株式会社CICS(リゾートトラスト株式会社の連結子会社)が協力した再発乳がんを対象としたBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の特定臨床研究終了のお知らせ
リゾートトラスト株式会社の連結子会社である株式会社CICS(代表取締役社長:古川哲也、本社:東京都江東区、以下「CICS」)はBNCT(Boron Neutron Capture Therapy:ホウ素中性子捕捉療法)用中性子捕捉治療装置に関する技術提供を通じて、社会福祉法人仁生社 江戸川病院(東京都江戸川区)が実施する再発乳がんを対象とした研究者主導の特定臨床研究※1(以下「本研究」)に協力しました。本研究に関する終了届書が提出されましたのでお知らせします。
※1 臨床研究について
「臨床研究」は「医薬品等を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究(治験に該当するものその他厚生労働省令で定めるものを除く。)」と臨床研究法で定められています。
「特定臨床研究」は臨床研究のうち、医薬品等製造販売業者又はその特殊関係者(=子会社)から研究資金等の提供を受けて実施する臨床研究(当該事業者が製造販売をし、又はしようとする医薬品等を用いるものに限る)や未承認又は適応外の医薬品等を用いる臨床研究を指します。(厚生労働省「臨床研究法について」)
本研究は、再発乳がんの患者様で放射線治療を受けた後に腫瘍の再発を認めた患者様を対象に、BNCTの安全性と有効性を評価することを目的としていました。江戸川病院には、CICSが開発を進めている加速器型中性子捕捉治療装置(以下「本装置」)が導入されており、本研究では、本装置とステラファーマ株式会社(大阪市中央区、以下「ステラファーマ」)のBNCT用ホウ素薬剤を組み合わせて使用されました。
本研究では、安全性を主要評価項目としましたが、本装置や薬剤と因果関係のある重篤な副作用などは認められず、高い安全性が確認されました。また、有効性では奏効率※2が80%(5例中4例が奏効)、3例では腫瘍縮小率が50%以上となりました。
※2 奏効率について
奏効率とは治療の効果を評価する際に用いられる指標で、臨床研究で治療を受けた症例のうち、部分奏功(治療開始時より腫瘍が全体の30%以上縮小した状態)、または完全奏功(腫瘍が完全に消失し、検査で腫瘍が確認できない状態)となった症例の割合を表します。
放射線治療を行った後に再発した乳がんでは外科的手術ができないこともあり、通常の放射線治療では同じ部位に再度放射線治療を行うことはできません。放射線治療後の温存乳房内再発や局所再発の多くには乳房全切除術が行われますが、乳房全切除を希望されない患者様や全切除により身体的・精神的QOLが低下する患者様もおり、また、遠隔転移を有する患者様であっても身体への負担軽減のために局所制御目的の治療ニーズも高いと考えられます。そのため、今回得られた結果からBNCTが放射線治療後の再発乳がんの患者様にとって、新たな治療の選択肢になると期待されます。なお、本件に関する今期当社連結業績への影響は、軽微です。
リゾートトラストグループは1994年にメディカル事業に参入し、会員制総合メディカル倶楽部の運営を開始しました。山中湖クリニックにて当時研究用装置であった陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography、以下「PET」)をがん検診に導入し、国内のPET普及に大きく貢献しました。現在は、検診はもちろん、治療におけるソリューションを拡大し、がん先端免疫治療の施設も運営支援しています。「ご一緒します、いい人生」というブランド・アイデンティティのもと、「人生100年時代の健康長寿、パーソナル・ウェルビーイングへの貢献」をスローガンに掲げています。また、「がんで大切な人を亡くさない社会を作りたい」という思いから、がん検診・治療に関わってまいりました。BNCTへの取り組みを通じて、より豊かでしあわせな時間(とき)を創造するお手伝いをするとともに、アジア全域を視野に入れた日本国内外において、がん治療に新たな光をもたらしていきたいと考えています。
【BNCTについて】
BNCTは放射線治療の一種であり、新しいがんの治療方法です。患者様にホウ素薬剤を投与すると、ホウ素(10B)ががん細胞に集まります。その後、患部に体外から中性子線を照射します。照射する中性子線は、非常にエネルギーが小さく、人体への影響はほとんどありませんが、ホウ素(10B)とぶつかると核反応を起こし、放射線(アルファ線と7Li核)が発生します。BNCTは、この放射線によってがん細胞を選択的に破壊する治療法です。また、原則1回の中性子線の照射で治療が完了し、体への負担が少ない治療法として期待されています。

【CICSの照射装置について】
CICS が開発した加速器型の中性子捕捉治療装置です。RFQ(高周波四重極)直線加速器で加速した陽子をリチウムターゲットに衝突させることで中性子を生成するもので、人体への悪影響の大きい高速中性子の混在が少ないことが特徴です。また生成する中性子のエネルギーが800keV以下と低いため、BNCTに適した10keV程度のエネルギーに減速するための減速体系の小型化が可能となりました。
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