「内部通報制度の整備状況に関する調査」2019年版を公表

通報件数は微増。不正の告発の受信実績が全通報中の10%未満の企業がおよそ8割。複数窓口設定やリニエンシー制度導入、外部基準適用など、内部通報対応の高度化に課題

デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、CEO:永田 高士)は、経営企画や、法務、総務、国際管理、内部監査等の部門に所属する企業担当者を対象に実施した、「内部通報制度の整備状況に関する調査」2019年版の結果を公表します。今回の調査は、上場企業322社を含む405社から有効回答を得ました。

 

通報の性質により窓口を分けている企業は3割未満。
今回の調査では、96.3%の企業において内部通報窓口を設置していることに加え、海外拠点からの通報を受け付ける窓口の設置も41.7%と着実に進んでいることがわかりました。一方で、日本国内において通報件数は微増傾向にあるものの(図表1)、職場での人間関係等に起因する従業員の個人的な事案に関わる通報が大部分を占めており、不正に関する通報件数が1割未満の企業が全体の8割以上にのぼりました(そのうちの不正に関する国内通報が0件の企業は66.1%)(図表2)。また、通報の性質により窓口を分けている企業は全体の24.9%にとどまりました。匿名が強く求められる内部通報制度を十分に機能させるという点では、不正と従業員の個人的な事案の通報窓口を明確に分けた対応が望まれます。
                    図表1 国内内部通報の件数


                        図表2

内部通報における外部窓口の状況

内部通報制度において法令違反等不正の早期発見・対応を行うには、不正が発覚した際に、企業をサポートする立場にある顧問弁護士では、通報者と企業の間で外部窓口としての中立性の保持に課題があると考えられています。しかし、今回の調査では外部窓口を顧問弁護士としている企業は5割強で昨年と同様に最多となっています。また、重篤な内部通報が社外取締役や社外監査役などの社外役員にエスカレーションされる仕組みがあれば不正をもみ消すことがより難しくなりますが、その比率は3割程度であることがわかりました(図表3)。

                         図表3


グローバル内部通報制度におけるリニエンシー制度と報奨制度の導入状況および認証制度等への関心
海外拠点からの通報を受け付けるグローバル内部通報制度を構築・導入・運営する上で検討すべき課題として、リニエンシー制度(自ら不正を告発した者への懲罰の減免が検討される制度)および報奨制度(通報者への謝金や昇給等の付与が検討される制度)の導入があります。今回の調査では、海外進出企業でリニエンシー制度は「一部拠点での導入」や「制度の設計中・導入予定」まで含めると昨年度調査より微増の13%となりました。実際に米国では行政が内部告発者に対して数十億円にも達する高額な報奨金を支給する事例が報告されており、また、日本国内においても司法取引制度の実例が発生しています。不正の主体者を許容することにつながることなどから、企業風土や文化に与えるマイナスの影響を懸念する声があるものの、企業としても社会情勢を見ながら必要性の検討が求められています。

        図表4 グローバル内部通報制度におけるリニエンシー導入制度の導入状況


また、内部通報制度を健全に維持していくためには、海外も含めた進出地域の法規制や商習慣等の環境変化に機敏に対応できる体制が必要であり、体制維持・向上のために社外基準への対応が有効です。WCMS認証制度(*2)やISO37002(*3)といった社外基準との比較は自組織の内部通報制度を客観視して、品質を改善していくことができる手段と考えますが、今回の調査で例えばISO37002の認知は約3割にとどまり、その関心の度合いの低さがわかりました(図表5)。

*2 WCMSとは、Whistleblowing Compliance Management Systemの略で、2019年2月に自己適合宣言登録の申請が開始された日本の内部通報制度の認証制度。
*3  ISO37002とは、ISO/TC309「組織のガバナンス」のマネジメントスタンダードを策定する過程で内部通報制度に対する部分のみを独立した基準として策定することが決議され、現在審議中の内部通報制度のマネジメントスタンダード(認証用の基準ではない)。

                        図表5


調査概要




 
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