クマの生息域に「お邪魔している意識を持つべき」92.8% 登山者調査
ヤマップ、東京農工大学と「クマと登山者の行動データ」を活用した研究連携を新始動
「地球とつながるよろこび。」を企業理念に掲げアウトドア事業を行う株式会社ヤマップ(福岡市、代表取締役CEO 春山慶彦、以下ヤマップ)は、全国の登山者を対象に「クマに関する登山者意識調査」を実施しました。昨今、市街地での出没などクマに関する報道が過熱する中、実際に山という「現場」を知る登山者はどう感じ、どう行動しているのか。見えてきたのは、経験を積むほどに深まる野生動物への「畏敬の念」と「現実的な共存」を模索する成熟した姿でした。
【調査結果トピックス】
1 クマの生息域に「お邪魔している意識を持つべき」92.8% 山・自然が身近なほど深まる畏敬の念
2 野生生物との遭遇は、もはや珍しくない。人命の安全確保(駆除等)と環境保全(共存策)、「両方必要」が最多に
3 地域で大きく異なる影響 広がる「会わない工夫」

全結果・グラフはこちらから https://corporate.yamap.co.jp/news/rTiGq9ZB
1. クマの生息域に「お邪魔している意識を持つべき」92.8% 山・自然が身近なほど深まる畏敬の念
調査対象の92.8%が、山はクマの生息域であり登山者は「お邪魔している意識を持つべき」と回答しました。特に「お邪魔している」と強く実感している層(「とてもそう思う」回答者)を属性別に見ると、活動地域別では「北海道・東北」の割合が高く、登山歴や遭遇経験の有無においても、山との関わりが深い層ほどその傾向が強まっています。存在の身近さが、野生生物に対する畏敬の念を深めている実状が窺えます。

[ Real Voice 登山者の声 ]
「本来の山は自然界であり、そこに人間が登山道を付けてお邪魔させて貰っている感覚は常に忘れないようにしている。」(静岡・登山歴11〜20年)
「常に動物のエリアにお邪魔させてもらっていると意識してます。」(福島・20年以上)
「登山に来たくせに、熊がいたと騒ぐ昨今に疑問を覚えます。山は野生動物の住処であり彼らのものであると思うからです。街中に降りて人を襲う熊とは訳が違うので同じように騒ぎ立てること自体、非常識かと思います。野生動物の住処である山を敬いお邪魔する気持ちを持った者だけが登山してくれることを望んでやみません。」(東京・1〜2年)
2. 野生生物との遭遇は、もはや珍しくない。人命の安全確保(駆除等)と環境保全(共存策)、「両方必要」が最多に
登山中、実際にクマを目撃した経験のある方は約3割(29.4%)でした。一方で、クマ以外の野生動物(サルやイノシシなど)との遭遇経験者は93.2%に達し、野生動物は「いて当然」の存在になっています。また、具体的な対策に対するスタンスを分析したところ「人間の安全のための管理(駆除等)」と「共存のための環境づくり(保全)」の両方を支持する層が最多(43.1%)となり「両輪での対策が必要」という現実的な認識が広がっています。


[ Real Voice 登山者の声 ]
「山は野生動物の領域なので、人はその存在を尊重すべきだ。しかし現在は、クマの数が増えすぎて、人の生活圏(過疎化などによって縮小しています)に侵入している。人命を優先するなら、侵入するクマを駆除すべきだ。」(長野・11〜20年)
「適切な個体数の維持に人間の介入も必要だとは思う。個人単位では出来ませんが、豊かな山(針葉樹ばかりではなく動物の餌となる木々が増える山づくり)を増やせたらと思う。因果関係があるかはハッキリ分かりませんが、自然の中のソーラーパネルはやはりやめてほしい。動物たちへの影響がないとは思えない。もちろん自然環境への影響もあると思う。」(新潟・1〜2年)
「山の中で野生動物と遭遇することは危害を加えられない限り、受け入れるべきであると考える。ただし、一般登山道やテン場などに出没して人に危害を加える可能性がある場合には、駆除もやむを得ないかと思う。昨今の熊による人身被害は市街地に出没するのが問題であり、山の中で野生動物と遭遇することと同じ観点で論じることは違うのではないかと思う。段階的には駆除もやむを得ないが、中長期的な取り組みとしては、植林して放置された針葉樹から広葉樹への転換や、増えすぎた鹿の駆除など、総合的な対策が求められると思う。」(群馬・6〜10年)
3. 地域で大きく異なる影響 広がる「会わない工夫」
登山頻度の変化について調査したところ、全体では約6割が「変わらない」と回答しました。しかし地域別に見ると、「九州・沖縄」では93.7%が変わらないのに対し、「北海道・東北」では48.3%にとどまるなど、クマの出没状況による地域差が顕著に表れています。 また、「週に1回以上登るコア層」や「共存のための環境づくりを支持する層」ほど、これまで通り活動を継続する傾向が見られました。

具体的な対策については、「撃退(スプレー等)」よりも「遭遇回避(会わない対策)」が重視されています。「熊鈴・ラジオ(54.7%)」や「事前の情報収集(47.3%)」、「単独登山の回避(38.3%)」など、接触そのものを未然に防ぐ工夫が主流となっていることがわかりました。

[ Real Voice 登山者の声 ]
「熊をはじめ野生動物の生息する領域に人間が足を踏み入れるのだから、遭遇する可能性が有るのは当然と考える。自分の存在を知らせて「如何にして野生動物との遭遇を事前回避するか?」というのが私なりの結論です。」(東京・20年以上)
「昨今のテレビ報道は、人間の居住地にクマがやってきて被害を受けたものであり、ヒグマの居住地に人間が入り目撃されたものは報道されていないし、居て当たり前の造林地での目撃は通報すらしないので、氷山の一角ですね。」(北海道・11〜20年)
「出会う可能性がある野生動物についてある程度生態を理解すること。その上で遭遇時の対処法を常々シミュレーションしておくこと。自他問わず有事が起こった際にはヒト側の問題点を追究し今後の行動に生かすこと。畏敬の念を持って接すること。」(北海道・11〜20年)
全結果・グラフはこちらから https://corporate.yamap.co.jp/news/rTiGq9ZB
調査概要
調査名称:クマに関する登山者意識調査
調査対象:全国の登山者 1415名
調査期間:2025年11月18日〜25日
調査方法:インターネットを利用したアンケート調査
関連情報
【超訳】クマが狂うと、次は「人間」(NewsPicks)
https://newspicks.com/movie-series/206/?movieId=6247
「恐れる」から「知る」へ。東京農工大学と「クマと登山者の行動データ」を活用した研究連携を新始動
野生動物であるクマの生態や行動原理を深く理解し、科学の力でクマと人の「境界線」を引き直すこと。それは、登山者とクマが適切な距離を保ち、日本の豊かな自然を共に分かち合う未来につながります。
「クマがどこにいるか」という生態調査と「登山者がどこを歩いているか」という行動データを統合・分析する試みは、国内でもほとんど例のない画期的なアプローチです。本研究は、森林生態学・野生動物管理学の第一人者である小池伸介教授(東京農工大学)との共同体制により実現しました。
GPS解析を用いてツキノワグマが本来どのように森を利用しているのか(採食、休息、移動などの生活圏)を可視化。「登山」という行為が、彼らの生活にどのような影響を与えているのかを明らかにしていきます。
【年末特別企画】クマ研究者に生質問!山﨑教授とあなたの「クマ観」をアップデート【Think Inプロジェクト #01】12月22日20時よりYouTubeにて生配信

クマの生態に詳しい山﨑晃司教授(東京農業大学 地域環境科学部)をお招きした、年末特別ライブ配信を開催いたします。「クマに遭遇した方はどのように行動したか」「遭遇したとき、本当に有効な対処法・心構えとは?」報道だけでは見えてこないクマの生態を、様々な視点から解説。2026年の登山シーズンをより豊かに、安全に楽しむために、年内に押さえておくべき知識を総ざらいします。当日は、チャットでの質問にもお答えします。ぜひリアルタイムでご参加ください。
【開催概要】
日時: 2025年12月22日(月) 20:00〜(予定)
配信: YAMAP公式 YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/@yamap_inc
配信URL: https://youtube.com/live/COtHHFnqgmA
参加申込: 不要
出演: 山﨑 晃司 氏(東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 教授 / 動物生態学・保全生態学)
Think Inプロジェクト
効率化の時代に敬遠される「問い」に対し、対話と身体知の機会を生み出すプロジェクト。「人間性の再発見」「境界の融和」「知恵の共創」を軸に、人と自然、頭と体の距離を「より親しく、より近く」へ。テクノロジーと共存しながら失われつつある「生きた手触り」を社会実装し、新たな豊かさを広く醸成することを目指しています。

株式会社ヤマップ 会社概要
会社名 株式会社ヤマップ
本社所在地 福岡市博多区博多駅前3-23-20 博多AGビル6F
資本金(資本準備金含む) 1億円
事業概要
1. 登山・アウトドア向け WEB サービス・スマートフォンアプリ「YAMAP」の運営
2. 登山・アウトドア用品のセレクトオンラインストア「YAMAP STORE」の運営
3. 日常もアウトドアも補償「YAMAPアウトドア保険」の販売
4. これからの登山文化をつくるメディア「YAMAP MAGAZINE」の運営
5. 自然特化型のふるさと納税ポータルサイト「YAMAPふるさと納税」の運営
6. 山・自然を活用したコンテンツ開発・コンサルティング・プロモーション 等
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