加速する生成AI、LLMは特許業務をどう変えるか:最新の特許AI事例紹介【セミナーレポート】
本記事は、2025年2月13日に開催された「加速する生成AI、LLMは特許業務をどう変えるか:最新の特許AI事例紹介」の講演の開催レポートです。特許業務における生成AIの活用方法や現場の知見など、生成AIで変わる特許業務の在り方について、生成AIを活用した特許文案の作成や、分析を支援する特許AIツールの紹介を交えながら解説しました。

【講演者情報】
平井智之(リーガルテック株式会社 取締役COO)
立教大学大学院の法務研究科修了後、新卒でリーガルテック株式会社に入社。
法務部や第三者委員会、米国民事訴訟関連事業を経て、現在は取締役COOとして事業全体を統括。

【目次】
1. はじめに ― 知財業務における課題
2. 生成AI/LLMとは ― 基本概念と特許業務への可能性
3. AI導入状況と市場動向 ― 2023~2024年の変遷
4. ツール紹介 - 特許に特化した生成AI
5. 導入事例とその効果 ― ユーザーごとの使い方
1.はじめに― 知財業務における課題
特許業務には、市場調査や基礎研究から特許出願まで幅広い業務があり、それに伴い様々なプレイヤーが存在します。知財業務の大きな課題は、こうした知財戦略プロセスの複雑さや、プレイヤー間のコミュニケーションギャップにあります。

我々は、こうした課題に対して、「プライベートAI特許」というツールを提供しております。知財LLMを開発・提供することで、部門間のコミュニケーションギャップを埋めたり、製品の市場投入までの時間を大幅に短縮したりするといったことが可能になります。
2.生成AI/LLMとは ― 基本概念と特許業務への可能性
近年、大きな話題を呼んでいる生成AIですが、まずはAIの基礎を確認しておきます。近年の生成AIは「自然言語処理(NLP)」と呼ばれる技術領域に関連しており、機械が自然言語を処理するための包括的な概念のことを指します。こうした技術自体は1950年代から研究が始まっていました。それから、機械学習や深層学習などの技術的な進歩を遂げ、2020年頃からは「大規模言語モデル(LLM)」と呼ばれる技術が確立され始めました。
現在に至るまでAIの技術は大きく発展してきましたが、今後はLLM以前の技術についてはもはや考える必要はないと考えています。なぜなら、LLMはこれまでのAI技術と比べて、拡張性の高さが段違いだからです。特許調査における、従来型AIとChatGPTのようなLLMを比較すれば、その違いは一目瞭然です。

従来型AIサービスでは、タスクごとに設計が必要であったのに対し、LLMサービスでは汎用的に利用することができます。さらには、これまでのAIにはできなかった「生成」という機能があるのもLLMの利点の一つでしょう。こうしたことから、特許業務でも特許検索、分析、特許文案の生成など、様々な場面での活用が期待できます。
3.AI導入状況と市場動向 ― 2023~2024年の変遷
弊社では、2023年9月から2024年8月までの1年間にわたりAIの導入状況を独自に調査してきました。その間、数百社の方々からご回答を頂きましたので、一部共有します。

上記期間ではこのような結果となりましたが、調査期間終了後の2024年10月頃から、導入事例が増えてきたという雑感もあります。
また、2024年9月の自社セミナーでは、特許業務におけるAI活用という観点でアンケート調査を実施しました。ここでは、その集計結果の一部をご紹介します。


調査結果からは、半数以上の企業においては、特許業務でのAI活用が進んでいないことがわかります(2024年9月時点の独自調査による)。その一方で、今後の特許業務におけるAI活用範囲については、アイデア創発から明細書の作成、調査、分析まで、幅広い場面での活用が期待されていることがわかりました。
4.ツール紹介 - 特許に特化した生成AI
弊社のプライベートAI特許というツールは、特許データを再学習(ファインチューニング)することで特許情報に特化した生成AIとなっており、アイデア創発、明細書作成、特許調査、特許分析などに活用することができます。ここでは、アイデア創発や特許調査・分析として利用可能な「ChatTokkyo」という機能のデモンストレーション動画をお見せします。
またChatTokkyoの他にも生成AIを活用した特許の明細書作成支援もしています。この文案生成機能と従来のChatGPTのようなLLMの違いとしては、AIが出願済みの特許から類似特許を参考にしながら生成するため、誤った情報出力(ハルシネーション)を低減することができます。また、新規性のある内容を先に入力することで、それらの内容をもとに文案を生成するため、全体として統一感のある内容を出力することができます。
5.導入事例とその効果 - ユーザーごとの使い方
弊社のプライベートAI特許をローンチしてから1年半以上になりますが、これまでに知財部や弁理士、研究開発部門の方々にご利用いただいております。その結果、数百社以上の企業・研究機関様に導入いただいております。導入企業様ごとに使い方は異なり、その中で見えてきた効率的な使い方をご紹介します。

〈ツール活用のポイント〉
導入企業様の多様な活用事例を見てきた中で、本ツールを最大限に引き出すには、いくつかのポイントがあります。まず、質問パターンが非常に幅広いため、初期段階では意図を的確に伝えるコツをつかむまで、試行錯誤が必要です。また、「AIに尋ねる」というワークスタイル自体が新しい文化であるため、慣れるまでの学習期間を想定しておくとスムーズに活用を始められます。さらに、本ツールはあくまで皆様の業務をサポートするアシスタントであり、全ての業務を代替するものではありません。AIの長所を生かしつつ、人間の判断と組み合わせることで、効率的な知財業務の実現をおすすめします。
今後も「知財・特許×AI」をテーマにしたセミナーを定期的に開催していきます。
随時、情報をご確認ください。
詳細・デモンストレーションのご希望はこちら:https://form.legaltech.co.jp/aos/tokkyo-ai/input/
製品ページはこちら:https://tokkyo.ai/pvt/
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