台湾文化センター 台湾映画上映会『ニューヨーク協奏曲』トークイベントレポート
ビビアン・ソン、香港の人気グループMIRRORギョン・トウ出演の話題作!ユー・シェンイー監督×藤井道人監督(映画『青春18×2 君へと続く道』)トークイベント開催‼
「台湾文化センター 台湾映画上映会2024」映画『ニューヨーク協奏曲』上映会トークイベントが、9月25日(水)に台北駐日経済文化代表処台湾文化センターにて開催された。ニューヨークに暮らす3組の台湾人たちを描いたオムニバス映画で、『私の少女時代-OUR TIMES-』『赤い糸 輪廻のひみつ』などで知られるビビアン・ソンや、香港の人気グループMIRRORのギョン・トウが出演した話題作だ。本作の舞台となったニューヨークに在住する監督のユー・シェンイーは、長編デビュー作となる本作が香港でロングランを記録し、一気に注目の監督となった。
上映後に、ユー・シェンイー監督がオンラインで登壇し、日台合作映画『青春18×2 君へと続く道』が台湾、日本にて大ヒットした、今最も動向が注目されている映画監督の藤井道人さんが会場に登壇してトークイベントが開催された。
藤井道人監督が絶賛する、ニューヨークに暮らす人々の息遣いが伝わってくるオムニバス映画。
ニューヨークを拠点に活動するユー・シェンイー監督が語る、台湾映画のヒューマニズムとは─
「『ニューヨーク協奏曲』がはじめて日本で上映される日に、観客の皆さんと交流できることがとてもうれしいです。」と、まだ早朝のニューヨークからユー・シェンイー監督がオンラインで登場すると、会場から大きな拍手がおきた。「3つのストーリーがニューヨークの街に溶け込んでいて、その街で生活しているひとたちの息遣いがドキュメンタリータッチに描かれていて感銘を受けました。ユー監督がニューヨークに長く暮らしているからこそ描けたストーリーだと思う」と、藤井道人監督が感想を述べた。「ニューヨークで暮らす台湾人描く上で、母国語ではない演技が必要だったり、どういう人物設計をしていったのか」が気になったという藤井監督が、ユー監督に脚本と人物設計について質問すると、「私は20数年ニューヨークで暮らしています。ニューヨークで映画の勉強をはじめた頃、通訳の仕事をした経験もあります。ある時にふと、通訳という仕事は多くの人と繋がることができるので、ニューヨークで暮らす人々を様々な角度から描くことができるのではないかと思いました。ニューヨークで暮らす移民のひとたちのリアルな姿を、自分と身近なひとたちの経験から着想を得て作っていきました」と、自分の経験があったからこそ生み出せたリアルな演出に繋がったと述べた。
実は4歳までニューヨークで暮らし、祖父が台湾にルーツをもっている藤井監督は、「実は主演のビビアン・ソンさんとは台湾で知り合って、いまもメル友なんです。」と、『ニューヨーク協奏曲』のトークイベントに呼ばれたことにつよいご縁を感じたという。「ニューヨークで通訳として働く女性の役を演じたビビアンさんの英語の演技が特に素晴らしかった。」と藤井監督が絶賛すると、「ビビアン・ソンは元々好きな俳優で、是非主人公を演じてもらいたいとオファーしました。2つ目のエピソードで、ニューヨークでダンサーを目指す青年の役は、なかなか決まらずにいたところ、プロデューサーから香港の人気グループMIRRORのギョン・トウを推薦されたんです。私は彼のことを知らなかったんですが、演技もダンスも素晴らしくすぐに起用を決めました。」と、人気俳優たちの起用についてユー監督が語った。キュレーターのリム・カーワイが、「香港人であるギョン・トウが、違和感なく台湾人を演じていたのにも驚きました。今日は会場にも、彼のファンが多く来ていますね!」と語ると、さっそく会場から「ギョン・トウ演じる青年のダンスも素晴らしかったですが、ニューヨークの街で自転車に乗るときだけ、とてもぎこちなかったのは演出ですか?」と、ギョン・トウファンからの質問が飛び出した。「相手役の女の子が自転車が苦手で、それにあわせて彼はゆっくり自転車をこいでいました。だから不安定にみえたのかも!彼はダンスと同じように、自転車もとても得意でした(笑)」と、ユー監督が語ると、会場は笑いに包まれた。
『ニューヨーク協奏曲』は3つのストーリーが、複雑に絡み合い、ニューヨークに暮らす台湾人たちの心情が描かれていくが、その重要な舞台として地下鉄が登場する。地下鉄を舞台に選んだことを観客から問われると、「地下鉄はニューヨークの市民にとって、重要な交通機関で大動脈。毎日乗るもの。ニューヨークに来たばかりの人は地下鉄の乗り方を勉強するところからはじまるくらいです。そして地下鉄は、とてもうるさくて雑音がある。その雑音の中に、よろこびやつらさなど様々な感情があると思った。」と、ニューヨークに暮らすユー監督だからこそのロケ地選びが明かされた。「日本での撮影は制約が多く、許可申請などが大変。台湾では政府の方が撮影に協力的で、とても撮影しやすかった。ニューヨークの撮影は制約が多いのでは?」と、日台での撮影経験がある藤井監督が問うと、「ニューヨークも撮影申請は大変ですが、地下鉄に関してはドキュメンタリータッチに撮影しました(笑)。私もスタッフもニューヨークの撮影には慣れているので、なるべく許可がとりやすい場所を選びながら進めました」と、ユー監督が撮影の苦労を語った。
原題『我的天堂城市(英題:My Heavenly City)』は、直訳すると「天国のような街」という意味になり、監督はタイトルにどういう意味をこめたのかとの問いに、「ニューヨークについたばかりのとき、すべてがとても大きく感じた。多くのひとがいて、多くの階層のひとが混在していて、ニューヨークで暮らすということは様々な苦労がある。それと同時に、夢を追い求めることができる街でもある。最高と最低、天国と地獄が共存した場所でもある。ニューヨークが「天国」なのかはわからないが、この街はひとによって捉え方がちがうと思っている」とし、「今回、日本で上映されるにあたってつけられた、『ニューヨーク協奏曲』という邦題を聞いて、映画にぴったりですてきなタイトルだと思いました!」と、タイトルにこめた思いをユー監督が語った。
最後に台湾映画の魅力について問われると、「台湾映画には言葉にならないあったかさを感じます。ホウ・シャオシェン監督、エドワード・ヤン監督の作品が好きで、いつかこの街の映画館に行ってみたいと思ったりしているうちに、台湾映画にのめりこんでいった。そして昨年、台湾の仲間たちと映画『青春18×2 君へと続く道』を作りました。いまの台湾の若手作家たちは台湾映画という枠からでて、自分たちのアジアの映画を目指して、新しい台湾映画の時代を作ろうとしている。ユー監督もニューヨークで映画を勉強してニューヨークから、自分たちの台湾映画、アジア映画を作ろうとしている。そういう彼らの姿は、自分の隣の街の友人をみているようで、自分に元気をくれる、兄弟のような存在だと感じています」と、藤井監督が述べた。「私もホウ・シャオシェン監督、エドワード・ヤン監督をみて育ち、彼らの大ファンです。台湾映画はヒューマニズムというものが普遍的なテーマとして描かれていると思います。いまの台湾の若い作家たちは多様なジャンルの作品に取り組んでいますが、その中にも伝統としてヒューマニズムが描かれていると感じています。」と、ユー監督が語ると、会場からは大きな拍手がおきた。
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