イエメン:包囲地域への医療援助物資の搬入が不可能に
紛争が続くイエメンでは、南部の都市タイズにある反体制派の包囲地域で、医療物資の搬入が阻止される状態が続いている。国境なき医師団(MSF)は過去数週間に及び、武装組織「フーシ派」高官と集中協議を行ったが、その甲斐なく、タイズ市の飛び地にある2軒の病院に必須医療物資を届けられないでいる。10月25日の時点でも、MSFのトラックはフーシ派の検問所で止められ、地域に入ることを拒否された。MSFは全紛争当事者に対し、医療・人道援助物資の全域への搬入を許可するとともに、全ての傷病者が医療機関にアクセスできるようにし、国際人道法とイエメンの伝統に則って医療インフラと医療スタッフを保護するように呼びかけている。
救命治療に必要な物資
必須医療物資の搬入を妨げられている包囲地域内の病院には、紛争による負傷者が大勢来院している。物資の中身は胸腔ドレーンチューブ、麻酔薬、点滴剤、縫合糸や抗生剤などで、命を救う手術を行うためのもの。
イエメンでMSFの緊急対応コーディネーターを務めたカルリーネ・クレイエルは「この地域で今も続いている戦闘の被害者に公平な医療援助を行う必要があることをフーシ派高官に説得しようと試みました。しかし数週間にわたる協議を通じても、またMSFがフーシ派の支配地域にある医療機関を継続的に支援してきたにも関わらず、説得が全く前進しなかったのは実に悔しいことです」と話す。
生活必需品も入手が困難
タイズの飛び地に住む住民は、飲料水、燃料、食糧の搬入がますます困難になっていると話している。一方で包囲地域内の物価は高騰しており、人びとは十分な量の飲料水を得るにも苦労している。イエメンに課された武器の禁輸は、事実上サウジアラビアと国連主導の全面封鎖となっており、国中で食糧と燃料不足につながった。どちらも法外な価格でしか手に入らない。
人口密集地であるタイズに住むイエメンの一般市民は、狙撃手や流れ弾のほか、紛争当事者両陣営によって無差別に使用される砲弾を常に恐れて暮らし、空爆も毎日のようにある。人びとは戦闘を恐れて診療所や病院にたどり着くことができず、前線を横断しようにも燃料が不足しているため難しい。そのため、知り合いの看護師や医師の自宅まで赴いて治療を受ける人が多い。
20軒あった病院は6軒に
タイズでは以前、20軒の病院で住民60万人以上の健康が支えられていた。紛争勃発後、稼働し続けているのはこのうち6軒のみで、それも診療を一部に限定した場合が多い。医療スタッフ、燃料と必須医薬品が足りず、救急医療を求めて来院する大勢の負傷者に日々手一杯となっている。
クレイエルは「タイズ市民の大部分が市内で避難生活を送っています。毎日が命がけの戦いで、充分な食糧と水を得るにも必死です。生活必需品の価格は急騰し、どこも危険だからです。市民が暴力を免れ、医療機関などの基本サービスが受けられるよう対策がとられなければ、今後数週間は悪化の一途をたどる見込みです」と話す。
イエメン全土で公平・中立な活動を継続
MSFは公平・中立な医療・人道援助団体として、タイズで物資を必要とする全ての病院を支援している。フーシ派の支配地域であっても現地の抵抗勢力の支配地域であっても、同様に行っている。MSFのタイズでの支援活動は今年5月以降休まず続けられており、MSFが支援する病院では、これまで3644人の患者が、紛争による負傷の治療を受けた。イエメン全体では、2015年3月初旬以降1万5500人以上の人びとが、MSFが支援する病院で治療を受けた。MSFは現在、サヌア、アデン、アッダリ、アムラン、タイズ、ハッジャの各州・都市で活動している。
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