, 田村好史, 中潟崇, 染谷由希, 加賀英義, 山﨑望, 木屋舞, 門脇聡, 杉本大介, 佐藤博亮, 河盛隆造, 綿田裕孝                
著者所属: 順天堂大学
DOI: https://doi.org/10.1210/clinem/dgab052

なお本研究は、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 (文部科学省)の支援を受け実施しました。
また、本研究に協力頂きました参加者様のご厚意に深謝いたします。

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上場
未上場
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