【国立科学博物館】イモリダニ亜属のダニ4新種を発見 〜握る手のような触肢を発達させて、有毒イモリの体表に寄生する〜
独立行政法人国立科学博物館(館長:篠田謙一)は法政大学(総長:廣瀬克哉)他との共同研究により、中国に生息するフトイモリ属Pachytritonの1種と、コブイモリ属Paramesotritonの2種の体表に寄生するイモリダニ亜属Lurchibatesの4新種を記載した。
イモリダニ亜属は汎世界的に分布するミズダニ属Hygrobatesの1グループで、ミズダニは2002年に最初に見つかって以来、今回の新種を加えて11種となった。
・中国に生息するフトイモリ属Pachytritonの1種と、コブイモリ属Paramesotritonの2種の体表に寄生するイモリダニ亜属Lurchibatesの4新種を記載した。
・4新種を含むイモリダニ亜属11種の詳細な形態形質の検討を行い分類学的整理をした。
・ダニはそれぞれ決まった種に寄生する一対一の対応関係がみられていたが、今回初めて宿主イモリも寄生ダニも互いに複数種との関係を持つ種が存在することが確認された。
・イモリダニはイモリとの共種分化だけではなく、宿主転換も行ってきたことが容易に予想され、今後の分子系統関係の比較解析が待たれる。
1.当研究を行う背景
イモリダニ亜属は、約150種を含み汎世界的に分布するオヨギダニ属Hygrobates(ミズダニ類)の1グループで、東~東南アジアに分布するイモリ科の3属の体表や口腔内に寄生する。両生類に寄生するミズダニは珍しい。他のオヨギダニ属は幼虫が昆虫に寄生し、成虫は自由生活捕食性として過ごすが、本亜属はイモリの体表で一生をすごす。また、特殊な触肢をイモリの皮膚に食い込ませて身体を固定し、長い鋏角を持ちイモリの皮膚を切り裂いて寄生するというきわめて特殊な生態を持つ。テトロドトキシンというフグも持つ強毒を皮膚などに有するイモリに寄生することで、これらのダニは外敵から身を守るなど何らかの利益も得ていると考えられている。近年宿主であるイモリも各地で種分化していることがわかり、それに寄生するイモリダニもまた多くの未記載種がいることが予想されていた。
2.研究手法
4新種に加えて既知種についても詳細な検討を行い、雌雄での形態差を比較できる形で記載を行った。34の形態形質を用いた多変量解析や、超並列シークエンサーと28S rRNA部分配列による系統解析も用いることでそれぞれの種の評価を行い、イモリダニ亜属の分類学的整理を行った。
3.研究成果と今後の展開
4新種を含むイモリダニ亜属11種の詳細な形態形質の検討により、系統関係を考慮した形態形質による種の同定が可能となった。多くの標本を元にしたこの研究の結果、イモリダニの宿主との関係はより緩やかなものであることが推定された。イモリダニはイモリとの共種分化だけではなく、宿主転換も行ってきたことは間違いなく、今後の分子系統関係の比較解析が待たれる。
イモリダニの生活史や生態に関する野外調査も行うことで、どうしてアジアでのみこのようなイモリとダニの寄生関係が進化したのか、そのことでダニの種分化は促進されたのかなど、様々な疑問に答えていき、最終的には彼らの進化史の全体像の解明が期待される。
書誌情報:
Goldschmidt, T., K. Nishikawa, S. F. Hiruta, T. Pfingstl, J.-P. Jiang, and S. Shimano. 2021. Systematics, distribution and morphology of the newt parasitic water mites of the subgenus Lurchibates Goldschmidt & Fu, 2011 (Acari, Hydrachnidia, Hygrobatidae, Hygrobates Koch, 1837), including the description of four new species and a key to all so far known species. Zootaxa 4985(1):1–36. (doi: 10.11646/zootaxa.4985.1.1)
国立科学博物館:https://www.kahaku.go.jp/
国立科学博物館 筑波研究施設:https://www.kahaku.go.jp/institution/tsukuba/
イモリダニ亜属は汎世界的に分布するミズダニ属Hygrobatesの1グループで、ミズダニは2002年に最初に見つかって以来、今回の新種を加えて11種となった。
- 研究のポイント
・中国に生息するフトイモリ属Pachytritonの1種と、コブイモリ属Paramesotritonの2種の体表に寄生するイモリダニ亜属Lurchibatesの4新種を記載した。
・4新種を含むイモリダニ亜属11種の詳細な形態形質の検討を行い分類学的整理をした。
・ダニはそれぞれ決まった種に寄生する一対一の対応関係がみられていたが、今回初めて宿主イモリも寄生ダニも互いに複数種との関係を持つ種が存在することが確認された。
・イモリダニはイモリとの共種分化だけではなく、宿主転換も行ってきたことが容易に予想され、今後の分子系統関係の比較解析が待たれる。
1.当研究を行う背景
イモリダニ亜属は、約150種を含み汎世界的に分布するオヨギダニ属Hygrobates(ミズダニ類)の1グループで、東~東南アジアに分布するイモリ科の3属の体表や口腔内に寄生する。両生類に寄生するミズダニは珍しい。他のオヨギダニ属は幼虫が昆虫に寄生し、成虫は自由生活捕食性として過ごすが、本亜属はイモリの体表で一生をすごす。また、特殊な触肢をイモリの皮膚に食い込ませて身体を固定し、長い鋏角を持ちイモリの皮膚を切り裂いて寄生するというきわめて特殊な生態を持つ。テトロドトキシンというフグも持つ強毒を皮膚などに有するイモリに寄生することで、これらのダニは外敵から身を守るなど何らかの利益も得ていると考えられている。近年宿主であるイモリも各地で種分化していることがわかり、それに寄生するイモリダニもまた多くの未記載種がいることが予想されていた。
2.研究手法
4新種に加えて既知種についても詳細な検討を行い、雌雄での形態差を比較できる形で記載を行った。34の形態形質を用いた多変量解析や、超並列シークエンサーと28S rRNA部分配列による系統解析も用いることでそれぞれの種の評価を行い、イモリダニ亜属の分類学的整理を行った。
3.研究成果と今後の展開
4新種を含むイモリダニ亜属11種の詳細な形態形質の検討により、系統関係を考慮した形態形質による種の同定が可能となった。多くの標本を元にしたこの研究の結果、イモリダニの宿主との関係はより緩やかなものであることが推定された。イモリダニはイモリとの共種分化だけではなく、宿主転換も行ってきたことは間違いなく、今後の分子系統関係の比較解析が待たれる。
イモリダニの生活史や生態に関する野外調査も行うことで、どうしてアジアでのみこのようなイモリとダニの寄生関係が進化したのか、そのことでダニの種分化は促進されたのかなど、様々な疑問に答えていき、最終的には彼らの進化史の全体像の解明が期待される。
書誌情報:
Goldschmidt, T., K. Nishikawa, S. F. Hiruta, T. Pfingstl, J.-P. Jiang, and S. Shimano. 2021. Systematics, distribution and morphology of the newt parasitic water mites of the subgenus Lurchibates Goldschmidt & Fu, 2011 (Acari, Hydrachnidia, Hygrobatidae, Hygrobates Koch, 1837), including the description of four new species and a key to all so far known species. Zootaxa 4985(1):1–36. (doi: 10.11646/zootaxa.4985.1.1)
国立科学博物館:https://www.kahaku.go.jp/
国立科学博物館 筑波研究施設:https://www.kahaku.go.jp/institution/tsukuba/
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