シリア:医療施設が相次いでタル爆弾の標的に
シリア南西部に位置するダルアー県のボスラ病院が6月15日夜、タル爆弾の攻撃を受け損壊した。この一帯では過去1ヵ月の間に、同病院を含む医療施設10ヵ所が攻撃の標的となっている。ボスラ病院は、ダルアー県で唯一新生児医療と透析治療を提供する病院だった。また6月10日には国境なき医師団(MSF)が支援するアレッポ県の病院も攻撃を受け、医療スタッフが負傷した。既に不足している医療施設と人員がさらに不足する事態とならないためにも、MSFは紛争の全陣営に対し、人道法に基づいて民間人と医療施設・スタッフを尊重するよう求めている。
計10発のタル爆弾
ボスラ病院に勤務する医師の1人によると、午後11時ごろ、病院を狙った4発のタル爆弾で戸や窓が破壊されたという。「私たちが現場に着いた時も、頭上を飛ぶヘリコプターの音がまだ聞こえていたため、医療チームと患者を避難させました。1時間後、さらに6発が投下され、医療機器の半分が損失し、建物もひどく損壊しました」と話す。
シリアでMSFの活動責任者を務めるカルロス・フランシスコは「MSFは紛争の全陣営に対し、人道法に基づいて民間人と医療施設・スタッフを尊重するよう、改めて求めます。医療インフラに対する今回の新たな攻撃は容認できません」と訴える。
MSFが支援する病院も攻撃の対象に
今回の攻撃以前、6月10日には、北部のアレッポ県でMSFが支援する病院も爆撃の被害に遭っている。タル爆弾1発が病院わきで爆発し、医療機器と調剤所、全ての戸と窓が損壊。この爆撃により、術後室は現在使用不可能となっている。
同病院の医師によると、主な標的は病院だが、救急車もミサイル攻撃を受けており、最近は診療所も攻撃対象となっているという。同病院が直近の1年以内に受けた被害は6月10日で3回に上るが、今回が最も激しい攻撃で、被害も甚大だった。
病院スタッフは「院内にいた医療チームの医師1人が負傷しました。ただ、攻撃の後もスタッフは業務を継続しています。もちろん不安はありますが、それでも業務の継続に専念しています。アレッポ県の医療従事者はみな、国際社会が介入も保護も行わず、傍観していることに失望しています。今回のような攻撃からの保護が必要です。とてもつらく痛ましい状況です」と話す。
アレッポ県の病院の4割が攻撃の被害に
アレッポ県では医療施設に対する攻撃が激しさと頻度を増しており、MSFに寄せられた報告によると、2015年5月以降、9ヵ所の医療施設が標的となった。そのうち直撃を受けたのは6ヵ所で、これは県東部で今も機能を保っている病院の40%にあたる。
タル爆弾による攻撃を受けたアレッポの医療施設は、医療機器、薬の倉庫、発電機が損壊し、一時休業または無期限休業に追い込まれている。患者は他の医療施設を探すものの、医療従事者が避難し、多くの薬が入手できない状況のため、選択肢は一層せばまっている。
フランシスコは「大半の医師が都市圏外やトルコに逃れているため、医療人員が不足しています。医療施設への攻撃が続けば、大部分の医療スタッフが避難してしまうでしょう」と話す。
MSFはシリア国内の7ヵ所で医療施設を運営し、約100ヵ所の診療所や野外病院を直接的に支援。また、隣国のヨルダン、レバノン、イラクに逃れたシリア人患者の援助も行っている。
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