三菱電機とNanofiber Quantum Technologiesが量子コンピューター接続技術の確立に向けた共同実証実験を開始
中性原子型量子コンピューター間の高速・大容量通信を実現する接続技術の開発・実証を推進

三菱電機株式会社
株式会社 Nanofiber Quantum Technologies

三菱電機株式会社(以下、三菱電機)と株式会社Nanofiber Quantum Technologies(以下、NanoQT)は、中性原子型量子コンピューター(※1)接続技術の確立に向けた共同実証実験を4月24日から開始します。
中性原子型量子コンピューターは、光ピンセット(※2)による原子配列の自在な制御と高集積化が可能で、量子ビット数の大規模化において優位性があります。しかし、単一システムで効率的に制御可能な量子ビット数には、配列可能な空間の限界などの物理的な制限が存在するため、実用的な大規模量子コンピューターの実装に向けて、複数の量子コンピューターを接続し、量子計算で扱うことのできる量子ビット数を拡張する技術の確立が不可欠となっています。
本実証実験では、三菱電機が持つ高度な量子ビット制御技術と、NanoQTが持つYb原子(※3)とナノファイバー共振器(※4)を組み合わせた技術に基づく光量子インターフェースを開発し、中性Yb原子型量子コンピューター同士の高効率な接続技術の実証に取り組みます。ナノファイバー共振器を用いて光子と原子の相互作用を強化することで、量子コンピューター間通信に用いる量子もつれ(※5)の高効率な生成が可能となります。また、ナノファイバー共振器に複数のYb原子を格納し、量子もつれの共有を並列化させ、これに三菱電機が持つ量子ビット制御技術を組み合わせることで、高速かつ大容量な量子コンピューター間通信の実現を目指します。
複数の量子コンピューターを接続することで、演算能力を飛躍的に向上させ、新薬候補物質の探索や革新的な機能性材料の開発、航空機や自動車の設計に不可欠な流体シミュレーションの高速化など、幅広い分野における技術革新への貢献が期待されます。三菱電機とNanoQTは、早期にプロトタイプの完成を目指し、大規模量子計算の実現に向けた技術基盤の確立を進めます。
■共同実証実験の概要

期間 |
2025年4月24日~2026年3月31日 ※状況により延長あり |
内容 |
量子ビット制御技術とナノファイバー共振器技術の組み合わせによる、中性原子型量子コンピューター向け光量子インターフェースの基盤技術の開発 |
各社の役割 |
三菱電機: ・光ピンセットにより中性原子の量子ビットの配列を制御する技術の開発 NanoQT: ・中性原子型量子コンピューターとナノファイバー共振器の統合技術開発 |
■今後の予定・将来展望
量子ビット制御装置のプロトタイプ早期完成を目指し、実証実験を進めることで、ナノファイバー共振器を介した量子状態転送の高効率化と制御技術の確立に取り組みます。また、将来的には産業界の実問題解決に適用可能な分散型量子コンピューティング基盤の確立を目指します。
(※1) 中性原子(電荷を持たない原子)を量子ビット(量子コンピューターにおける情報の基本単位)として使用する量子コンピューターの一種。レーザー光を用いて中性原子を操作し、量子情報の処理を行う
(※2) レーザー光を利用して原子を捕捉し、操作する技術
(※3) Yb(イッテルビウム)原子は特に環境からの擾乱に強く、中性原子型量子コンピューターにおける量子ビットとして有力な候補の1つ
(※4) 光波長より細く引き伸ばされたナノファイバーを導波路として用いた共振器で、光と原子の相互作用を強化するとともに、一般的な光ファイバーネットワークへの低損失送出が可能な装置
(※5) 量子ビット間の量子力学的な相関。量子計算に必須となるリソースの1つ
■お問い合わせ先
<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 情報技術総合研究所
〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船五丁目1番1号
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_it.html
株式会社Nanofiber Quantum Technologies 管理部
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田一丁目22番3号
TEL 070-1187-7071
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