テクノロジー・メディア・通信業界予測「TMT Predictions 2020 日本版」を発行
AIチップ、ローカル5G、広告型動画配信などの世界動向に日本企業はどう対応すべきか?半導体エコシステム、サイバーセキュリティに関する日本独自のレポートも追加
デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、CEO:永田高士)は、テクノロジー・メディア・通信(TMT)業界についてデロイト グローバルがトレンドを予測し、発表した「TMT Predictions 2020」をもとに、日本オリジナルの考察・分析を加えたレポート「TMT Predictions 2020 日本版」を発行しました。
TMT Predictions 2020日本版では、AIチップ、プロフェッショナルサービスロボット、ローカル5G、低軌道衛星、音声コンテンツ、広告型動画配信の各分野に関する世界的な業界動向のグローバル予測に加え、日本における市場状況や変化への対応策などの論点について、各分野のプロフェッショナルが「日本の視点」として取りまとめました。日本独自のコンテンツとしては、いま日本企業が取り組むべきテーマとして半導体エコシステムとサイバーセキュリティに焦点を当て、世界の動向や日本における現状と対応策などについて解説しています。COVID-19による影響で経済的損失が予想される一方で、オンライン化、デジタル化がむしろ加速していくとの見方もあります。本レポートでご紹介するトレンドはより一層、経済・社会における重要性を増していくことでしょう。詳細は当社ホームページより、レポートPDFをダウンロードのうえご確認ください。
デロイトは、エッジAIチップが2020年に約6億5000万個販売され、収益ベースでは22億ドルの規模に達すると予測している。エッジAIチップの用途としては、消費者向け、企業向けのどちらの市場でも利用が拡大すると考えられる。ハイエンドのスマートフォン、タブレット、スマートスピーカー、ウエアラブル機器など、エッジAIチップを搭載した消費者向けデバイスは今後ますます増加する可能性が高い。また、ロボット、カメラ、センサ、IoT(Internet of Things)デバイスなど、複数の企業向け市場でもエッジAIチップが利用されることになるだろう。
日本の視点
エッジAIの活用方法は多岐にわたり、たとえば都市のスマート化、分散型エネルギーの実現、AIを活用した防災・減災システムの強化、新たな健康サービスの発展、AR/VRの進化による従来の生活様式の変革などでの利用が想定される。実用化に向けては、使用・提供されるデバイスとサービスの多様化と、それぞれの用途に最適化されたエッジAIチップが必要となり、その発展は現状の「汎用チップ」の次に特定用途向けの「DSA(Domain Specific Architecture)べース」へ、最後に「独自のカスタム半導体」へと3段階的に進展していくと考えられる。
現状のカスタム半導体の開発においては、自社の先進的なデバイスやサービスを満たす最適な半導体がない。そのため日本企業においては、スペックやパフォーマンスの引き下げや、デバイスやサービスのローンチタイミングの先延ばしが起こっているケースが多々あると推察される。自社のみでのチップ開発だけでなく、カスタム半導体向けプラットフォームやエコシステムとの連携・参画を通じた取り組みも有効な手段になりうるだろう。
2020年には約100万台のロボットが企業向けに販売され、そのうち半分以上はプロフェッショナルサービスロボットが占めると予測される。プロフェッショナルサービスロボットの販売数の伸びは前年比40%に迫る一方、産業用ロボットの販売数は10%以上の減少になると考えられる。企業支出の観点では、プロフェッショナルサービスロボットの市場が産業用ロボットよりも急速に成長している。5G通信サービスやAIチップの新たな技術開発に後押しされて、プロフェッショナルサービスロボット市場は今後、猛烈な勢いで拡大すると考えられる。
日本の視点
高齢化が進み、労働集約型産業を中心に慢性的な人手不足、人件費上昇、現場の負担増が課題となる中、代替的な「労働力」としてプロフェッショナルサービスロボットに対する期待が高まっている。ただしロボットが日常的に活躍するためには、さまざまな障壁を段階的にクリアしていく必要がある。スマートシティ、5G移行といったインフラレベルでのIoT化が実現された近未来におけるロボットの活用を見据え、企業は今のうちに他社に先駆け事業参入し、サービスロボットへの本質的なニーズの把握やサービス提供方針、パートナーシップ・エコシステム形成、ビジネスモデルのあり方を定期的に見直していくことが求められる。
2020年末までに世界中で1000社以上の企業がローカル5G導入のテストを開始し、全体で数億ドルが人件費と機器に投資されると予測される。その後数年間で、ローカル5Gの設備への支出は急激に増加し、2024年までに、ローカル5Gネットワークで使用されるモバイル機器およびサービスの額は、年間数百億ドルに達する可能性が高い。世界的に多くの大企業が、特に製造工場、物流センター、港湾などの環境において、ローカル5Gを導入すると予想される。
日本の視点
5Gのインパクトとして、「大容量・高速通信」「超低遅延」「同時多接続」等の機能面が着目されやすいが、5G時代の本質的な変化は「ネットワークのソフトウエア化とオープン化」にある。2021年以降に商用化が見込まれる5Gのフェーズ2では、「大容量・高速通信」「超低遅延」「同時多接続」等の特性をソフトウエア制御で組み合わせて提供することで、顧客のニーズに最適化したネットワークサービス提供が可能となる。また、オープン化の観点では、従来、通信キャリアや通信機器ベンダーの垂直統合モデルで提供されていた通信サービスのオープン化が進展し、End-to-Endでのビジネスモデル構築が進むと想定される。ローカル5Gをきっかけとして、いかに早期に短期の事業性と中長期の拡張性を両立した事業モデルを構築するかが肝要になる。
地球規模の衛星ブロードバンドサービスの提供を目的とした低軌道 (low-earth orbit:LEO)衛星は、2019年末の約200基から増加し、2020年末までに1000基を超えると予測している。規模的には世界中のすべてのニーズを満たすには十分ではないものの、2020年の終わりもしくは2021年の初頭には世界の一部地域で衛星ブロードバンドサービスが開始される可能性がある。おそらく当初は地球上の高緯度の地域が対象になるとみられる。
日本の視点
低軌道通信衛星コンステレーションの登場により、従来の静止軌道を活用した衛星通信と比べ、「より低コストで」「高速、かつ低遅延な衛星通信サービスが」「より広範囲に」実現する可能性が開かれつつある。一方で、低軌道コンステレーション構築を巡る市場の動きはまだ不確実性が高く、変化のスピードも目まぐるしい。このような状況において、ビジネスリスクを可能な限り軽減しつつ事業展開を着実に行っていくためには、個社単独での活動より、他社との緩やかな業務提携や、政府支援プログラムへの参画などを通じたPoC/実証実験機会の獲得が現実的と考えられる。
広告型動画配信サービスの収益は、2020年にグローバルで推定300億ドル弱の規模になると予測される。特に市場の半分近くを占めると想定されるアジア(中国とインドを含む)では、手頃な価格の4G接続、低価格のスマートフォン利用を背景に急速に成長した広告型動画配信サービスを通じて、10億人を超える視聴者が無料(または低コスト)でテレビ番組や映画、スポーツを視聴している。特に中国のプレイヤーは、広告型サービスで利用者基盤を確保し、スポーツコンテンツやオリジナルのドラマ等のプレミアムコンテンツによる課金も併用するなど市場拡大の方法を模索している。現在はサブスクリプションモデルが主流の北米市場でも、広告型サービスの市場が拡大する可能性がある。
日本の視点
日本における動画配信サービスは現時点で広く普及しているとは言えない状況であるが、インターネットで映像コンテンツを視聴する習慣は徐々に広がりつつあり、直近では特に放送業界の各事業者によるサービスの立ち上げが本格化している。海外事例では放送事業者自身がデジタルプラットフォーマーへの変革を目指す動きがみられ、日本でもこういった変化が求められるフェーズを迎えている。
放送事業者が動画配信サービスで収益化を実現するためは、広告代理店など関係する他事業者とも連携し、複数の端末での視聴を前提とした新しい視聴指標を業界基準として設定していくことが重要になると考えられる。放送とインターネット配信が一体化する「放送・通信の融合」の加速が見込まれる中、媒体やコンテンツの価値を指標化する設計を行うとともに、媒体価値を高めるためのデータ分析の高度化や、それらを活用したビジネスモデルの再設計が求められるだろう。
世界のオーディオブック市場は、2020年には40億ドル規模に成長すると予測される。オーディオブックだけではなく、ポッドキャストも音声フォーマットとして人気が高まっているが、2020年の世界のポッドキャスト市場は10億ドル弱の規模にとどまると考えられる。オーディオブックやポッドキャストはニッチな位置づけを超えて成長し、独自の市場としての地位を確立しつつある。
日本の視点
海外での音声コンテンツ市場の盛り上がりの一方で、日本では現時点ではまだ目立った動きは見られない。とはいえ音声を扱うコンテンツサービスは広がりを見せており、日本でも従来のラジオ事業者だけでなく様々なプレイヤーが音声コンテンツの開発・制作や配信に関与するようになりつつある。大手プラットフォーマーやコンテンツ企業によって質の高いコンテンツが提供され、日本でも爆発的なヒットが発生すると、日本における音声コンテンツ市場が活性化するだろう。
日本の半導体業界は、微細化減速の影響を受け事業戦略の再考を余儀なくされている状況にある。半導体の集積度向上を目指し、高額な技術投資を行う従来型の最先端プロセスに依存する構造には、一部の大手企業を除いて対応が難しくなっている。一方で、アプリケーションごとに最適化された設計に取り組み、汎用プロセッサを超えるカスタムチップを製造することで、従来の寡占市場から一転して多様なプレイヤーが各社のコア技術を活かして戦える可能性が見えつつある。こうした新たな機会が生まれている業界構造の中で、日系半導体企業がその存在を再び示すためには、断絶された市場をつなぎ、市場そのものを形成するという戦略的視点が必要になる。そのためには、中長期的な半導体市場の変化を見据えながら、半導体エコシステムの中で自社が立つべき事業の立地を見極め、確立するための戦略構築が求められる。
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会であるSociety 5.0が実現に向かっている。その中で、足元を支えるIoT、Cloud、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボティクス、無線通信、コネクテッドカーといった技術やサービスに「新たなサイバー攻撃」が発生し、問題が顕在化しつつある。ネットワークはデバイス、Edge/Access、コア、クラウドといった複数の階層において、フィジカルとサイバーが融合した複雑な構成になっており、そのネットワーク上で様々なサービスが運用されている。ネットワークに対するサイバー攻撃による被害を低減させ攻撃に対峙していくには、個人、組織、そして社会や場合によっては国など各々の関与者が、可能な対策を一つ一つ講じていくことが重要である。
※注意事項
・レポート本文の内容は、グローバル版:2019年10~11月、日本版:2020年2~3月の執筆時点の状況を基に作成しています。2020年4月10日までに確認した追加情報については、訳注・注釈などを追記して対応しています。
・2020年4月にデロイト グローバルがCOVID-19の影響等を踏まえて予測値のアップデートを発表したため、本リリースでは更新後の数値を採用しています。レポート本文では更新値を抄訳ページ下部に追記する形で掲載しています。
デロイト トーマツ グループのテクノロジー・メディア・通信(TMT) インダストリーグループについて
当グループでは、業界に精通したプロフェッショナルがクライアントのニーズに応じて、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています。Deloitteのグローバルネットワークや業界の知見を活用し、クライアントの直面する課題解決や企業価値の向上に貢献します。
デロイト トーマツ グループは、日本最大規模のプロフェッショナルサービスファームとして有する圧倒的な専門性・総合力と、データ・アナリティクスやデジタル・テクノロジーに関する最先端の実践的知見を融合することで、経済社会や産業の将来像を指し示し、その実現に必要とされる経営変革と社会イノベーションを加速させる「経済社会の変革のカタリスト」となることを目指しています。
- エッジAI :多岐にわたる活用が想定される一方、カスタム半導体への対応が問われる
デロイトは、エッジAIチップが2020年に約6億5000万個販売され、収益ベースでは22億ドルの規模に達すると予測している。エッジAIチップの用途としては、消費者向け、企業向けのどちらの市場でも利用が拡大すると考えられる。ハイエンドのスマートフォン、タブレット、スマートスピーカー、ウエアラブル機器など、エッジAIチップを搭載した消費者向けデバイスは今後ますます増加する可能性が高い。また、ロボット、カメラ、センサ、IoT(Internet of Things)デバイスなど、複数の企業向け市場でもエッジAIチップが利用されることになるだろう。
日本の視点
エッジAIの活用方法は多岐にわたり、たとえば都市のスマート化、分散型エネルギーの実現、AIを活用した防災・減災システムの強化、新たな健康サービスの発展、AR/VRの進化による従来の生活様式の変革などでの利用が想定される。実用化に向けては、使用・提供されるデバイスとサービスの多様化と、それぞれの用途に最適化されたエッジAIチップが必要となり、その発展は現状の「汎用チップ」の次に特定用途向けの「DSA(Domain Specific Architecture)べース」へ、最後に「独自のカスタム半導体」へと3段階的に進展していくと考えられる。
現状のカスタム半導体の開発においては、自社の先進的なデバイスやサービスを満たす最適な半導体がない。そのため日本企業においては、スペックやパフォーマンスの引き下げや、デバイスやサービスのローンチタイミングの先延ばしが起こっているケースが多々あると推察される。自社のみでのチップ開発だけでなく、カスタム半導体向けプラットフォームやエコシステムとの連携・参画を通じた取り組みも有効な手段になりうるだろう。
- プロフェッショナルサービスロボット:期待が高い一方、課題も多様な市場
2020年には約100万台のロボットが企業向けに販売され、そのうち半分以上はプロフェッショナルサービスロボットが占めると予測される。プロフェッショナルサービスロボットの販売数の伸びは前年比40%に迫る一方、産業用ロボットの販売数は10%以上の減少になると考えられる。企業支出の観点では、プロフェッショナルサービスロボットの市場が産業用ロボットよりも急速に成長している。5G通信サービスやAIチップの新たな技術開発に後押しされて、プロフェッショナルサービスロボット市場は今後、猛烈な勢いで拡大すると考えられる。
日本の視点
高齢化が進み、労働集約型産業を中心に慢性的な人手不足、人件費上昇、現場の負担増が課題となる中、代替的な「労働力」としてプロフェッショナルサービスロボットに対する期待が高まっている。ただしロボットが日常的に活躍するためには、さまざまな障壁を段階的にクリアしていく必要がある。スマートシティ、5G移行といったインフラレベルでのIoT化が実現された近未来におけるロボットの活用を見据え、企業は今のうちに他社に先駆け事業参入し、サービスロボットへの本質的なニーズの把握やサービス提供方針、パートナーシップ・エコシステム形成、ビジネスモデルのあり方を定期的に見直していくことが求められる。
- ローカル5G:ネットワークのオープン化時代を見据えた向き合い方
2020年末までに世界中で1000社以上の企業がローカル5G導入のテストを開始し、全体で数億ドルが人件費と機器に投資されると予測される。その後数年間で、ローカル5Gの設備への支出は急激に増加し、2024年までに、ローカル5Gネットワークで使用されるモバイル機器およびサービスの額は、年間数百億ドルに達する可能性が高い。世界的に多くの大企業が、特に製造工場、物流センター、港湾などの環境において、ローカル5Gを導入すると予想される。
日本の視点
5Gのインパクトとして、「大容量・高速通信」「超低遅延」「同時多接続」等の機能面が着目されやすいが、5G時代の本質的な変化は「ネットワークのソフトウエア化とオープン化」にある。2021年以降に商用化が見込まれる5Gのフェーズ2では、「大容量・高速通信」「超低遅延」「同時多接続」等の特性をソフトウエア制御で組み合わせて提供することで、顧客のニーズに最適化したネットワークサービス提供が可能となる。また、オープン化の観点では、従来、通信キャリアや通信機器ベンダーの垂直統合モデルで提供されていた通信サービスのオープン化が進展し、End-to-Endでのビジネスモデル構築が進むと想定される。ローカル5Gをきっかけとして、いかに早期に短期の事業性と中長期の拡張性を両立した事業モデルを構築するかが肝要になる。
- 低軌道衛星:メガコンステレーション時代の戦い方
地球規模の衛星ブロードバンドサービスの提供を目的とした低軌道 (low-earth orbit:LEO)衛星は、2019年末の約200基から増加し、2020年末までに1000基を超えると予測している。規模的には世界中のすべてのニーズを満たすには十分ではないものの、2020年の終わりもしくは2021年の初頭には世界の一部地域で衛星ブロードバンドサービスが開始される可能性がある。おそらく当初は地球上の高緯度の地域が対象になるとみられる。
日本の視点
低軌道通信衛星コンステレーションの登場により、従来の静止軌道を活用した衛星通信と比べ、「より低コストで」「高速、かつ低遅延な衛星通信サービスが」「より広範囲に」実現する可能性が開かれつつある。一方で、低軌道コンステレーション構築を巡る市場の動きはまだ不確実性が高く、変化のスピードも目まぐるしい。このような状況において、ビジネスリスクを可能な限り軽減しつつ事業展開を着実に行っていくためには、個社単独での活動より、他社との緩やかな業務提携や、政府支援プログラムへの参画などを通じたPoC/実証実験機会の獲得が現実的と考えられる。
- 広告型動画配信:ビジネスモデルの検討とメディアメジャメントの標準化がポイント
広告型動画配信サービスの収益は、2020年にグローバルで推定300億ドル弱の規模になると予測される。特に市場の半分近くを占めると想定されるアジア(中国とインドを含む)では、手頃な価格の4G接続、低価格のスマートフォン利用を背景に急速に成長した広告型動画配信サービスを通じて、10億人を超える視聴者が無料(または低コスト)でテレビ番組や映画、スポーツを視聴している。特に中国のプレイヤーは、広告型サービスで利用者基盤を確保し、スポーツコンテンツやオリジナルのドラマ等のプレミアムコンテンツによる課金も併用するなど市場拡大の方法を模索している。現在はサブスクリプションモデルが主流の北米市場でも、広告型サービスの市場が拡大する可能性がある。
日本の視点
日本における動画配信サービスは現時点で広く普及しているとは言えない状況であるが、インターネットで映像コンテンツを視聴する習慣は徐々に広がりつつあり、直近では特に放送業界の各事業者によるサービスの立ち上げが本格化している。海外事例では放送事業者自身がデジタルプラットフォーマーへの変革を目指す動きがみられ、日本でもこういった変化が求められるフェーズを迎えている。
放送事業者が動画配信サービスで収益化を実現するためは、広告代理店など関係する他事業者とも連携し、複数の端末での視聴を前提とした新しい視聴指標を業界基準として設定していくことが重要になると考えられる。放送とインターネット配信が一体化する「放送・通信の融合」の加速が見込まれる中、媒体やコンテンツの価値を指標化する設計を行うとともに、媒体価値を高めるためのデータ分析の高度化や、それらを活用したビジネスモデルの再設計が求められるだろう。
- 音声コンテンツ:日本でも海外のような市場拡大の動きが起こるか?
世界のオーディオブック市場は、2020年には40億ドル規模に成長すると予測される。オーディオブックだけではなく、ポッドキャストも音声フォーマットとして人気が高まっているが、2020年の世界のポッドキャスト市場は10億ドル弱の規模にとどまると考えられる。オーディオブックやポッドキャストはニッチな位置づけを超えて成長し、独自の市場としての地位を確立しつつある。
日本の視点
海外での音声コンテンツ市場の盛り上がりの一方で、日本では現時点ではまだ目立った動きは見られない。とはいえ音声を扱うコンテンツサービスは広がりを見せており、日本でも従来のラジオ事業者だけでなく様々なプレイヤーが音声コンテンツの開発・制作や配信に関与するようになりつつある。大手プラットフォーマーやコンテンツ企業によって質の高いコンテンツが提供され、日本でも爆発的なヒットが発生すると、日本における音声コンテンツ市場が活性化するだろう。
- 半導体エコシステム:多様化する半導体ニーズをつなぐエコシステムの形成
日本の半導体業界は、微細化減速の影響を受け事業戦略の再考を余儀なくされている状況にある。半導体の集積度向上を目指し、高額な技術投資を行う従来型の最先端プロセスに依存する構造には、一部の大手企業を除いて対応が難しくなっている。一方で、アプリケーションごとに最適化された設計に取り組み、汎用プロセッサを超えるカスタムチップを製造することで、従来の寡占市場から一転して多様なプレイヤーが各社のコア技術を活かして戦える可能性が見えつつある。こうした新たな機会が生まれている業界構造の中で、日系半導体企業がその存在を再び示すためには、断絶された市場をつなぎ、市場そのものを形成するという戦略的視点が必要になる。そのためには、中長期的な半導体市場の変化を見据えながら、半導体エコシステムの中で自社が立つべき事業の立地を見極め、確立するための戦略構築が求められる。
- サイバーセキュリティ:Society 5.0時代の新たなサイバー攻撃
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会であるSociety 5.0が実現に向かっている。その中で、足元を支えるIoT、Cloud、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボティクス、無線通信、コネクテッドカーといった技術やサービスに「新たなサイバー攻撃」が発生し、問題が顕在化しつつある。ネットワークはデバイス、Edge/Access、コア、クラウドといった複数の階層において、フィジカルとサイバーが融合した複雑な構成になっており、そのネットワーク上で様々なサービスが運用されている。ネットワークに対するサイバー攻撃による被害を低減させ攻撃に対峙していくには、個人、組織、そして社会や場合によっては国など各々の関与者が、可能な対策を一つ一つ講じていくことが重要である。
※注意事項
・レポート本文の内容は、グローバル版:2019年10~11月、日本版:2020年2~3月の執筆時点の状況を基に作成しています。2020年4月10日までに確認した追加情報については、訳注・注釈などを追記して対応しています。
・2020年4月にデロイト グローバルがCOVID-19の影響等を踏まえて予測値のアップデートを発表したため、本リリースでは更新後の数値を採用しています。レポート本文では更新値を抄訳ページ下部に追記する形で掲載しています。
デロイト トーマツ グループのテクノロジー・メディア・通信(TMT) インダストリーグループについて
当グループでは、業界に精通したプロフェッショナルがクライアントのニーズに応じて、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています。Deloitteのグローバルネットワークや業界の知見を活用し、クライアントの直面する課題解決や企業価値の向上に貢献します。
デロイト トーマツ グループは、日本最大規模のプロフェッショナルサービスファームとして有する圧倒的な専門性・総合力と、データ・アナリティクスやデジタル・テクノロジーに関する最先端の実践的知見を融合することで、経済社会や産業の将来像を指し示し、その実現に必要とされる経営変革と社会イノベーションを加速させる「経済社会の変革のカタリスト」となることを目指しています。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザーログイン既に登録済みの方はこちら
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像