超伝導量子コンピュータの産業化に向けた高効率冷凍技術の開発を開始
~ ポスト5G情報通信システム基盤強化に向け絶対零度級の極低温冷却を可能とする冷凍技術のフロンティアを目指す ~
IHIは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に対し、「超伝導量子コンピュータの産業化に向けた高効率冷凍技術開発」の事業で大陽日酸株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と共同で応募し、このたび、採択を受けました。事業期間は2025年度から2027年度までの約3年間です。
将来、実用的な量子コンピュータを実現するためには、約100万個もの物理量子ビットを搭載した大規模なシステムが必要とされています。しかし、その実現に向けては、熱などによるエラーを最小限に抑えるため、数十mK(数十ミリケルビン(※1))もの極低温下で安定して動作する冷凍装置の大容量化と省エネルギー化が、最大の課題となっています。
このたび採択された事業では、これらの課題を解決し、将来的に100万物理量子ビット級の量子コンピュータを実現するため、従来よりも高い冷凍能力と優れたエネルギー効率を兼ね備えた、1万物理量子ビット級の極低温冷凍システムの開発、実証を行います。IHIは、このシステムの開発を取りまとめるとともに、これまで蓄積してきた極低温回転機械技術(※2)を用いた新たなターボ式冷凍サイクル(※3)を開発することで、システム全体の大容量化およびエネルギー効率の向上を図り、冷凍能力を高めます。
IHIは、本冷凍システムの開発に注力することで、量子コンピュータの実用化に貢献するだけでなく、今後、ITER等の核融合技術の普及などに伴い需要の急拡大が見込まれる極低温冷凍システムの安定運用の実現に寄与していきます。
【各社の役割】
IHI :極低温冷凍システム全体取りまとめおよび数K冷凍システム(ターボ式冷凍システム)開発担当
大陽日酸:数十mK冷凍システム(希釈冷凍システム(※4)の開発担当
産総研:ターボ式冷凍システムおよび希釈冷凍システムの性能評価
※1 数十ミリケルビン
絶対零度(0ケルビン:-273.15℃)に非常に近い、極めて低い温度で、通常の冷却技術では到達できない。量子コンピュータにおいて、量子ビットを数十ミリケルビンまで冷やすことで、外部ノイズや熱によるエラーを最小限に抑えることが可能となる。
※2 極低温回転機械
IHIでは、極低温下で動作可能な回転機械の開発に数多く取り組んできており、これまでヨーロッパの大型加速器施設CERN、国際熱核融合実験炉ITER等の世界各国の最先端の科学技術プロジェクトに適用されている。長年の開発で培ってきた極低温下で高効率に圧縮する空力設計技術、ガス軸受や磁気軸受といった潤滑油不要の軸支持技術や、常温部と極低温部間の断熱技術などのキーテクノロジーを組み合わせることで、極低温でも高性能かつ信頼性の高い回転機械を実現している。
※3 ターボ式冷凍サイクル
高速で回転するターボ機械を使いガスを圧縮・膨張させることで冷却する仕組み。
※4 希釈冷凍システム
4Heと3Heの2種のヘリウムの混合により50mK以下(-273.1℃以下)の温度を安定的に生成可能な冷凍システム。
【関連プレスリリース】
2003年05月30日
CERN(欧州合同原子核研究機関)向け「極低温ヘリウム冷却設備」がGolden Hadron Award 2003を受賞
https://www.ihi.co.jp/all_news/2003/industrial_general_machine/1189964_1845.html
2017年03月30日
ITER向けに世界最大級の超臨界圧ヘリウム循環ポンプ4機受注 ~国際熱核融合実験炉の心臓部を冷却する極低温回転機械~
https://www.ihi.co.jp/all_news/2016/industrial_general_machine/1190377_1650.html
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