人材育成、DX、グローバル、事業承継の4つのテーマで調査!人材育成は限られた予算で実施、DXは進捗遅れ、海外展開は拡大傾向、後継者不足は依然課題。「2025年度 経営者の成長投資アンケート」結果を発表
日本の経営コンサルティングのパイオニアである株式会社タナベコンサルティング(本社:東京都千代田区・大阪市淀川区、代表取締役社長:若松 孝彦)は、全国の企業経営者、役員、経営幹部などを対象に実施した「2025年度 経営者の成長投資アンケート」の結果を発表します。
1.調査結果サマリー
(1) 人材育成投資は「年間1,000万円未満」が6割を超える結果となり、予算確保が課題になっていることがわかりました。また、経営者人材に求めるスキルは「判断力」が最多、次いで「問題解決力」「戦略構築力」となりました。
(2) DXの実行状況を尋ねる設問では、半数近くが「予定より遅れている」と回答。さらに2割は「取り組んでいない」と回答するなど、まだまだ課題が残る結果となりました。
(3) 海外事業を展開している、今後取り組む意向を持つ企業は全体の6割を超える結果に。海外事業戦略を検討・推進する上で優先して取り組むべきテーマは、半数以上が「グローバル人材(事業推進者)の確保」と回答しました。
(4) 事業承継は「親族への承継」が47.8%と最多になるも、非同族へのバトンタッチも増加傾向にありました。さらに、「後継者はいない」との回答は3割超(32.5%)にのぼっており、後継者の選定・育成に課題を抱える企業も依然として多い実態が明らかになりました。
2.各データ詳細(人材育成)
(1)人材育成投資は「年間1,000万円未満」が6割超!予算確保が課題に。

人材育成への年間投資額については、「年間1,000万円未満」が64.4%と最多であり、多くの企業で限られた予算の中で育成施策が運用されている実態が明らかになりました。「年間5,000万円以上」(年間5,000万円以上~1億円未満)(年間1億円以上~5億円未満)と回答した企業はわずか3%で、大規模な育成投資は一部の企業に限られていることがわかります。OJTやOff-JTといった比較的コストのかからない施策が中心となっている背景には、投資余力の乏しさも影響している可能性が高く、育成に対する継続的な資源配分が課題です。
(2)育成強化対象は8割以上が「中堅・リーダー・管理職」と回答。次世代リーダーの育成を重視!

今後の人材育成の強化対象として、「中堅・リーダー社員」(80.7%)や「管理職人材」(65.9%)が特に多く挙げられました。こうした層に育成投資が集中する背景には、将来の経営・変革を担う“次世代リーダー”の育成ニーズが高まっていることがうかがえます。
(3)経営者人材に求めるスキルは「判断力」が最多、次いで「問題解決力」「戦略構築力」。

経営者人材に求めるスキルとしては、「判断力(74.1%)」「問題解決力(73.3%)」「戦略構築力(67.4%)」といった、論理的かつ複雑な意思決定を担う能力が上位を占めました。これに続き、「指導力」や「対話力」(いずれも60.0%)といった対人面でのリーダーシップも重視されています。
一方で、「事業革新力(36.3%)」など、変化への対応や新たな価値創出に直結する項目は相対的に低く、企業が経営者に対して「現状を維持しつつ、冷静に物事を判断し、組織を着実に動かすこと」をより重視している傾向が読み取れます。この背景には、不確実性の高まる経営環境において、急激な変革よりも安定的な運営を優先したいという企業の意識があると考えられます。
3.各データ詳細(DX)
(1)6割超がDXビジョンやDX戦略を「策定していない」と回答!

DXビジョンやDX戦略を「策定している」と回答した企業は全体の38.8%にとどまり、61.2%は「策定していない」と回答しました。多くの企業がDXの必要性を感じながらも、明確な方針や中長期の設計が定まらないまま手探りで進めている現状が浮かび上がります。背景には、DXに対する理解不足や、全社的な方向性を描くための人材・ノウハウの不足があると考えられます。戦略なきDXが、後述の「実行の遅れ」にもつながっている可能性が高いです。
(2)DXの実行状況は約半数が「予定より遅れている」と回答。さらに約2割は「取り組んでいない」。

DXの進捗状況について、「計画通りに進行している」との回答は32.1%にとどまり、「予定より遅れている」が48.8%と最多となりました。また「取り組んでいない」との回答も2割弱(19.1%)存在します。前項でビジョンや戦略を策定していない企業が多いことを踏まえると、DX推進が場当たり的になっていることが推察されます。
(3)基幹システムへの投資金額は5,000万円未満が6割超、今後も同水準で推移する見通し。

現在の基幹システムへの投資金額として、最多は「1,000万円~5,000万円」(39.7%)であり、「1,000万円未満」(23.9%)を合わせると、全体の63.6%が5,000万円未満にとどまっていることがわかりました。一方で、1億円以上を投資している企業は14.8%にとどまり、投資規模が限定的である実態が明らかになりました。
今後の投資予算についても、「1,000万円~5,000万円」が最多(33.0%)で、「1,000万円未満」(20.6%)を合わせた割合は53.6%となっています。現状よりやや抑制傾向ではあるものの、大きな増加や縮小の兆しは見られません。一方で、「不明」との回答が20.6%にのぼっており、基幹システム投資の意思決定プロセスが不透明な企業も一定数存在していることがわかりました。
4.各データ詳細(グローバル)※2025年6月12日配信のプレスリリースで同内容を発信しています。
(1)海外事業を展開している、今後取り組む意向を持つ企業は全体の6割を超える結果に。

海外事業を展開している、あるいは今後取り組む意向を持つ企業は全体の6割を超えており、一定の広がりを見せています。実際に「展開している」と回答した企業は43.2%、「現在は展開していないが、今後取り組みを検討中」と回答した企業は18.3%となり、前向きな姿勢がうかがえます。一方で、「今後も取り組む予定はない」とする企業は38.5%存在しており、海外展開に対する関心や取り組み状況には企業間で開きがあるのが現状です。
(2)優先して取り組むべきテーマは「グローバル人材(事業推進者)の確保」が半数以上と最多!

海外事業戦略を検討・推進する上で優先的に取り組むべきテーマは、「グローバル人材(事業推進者)の確保」(52.1%)が最多に。前年(60.2%)からやや減少したものの、引き続き最重要課題として位置づけられています。次いで、「現地パートナー・アライアンス先の開拓」(46.6%)となり、現地での営業・調達・流通などにおいて外部パートナーとの連携を深める必要性は、海外事業の現実的な推進手段として認識されていることがうかがえます。
一方で、2024年度には上位を占めていた「各国の規制や法制度、商慣習への対応」(2024年度52.8%)や「グローバル市場の理解」(2024年度52.2%)が、2025年度にはそれぞれ34.2%、23.3%へと大きく減少しました。制度理解や市場リサーチといった前提作業がある程度進んだ企業が増え、実行段階へシフトしていることが背景にあると考えられます。また、「グローバル市場での認知度の向上」(21.9%)、「地政学的リスクに対応するサプライチェーン/物流網の構築」(11.0%)、「事業・組織のローカライズ」(11.0%)といった項目も、前年から大きく低下。テーマの優先順位が“環境整備”から“パートナーの確保”へと変化している様子がうかがえます。
5.各データ詳細(事業承継)
(1)事業承継は「親族への承継」が最多。また、3割以上の企業が「後継者はいない」と回答!

事業承継のあり方については、「親族への承継」が47.8%と最多ですが、「役員・社員への承継」も39.5%と高く、非同族へのバトンタッチを選択肢とする企業も増えています。実際に後継者の状況を尋ねたところ、「非同族の後継者がいる」(22.9%)、「同族のご子息・息女はいるが、後継予定はない」(5.1%)といった回答が合わせて約3割に達しており、一定数が非同族承継を検討している様子がうかがえます。これに対し、「後継者はいない」との回答も3割超(32.5%)にのぼっており、後継者の選定・育成に課題を抱える企業も依然として多い実態が明らかになりました。
6.総括・提言
(1)「構想なき投資」から脱却し、未来志向のビジョンを明確にする
多くの企業で「人材を育てたい」「デジタル化を進めたい」という思いはあるものの、その先のビジョンが曖昧なまま施策に着手しているケースが見られます。投資を有効に機能させるためには、「どのような組織を目指し、どのような人材や仕組みが必要なのか」を中長期的な視点で言語化することが不可欠です。ビジョンの不在は、施策の場当たり化や属人化を招き、組織全体の方向性を曇らせる原因となります。まずは経営の根幹にある価値観や目的を再定義し、「なぜ今、何に投資するのか」を明確にすることが第一歩です。
(2)「属人的運用」から「仕組みによる再現性」へ転換する
変化の時代において、持続可能な組織づくりには“個の力量”ではなく“組織としての再現性”が求められます。経営幹部や次世代リーダーの育成・登用、そして外部との連携や再編を推進するにあたっては、個人に属する知見を仕組み化し、計画的に運用する仕掛けが必要です。属人的な意思決定を補完する「プロセスの整備」と「人材の可視化」が、経営の安定と拡張性を高める鍵となります。
(3)「短期成果」だけでなく「未来をつくる行動」を評価に組み込む
役員や経営幹部の評価軸は「企業業績」や「戦略実行力」といった短期成果に偏重しがちですが、後の成長に向けては、「後継者の育成」や「サステナビリティ対応」など、中長期視点の取り組みを正しく評価し、称賛する文化が必要です。未来をつくる行動にこそ評価が与えられる仕組みを構築することで、経営層のマインドと行動は変わります。経営者自身が“どの行動に価値を見出すか”を明示することが、次の世代への最大のメッセージとなります。
(4)「国内完結」から「外部との共創」へ。経営資源をシフトする
グローバル展開やM&Aといった“外に開かれた投資”は、拡大傾向にあるものの、未だ一部の企業にとどまり、全体としては慎重な姿勢が見られます。しかし、人材確保、事業拡大、市場対応といった経営課題の多くは、自社単独では解決が難しくなっています。今後の成長には、外部パートナーや他企業との“共創による成長”が欠かせません。アライアンスやグローバル化を「選ばれた企業だけの戦略」ではなく、「資源の再配分先」として日常的に経営に組み込むことが必要です。
〈総括・提言 執筆者プロフィール〉

株式会社タナベコンサルティング エグゼクティブパートナー
戦略総合研究所 本部長 細江 一樹
大学卒業後、商社の企画営業を経て、当社に入社。大阪本社と北海道支社にて、地域の大企業から中堅企業のコンサルティングに従事。特に、学校・教育業界における経営改革やマネジメントシステム構築を強みとしており、大学、専門学校、高等学校、こども園などにおいて、経営改革の実績を持つ。 また、専門としてHR分野に強く、「人事制度で人を育てる」をモットーに、制度構築を通じた人材育成はもちろんのこと、高齢者・女性の活躍を推進する制度の導入などを通じ、社員総活躍の場を広げるコンサルティングでも高い評価を得ている。
7.調査概要
(1)人材育成

[調査期間]
2025年4月7日~2025年4月25日
[調査エリア]
全国
[有効回答数]
計135件
(2)DX

[調査期間]
2025年1月15日~2025年4月25日
[調査エリア]
全国
[有効回答数]
計209件
(3)グローバル
※グローバルの結果のみ、2025年6月12日配信のプレスリリースで同内容を発信しております。

[調査期間]
2025年3月3日~2025年3月31日
[調査エリア]
全国
[有効回答数]
計169件
(4)事業承継

[調査期間]
2025年2月3日~2025年4月25日
[調査エリア]
全国
[有効回答数]
157件
※各図表の構成比(%)は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
タナベコンサルティンググループ(TCG)について
TCGは、1957年創業の東証プライム市場に上場する日本の経営コンサルティングのパイオニアです。「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」という経営理念のもと、未来の社会に向けた貢献価値として「その決断を、愛でささえる、世界を変える。」というパーパスを掲げております。ピースマインドとの資本業務提携により、グループ8社、約900名のプロフェッショナル人材を有する経営コンサルティンググループとなりました。国内外の中堅企業を中心とした大企業から中規模企業のトップマネジメント(経営者層)を主要顧客とし、創業以来18,900社以上の支援実績を有しております。
トップマネジメントアプローチで経営戦略の策定からプロフェッショナルDXサービスによる経営オペレーションの実装・実行まで、経営の上流から下流までを一気通貫で支援する唯一無二の経営コンサルティングモデル「チームコンサルティング」を国内地域密着のみならず、グローバルへと展開しております。

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