【調査発表会レポート】メルカリ「世代別の消費行動・資産認識に関する調査」発表会
Z世代代表者が登壇。持っているモノは売れるモノ、売る前でも持ち物の資産価値を裏付けに買う
2023年7月、フリマアプリ「メルカリ」はサービス開始から10周年を迎えました。その間、経済産業省によると(※1)、2021年の個人間EC(CtoC-EC)の推定市場規模が2兆2,121億円(前年比12.9%上昇)となり、同調査開始以来初めて2兆円を超えるなど、個人間取引の市場は継続的に成長しています。
また、メルカリ総合研究所(運営:メルカリ)が過去に実施した「フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動」に関する意識調査(※2)からは、「リセールバリューを意識して購入する」など、普段のお買い物の意識にも変化をおよぼしていることがわかっています。
これまでメルカリ総合研究所では、フリマアプリの登場による消費行動の“変化”に焦点を当てた調査を実施してきました。本調査は、フリマアプリを含むさまざまなインターネットサービスを当たり前に利用する環境に育ったZ世代(18歳〜24歳)に焦点を当てています。今回は、「デジタルネイティブ」と言われるZ世代には、他世代にはない消費行動や意識が存在する可能性の検証を目的に「世代別の消費行動・資産認識に関する調査」(※3)を実施し、その結果に関する報道関係者向け発表会を8月7日(月)に開催しました。
※1:経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」(2022年8月)https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html
※2:メルカリ総合研究所「『2022年度フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動』に関する意識調査」(2022年8月)https://about.mercari.com/press/news/articles/20220816_consumersurvey/
※3:メルカリ総合研究所「『世代別の消費行動と資産認識』に関する調査」(2023年8月)
https://about.mercari.com/press/news/articles/20230807_generationsurvey/
(左より、株式会社メルカリ 執行役員 CXO Marketplace 前川美穂(※オンライン登壇)、慶応義塾大学 商学部 教授 山本晶氏、株式会社メルカリ 執行役員 CBO Marketplace 兼 CEO Fintech 山本真人)
【調査発表会内容】
調査発表会では、慶応義塾大学 商学部 教授の山本晶氏が「世代別の消費行動・資産認識に関する調査」のポイント解説を行いました。
Z世代の42.7%が、新品購入時に“家にある持ち物の資産価値を裏付けにして買う”消費行動をとっていることについて、山本氏は「他の世代ではあまり見られない行動」とその結果に驚き、「買い物をするときには、財布(予算)と相談して物を買うのが一般的。その財布の中身は従来“お金”だったが、Z世代は、頭の中に財布があり、“お金”だけでなく“持ち物”も入っているのではないか」とコメント。
フリマアプリやオンライン買取をはじめとする二次流通の普及が“持ち物”の流動性を高めている可能性に触れ、「スニーカーやアクセサリーなど、これまでは“資産”として認識しづらかったものが、資産の一部として認識されていることがわかる」と解説しました。
メルカリの執行役員 CXO Marketplaceの前川美穂からは、「メルカリ」の利用実態や今後の取組を紹介しました。
2013年にサービスを開始し、今年で10周年を迎えた「メルカリ」は、累計出品数は30億品以上、月間利用者数は2,200万人を超えています。
今回の調査では、Z世代の約6割がリセールバリューを考慮して新品を購入しており、自分の持ち物を売る想定で欲しいモノを買う行動が、新しい消費行動として広がりをみせつつあることを感じさせる結果が出ましたが、実際に「メルカリ」利用者にもその傾向が見られます。「メルカリ」のZ世代の利用データでは、不要品を出品することで、月間平均約26,000円の売上金を得ており、「メルカリ」での購入は月間平均約15,000円でした。売上金が購入金額を上回っていることから、「家にある使わなくなったモノを出品して得た売上金を利用し、また「メルカリ」で欲しいモノを購入している傾向がある」と考えられます。
また、今後の取組として、メルカリWeb版の機能強化や、越境EC事業者との連携による海外から商品購入できるチャネルの拡大など、UI・UX面のアップデートについて紹介したほか、「メルカリ」ではじめてのカテゴリーでお買い物や出品をするとさまざまな特典が受けられる「メルカリがおトクな8日間」キャンペーン(※4)を新たに発表しました。
発表会の最後には、山本氏、前川、メルカリ 執行役員 CBO Marketplace 兼 CEO Fintechの山本真人がパネルディスカッションを実施し、「“家にある持ち物を売ることを想定して買う”消費行動」「Z世代のお買い物体験」について意見を交わしました。「Z世代のお買い物体験」においては、「メルカリ」利用者の岩田桃子氏も登壇し、3名からの質問に回答しました。
※4:メルカリ、はじめてのカテゴリーでのお買い物や出品で80%相当分をポイント還元するなどさまざまな特典が受けられる「メルカリがおトクな8日間」キャンペーンと新CM放映開始(2023年8月)
https://about.mercari.com/press/news/articles/20230807_8daycpn/
【パネルディスカッション:「“家にある持ち物を売ることを想定して買う”消費行動」「Z世代のお買い物体験」】
■Z世代の「持ち物を売る想定で、売る前に買う」行動
山本氏:「下取り」や「買い替え」という言葉もあるが、これまでは、売ることと買うことが同時、あるいは売ることが先行していました。今回、売れたことを想定して次のモノを買う行動が特にZ世代で生まれていることがわかり、とても驚きました。フリマアプリなどのテクノロジーにより、簡単にモノが売れる状況がつくられているからこそ、こうした行動が生まれたのだと思います。
メルカリ前川:山本先生も仰られる通り、今回の調査結果はとても驚きが多かったです。「メルカリ」としても、Z世代を含めた若年層の方々によりご利用いただきたいため、フリマアプリを使って「売る前提でモノを買う」という行動が生まれていることは、純粋に嬉しいですね。今後、持ち物を可視化することで、より良いタイミングで売れるような体験を提供していきたいです。
メルカリ山本:簡単にモノが売れることと、いざ売ろうとしたときに、実際に買ってもらえることに確信が持てる状況でないと、こうした行動にはいたらないと思います。お客さまの数が増加するなか、メルカリが「売れること」をしっかり提供できるようになっていることが嬉しいです。
また、「メルペイ」などのFintechの観点では、「あと払い機能」も提供することで、手元ではまだモノが売れていない状態でも一旦あと払いで購入し、その支払いタイミングまでには出品物が売れている、という使い方が可能になる。つまり、「売ること」と「買うこと」を分割し、非同期化して考えられるようになる。メルカリ」のマーケットプレイスと、あと払いのFintechが組み合わさることで、こうした行動が生まれやすい環境が整えられているのだと考えています。
■Z世代のリアルなお買い物、基準の1つは「フリマアプリで売れそうか?」
岩田氏:現在22歳で、15歳から「メルカリ」を利用しています。使い始めたきっかけは、趣味のアニメグッズを手放したいと思ったことです。現在は、そうしたグッズのほか、アパレル、書籍、コスメなどを売ったり買ったりしています。今回の調査結果を見て、そのすべてに共感できました。特に、Z世代が最も多い「持ち物を売る想定で、売る前に買う」という行動について共感しています。
(「メルカリ」利用者として、パネルディスカッションに参加した岩田氏。)
山本氏:私が本当に驚いた部分です。「もし売れなかったら…」という不安はないのでしょうか?
岩田氏:「売れなくても仕方ない」という気持ちがあるので、売れなくても大丈夫だと思っています。でも、大体のものは「メルカリ」に出品すれば売れるため、あまり心配していません。
メルカリ山本:持ち物を売る想定でモノを買う時、特定のモノを売ろうと考えているのか、それとも、すでにいくつか出品していて順番に売れていくのを待つのか、どのような売り方をしていますか?
岩田氏:「これが売れたらこれを買おう」というよりも、いろいろなモノを出品して、それが売れればいいなという意識で「メルカリ」を利用しています。「売る」という選択肢があることで、買い物を我慢することは少ないです。売れなくても「そのうち売れるだろう」という意識で買い物をすることがありますね。
メルカリ前川:売る前提でモノを買うことに、とても興味を持ちました。なぜそのような考えに至ったのでしょうか?
岩田氏:
アニメグッズなどが購入時よりも値上がりすることが多いためでしょうかね。友だちも同じように考えて、「売る想定で新たにモノを買う行動」をとっていると思います。山本先生が仰っていたように、頭の中に“お金”と“持ち物”があり、お金と同じような意識で持ち物を捉えていると思います。
山本氏:
所有しているものに対する愛着や、「手放したくない」という思いもありますか?また、すごく欲しいモノがフリマアプリでは売れなさそうな時はどうしますか?
岩田氏:
モノへの愛着があるからこそ、「メルカリ」で売るような感覚です。ゴミとして捨てるのは心が痛いので、タダ同然でも売ることがよくあります。欲しいモノがフリマアプリで売れないかもと思ったら、躊躇してしまう部分もありますが、どうしても欲しければ、売れないことを承知で買うことがありますね。ただ、その割合は少ないです。買い物の基準として「フリマアプリで売れそうか?」は大事な基準になっています。
メルカリ前川:
日本には「もったいない」という言葉があるように、モノを捨てることをためらう文化があると思っています。モノを大切に使い続けて、いずれは誰かに引き継いでもらいたいというマインドが、形を変えて引き継がれているようで、とても興味深いです。
メルカリ山本:
岩田さんにお話しいただいたような「メルカリ」の使い方は、我々がずっと考えてサービス設計してきたものなので、我々のビジョンだけではなく、実際に使っていただけていることを伺えて大変嬉しく思います。明日から新たなキャンペーンも始まるので、「メルカリ」を使ったことのない方や、もっと使ってみたいという方にも、より良い体験を提供していきたいと思います。
■登壇者のご紹介
慶応義塾大学 商学部 教授 山本 晶
慶應義塾大学法学部政治学科卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。東京大学大学院、成蹊大学、慶應義塾大学大学院経営管理研究科を経て2023年より現職。主な著書に『キーパーソン・マーケティング: なぜ、あの人のクチコミは影響力があるのか』東洋経済新報社、『コア・テキストマーケティング』新世社など。主に消費者間相互作用の研究に従事。日本マーケティング学会(常任理事)、日本マーケティング・サイエンス学会(研究委員、編集委員)、日本消費者行動研究学会、日本商業学会、INFORMS、ACRの各会員。
株式会社メルカリ 執行役員 CXO Marketplace 前川 美穂
米国美術大学を卒業後、Microsoft 本社にUXデザイナーとして入社し、ポータルサイトの立ち上げとグローバル展開に従事。2008年に同社の日本法人に異動後はアジア圏を担当し、ニュースメディアのUXデザイン開発に携わる。2015年にFast Retailingの一人目のUXデザイナーとして入社し、デザイン組織を設立。店舗・業務システムから、各ブランドのECサイトのデザイン統括を経て、2022年5月にメルカリMarketplaceにHead of Designとして参画。2023年6月CXO Marketplaceに就任。
株式会社メルカリ 執行役員 CBO Marketplace 兼 CEO Fintech 山本 真人
2004年 東京大学大学院 学際情報学府 修士課程修了。NTTドコモを経て、2008年よりGoogle JapanのEnterprise部門 Head of Partner Salesを務める。2014年にはSquare JapanにてHead of Business Development and Sales、2016年からはApple JapanにてApple Pay 加盟店事業統括責任者を務める。2018年4月にメルペイに参画し、CBOとして金融新規事業(Credit Design)や加盟店開拓など、ビジネス全般を担当。2022年1月よりメルペイ代表取締役CEO。2022年7月よりメルカリ執行役員CEO Fintechに就任、2023年6月より執行役員CBO Marketplaceも兼務。
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