第54回 日本労務学会にて発表 バイオ研究領域のラボオートメーションと仕事の高度化
~ 高度人材のタスク・スキルの変化に関する調査報告 ~
パーソルテンプスタッフ株式会社(本社: 東京都渋谷区、代表取締役社長: 木村 和成、以下パーソルテンプスタッフ)が大阪大学大学院工学研究科と協働で開設した「パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所」の特任研究員である桑原 寿江は、労働政策研究・研修機構 研究員 小松 恭子氏、高松大学経営学部 教授・大阪大学大学院工学研究科 特任教授 松繁 寿和氏ともに『バイオ研究領域のラボオートメーションと仕事の高度化』と題し、高度人材のタスク・スキル変化に関する調査を日本労務学会で発表しました。
■研究報告のポイント
パーソルテンプスタッフの正社員型派遣として、研究開発領域で従事する社員もいるが、その中でもおよそ4割程度が就業しているバイオ分野におけるオートメーション化(自動化)による業務(タスク・スキル)変化の調査を行いました。
<ポイント>
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バイオ産業市場規模の拡大・ラボオートメーション市場規模の拡大
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バイオ研究領域で就業する人材は大卒、大学院(修士・博士課程)の知識・スキルが必要(=高度人材)
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ラボオートメーション化によって高度人材のタスク・スキルに影響を与えている
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ラボオートメーション化を推進するためには、プログラミング的思考が必要
■1. バイオテクノロジーとラボオートメーション市場規模の拡大
(1) バイオテクノロジーと市場規模
バイオテクノロジーとは、「生物の持っている働きを人々の暮らしに役立てる技術」のことです。バイオテクノロジー産業における研究開発業務は、無菌環境下での作業やマイクロ単位による操作、扱うものの特徴を理解した上での温度管理が必要であり、習熟したスキルと知識が必要となってきます。
経済協力開発機構(OECD)によると、2030年の世界のバイオテクノロジー市場はOECD加盟国GDPの2.7%*1と予測されています。
*1: The Bioeconomy to 2030(OECD,2009年)
(2)ラボオートメーション市場規模の拡大
ラボオートメーションとは、科学の研究や実験を行う研究室・実験室(ラボラトリー)での作業を自動化するための技術や方法の総称であり、2030年の市場規模予測は、2023年のおよそ1.45倍*2になると予想されています。
*2: 株式会社グローバルインフォメーション社(2024)市場調査レポート Laboratory Automation Market by Product (Analyzers, Automated Liquid Handlers, Automated Plate Handlers), Component (Assays, Autoanalyzer, Closed Automation), Software, Application - Global Forecast 2024-2030より
■2. バイオ研究領域で就業する人材は大卒、大学院(修士・博士課程)の知識・スキルが必要
米国O*NETおよび日本版O-NETのデータベースより、バイオテクニシャン、バイオエンジニアとバイオテクノロジー技術者にとって必要な教育レベルは大学~大学院(修士・博士課程)卒業レベルを求めていることがわかり、ここからバイオ研究領域に就業する人材は高度人材であることがわかります。
*3:・Bioengineers and Biomedical Engineers, Biological Technicians
O*NET Online (https://www.onetonline.org/)
Bioengineers and Biomedical Engineers 17-2031.00, Biological Technicians 19-4021.00
・バイオテクノロジー技術者
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)作成 職業情報データベース 簡易版数値系ダウンロードデータ ver.5.0
職業情報提供サイト(日本版O-NET)より2024年6月25日にダウンロード
(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/download)を加工して作成
■3. ラボオートメーション化は高度人材のタスク・スキルに影響を与えている
高度人材が多く就業しているバイオ研究領域においてオートメーション化(自動化)が進んだ場合、どのような業務(タスク・スキル)変化があるのか調査した結果、具体的に変化があることがわかりました。
(1)バイオラボ(実験室)で行われる実験業務を可視化
初めに実験業務の難易度を可視化するために、実験業務を要素分解し点数化しました。実験業務の作業については、バイオ基礎知識、さらに高度なバイオ、データ分析、機器原理等の知識が必要となります。高度な知識が必要な要素項目に関しては少し色の濃い部分で色分けしました。また、マイクロピペット操作や試薬の調製(試薬を量り、溶液に溶かす作業)はほぼ全ての実験業務おいて必須のため、網掛けで色分けしました。
(2)事例紹介:ELISA実験のオートメーション化における変化
バイオ実験業務よりELISAにおけるオートメーション化導入における作業者の業務時間および作業項目の変化をご紹介します。自動化機器が導入されると、人の作業時間は5分の1に削減されることがわかり、人が行う作業項目も減り、先ほどお見せした一覧表のELISA部分は手技やバイオ知識に基づいた業務がなくなる可能性がわかりました。また、自動化により新たに機器のプログラム設定といった業務が発生する可能性がでてくることもわかりました(図1の右の作業項目の青い枠が囲まれている箇所)。
■4. ラボオートメーション化を推進するためには、プログラミング的思考が必要
米国職業情報ネットワーク(米国O*NET)によりバイオエンジニアにおいて多くのタスクにおいて重要度に変化が起きている可能性が明らかになった。タスク重要度の変化はラボオートメーション化による影響があるか否かを確認するため、日本国内における現状調査とオートメーション化を導入している現場に対し、アンケートとヒアリング調査を行った。
日本国内のバイオ研究領域(健康・医療産業を中心)におけるラボオートメーションの導入現状を把握するアンケート調査は一般財団法人バイオインダストリー協会「バイオエンジニアリング研究会」「創薬モダリティ基盤研究会」の企業会員様にご協力いただき、調査を行った。
調査結果より、ラボオートメーション導入目的は研究開発業務の効率化・生産性の向上の回答が最も多く、導入課題には予算の不足、また必要人材としてはバイオとデジタル技術の両方に精通した人材が不足しているという回答が多かった。
アンケート調査結果報告URL: https://persol-biodx-arl.eng.osaka-u.ac.jp/research-report/
次に実際にオートメーション化を導入している方々へのヒアリングを行ったところ、導入した経験より作業を一つ一つ分解し、順序立てていくような思考である「プログラミング的思考」が現場の人には必要になっていくといった声を多くいただいた。
■研究まとめ
・米国の重要タスク変化:バイオテクニシャンよりバイオエンジニアのタスク変化が大きかった
・日本国内においては、米国と異なるタスク変化が見られた(米国は技術的活動のタスクが減っているのに対し、国内は技術的活動を一部担うバイオエンジニアの存在がみられた)
・自動化により業務分担・分離が明確になり、求められるスキルに差がでてくる可能性がある
・より自動化を業界内で浸透させるためには、プログラミング的思考が必要となると予想される (作業工程を分解する力、組み合わせる力、抽象化する力)
■研究者の紹介
・大阪大学大学院工学研究科 特任研究員 桑原 寿江(パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所 所属)
・労働政策研究・研修機構 研究員 小松 恭子
・高松大学経営学部 教授・大阪大学大学院工学研究科 特任教授 松繁 寿和(パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所 所属)
パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所
https://persol-biodx-arl.eng.osaka-u.ac.jp/
パーソルテンプスタッフは、こうした取り組みを通じて、日本の高度バイオDX産業人材の育成とバイオものづくり産業の振興に貢献するとともに、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現に向け、取り組んでまいります。
■パーソルテンプスタッフ株式会社について< https://www.tempstaff.co.jp/ >
パーソルテンプスタッフ株式会社は、人材派遣、ビジネス プロセス アウトソーシング、官公庁受託事業などのサービスを提供しています。2017年7月より、テンプスタッフ株式会社からパーソルテンプスタッフ株式会社へ社名変更。パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、グループの総力をあげて、労働・雇用の課題解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
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