台湾文化センター 台湾映画上映会『ミルクティーを待ちながら』ジャン・フーホア監督 × 田中伶(Howto Taiwan編集長)トークイベントレポート
「台湾文化センター 台湾映画上映会2024」映画『ミルクティーを待ちながら』上映会トークイベントが、8月25日(日)に台北駐日経済文化代表処台湾文化センターにて開催された。原作は累計100万部を突破し、2年連続でベストセラーランキング第一位となった大人気インターネット小説「一杯熱奶茶的等待」。約20年の時を経て、著者のジャン・フーホアが自らの脚本・監督で映画化し、主役のエレン・ウーを始め、アイドルグループSpeXialの元メンバーのサイモン・リアン、アレックス チョウらの出演で注目された。国内では「あいち国際女性映画祭2024」(9月5日より開催)での上映も決まった話題作だ。
上映後に、ジャン・フーホア監督がオンラインで登壇し、今よりもっと台湾が好きになるWEBメディア「How to Taiwan」編集長の田中伶さんが会場に登壇してトークイベントが開催された。
バレンタインの夜に差し出された、あたたかなミルクティー。
傷ついた心が再生していく姿を描いた感動作の監督は、宮藤官九郎ドラマの大ファン!
「こんなに寒そうな台湾を映画で観るのは、はじめて!」と、まずは田中さんが南国の台湾のイメージを覆う、バレンタインの夜からはじまる本作の感想を述べた。そして「予告編を観た時は、胸キュントキメキラブストーリーと思ったのですが、心に傷を抱えたひとたちの再生の物語が描かれていた」ことに驚いたという。
ジャン監督が原作の小説を書いたのは、2001年で大学4年生の時だったという。これまでも映像化のオファーはいくつかあったが、なかなかGOサインを出す決断ができなかった中、「この小説の登場人物たちはつらい過去を抱え、何かがおこること、誰かが来ることを待っています。コロナ禍で世界中がストップしてしまった時、みんなが何かを待ちわびている状態になりました。困難な中であたたかな気持ちを届けたいという思いを込めた『ミルクティーを待ちながら』を、いまこそ映画化すべきだと思ったんです」と、ジャン監督が映画化を決めたきっかけを話した。ジャン監督は原作となった小説を取り出すと、「この分量の小説のすべてのエピソードは映画に織り込むことが不可能でした。なので映画化にあたっては、いかにつらい過去があってもそれをどう乗り越えるか、その過程を描くことに注力した」と、映画化の苦労を語った。
心に傷を負った登場人物を演じた、俳優陣たちも話題の本作。「主人公を演じたエレン・ウーさんと、ジャン監督は雰囲気がそっくり!」とキュレーターのリム・カーワイが話すと、「エレンさんとはじめて会ったとき、彼女は家族のことで悲しいことがあり、どこか心に悲しみを抱えているように見えたんです。それがヒロインと重なってオファーしました。」と、ジャン監督は照れながらも、キャスティングの決め手になったエピソードを披露した。アイドルグループSpeXialの元メンバーのサイモン・リアンは本作が映画初出演で、悲しみを抱えながらいつも笑顔を絶やさないという難役に挑むことになったが、役柄について監督と話し合いながら作りあげていくことができたという。
自分の経験を散りばめて小説を書いたというジャン監督は、「ミルクティーはあたたかくてあまくて、しあわせな気持ちにしてくれますよね。私は落ち込んでいたひとに、ミルクティーを渡したことがあるんです。その人をはげましたくてミルクティーを渡したのですが、そのことで私の心もあたたかくなりました。何か悲しいことが起きた時、自分の心をどういたわっていくかというのは大事なことです。」と、あたたかなミルクティーに秘められた思いを語った。
会場から好きな日本のドラマや映画は何かと問われると、「日本のドラマや映画は大好きで、特に宮藤官九郎さんのドラマ、そして映画だと北野武監督が大好きです!」とジャン監督が答えると、会場から「テイストが全然ちがう!」と驚きの声が上がった。「『ミルクティーを待ちながら』から20数年が経ち感情表現もいろいろ変化してきました。いまは脚本家の仕事が多いんですが、最近の私のスタイルは宮藤官九郎さんに近いテイストで、本作だけしか観ていないと意外かもしれませんね(笑)」とほほ笑んだ。
最後に台湾映画の魅力について問われると、「私は普段からメディアを通して台湾の魅力を発信していますが、台湾が大好き、台湾旅行、ひとも大好きです。台湾映画からは、台湾の文化や習慣をリアルに知ることができます。『ミルクティーを待ちながら』からも台湾のひとがバレンタインにかける情熱がすごいと知ることができます。映画をみて、ロケ地にいってみたいと思うこともあります。映画をみて台湾に行きたくなる、台湾に行ってまた映画が観たくなる、両方向での楽しみがあるのが、台湾映画の魅力のひとつだと思っています。」と、田中さんが語った。
「台湾、台湾のひと、映画の魅力はその寛容さにあります。どんなひとでも受け入れられる、そして理解しようとする雰囲気が映画からも伝わってくると思います。」とジャン監督が話すと、会場からあたたかな拍手に包まれた。
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