消えないシミと細胞のエネルギー代謝に関する新発見
メラニンをため込む代謝不良の細胞老化ケラチノサイトが関与。岡山理科大学との共同研究 第23回日本抗加齢医学会総会で発表。
消えるシミと消えないシミについて
加齢とともに肌表面に現れるシミは大きく2つに分類され、「老人性色素斑」と「肝斑(かんぱん)」が知られています。老人性色素斑は、男女を問わず形成される輪郭のはっきりしたシミで、その原因は繰り返しの紫外線ダメージによるケラチノサイト※1の分化や増殖異常であると考えられており、肝斑は30代~40代女性の両頬に現れるシミで、女性ホルモンの乱れからくるメラノサイト※2の異常な活性化が原因だと考えられています。肝斑は閉経を過ぎる頃から徐々に症状が減って消えていくのに対し、老人性色素斑は自然と消失することなく、年齢とともに悪化し消えることはありません。老人性色素斑が消えない理由を見つけるため、表皮のターンオーバー(新陳代謝)に深く関わるエネルギー代謝に着目し研究を行いました。※1 表皮のほとんどの部分を構成する角化細胞 ※2 表皮に存在するメラニン色素をつくる色素細胞
元気な表皮細胞はメラニンをため込まない
エネルギー代謝によって変動する成分を調べてみたところ、元気な表皮細胞(ケラチノサイト※1)ではメラニンを取り込むと培地中の乳酸や細胞の酸素消費速度が増加しました。これは、エネルギー代謝が活性化したことを示しています。一方、エネルギー代謝の活性化を抑制すると、細胞内にメラニンが蓄積することがわかりました。このことから、メラニンを取りこんだ後のエネルギー代謝の活性化が、メラニンを蓄積させないための重要な鍵であることがわかりました。この結果から、元気な細胞が多い肌では、細胞がメラニンをたくさん取り込んでもエネルギー代謝が活性化することにより新陳代謝を促し、最終的にはメラニンを排出させることができるため、メラニンが肌にとどまらないと考えられます。
老化細胞はエネルギー代謝の活性化が起こらず、メラニンをため込み、居座り続ける
顕微鏡でメラニンを取りこんだ細胞を観察すると、メラニンを「蓄積する細胞」と「蓄積しない細胞」が存在しました。メラニンを蓄積している細胞では、エネルギー代謝指標となるミトコンドリア電位が低く、細胞分裂も低下していました。さらに、SA-β-GALという老化マーカーで染色されたことから、この細胞の正体は、細胞老化※3した老化ケラチノサイトであることがわかりました。老化細胞はエネルギー代謝が低いため、メラニンを取りこんだ後のエネルギー代謝の活性化が起こりづらいと予想できます。これらの結果から、老化ケラチノサイトがメラニンを取りこみ、ターンオーバーされずに肌の内部に居座り続けることが、老人性色素斑がいつまでも消えない理由のひとつであると考えられます。
※3 細胞老化は、分裂を繰り返した細胞やDNA損傷を受けた細胞が増殖しないように分裂を停止させる現象のこと。
今後の展望 老化細胞をターゲットに、消えづらい老人性色素斑の改善が期待できる成分の開発を行っていきたいと思います。
発表内容
学会名:第23回日本抗加齢医学会総会
発表者:株式会社ナリス化粧品 山﨑浩子/岡山理科大学 安藤秀哉
発表タイトル:老人性色素斑部で見られるケラチノサイト内メラニン蓄積に対する細胞老化の関与
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