芥川賞作家が独特の着眼点で絵画を読み解く“痛快美術エッセイ”発売 『偏愛ムラタ美術館 展開篇 』(村田喜代子、徳間書店)
絵画を、言葉で記す。それは始めからかなわぬ恋文のようなもの。
「江戸の嫌われ者・芦雪と、ローマのならず者・カラヴァッジョを重ね合わせると、美術というものが抱えた思念の世界の澱が覗けるようだ」(本書より)
- 芥川賞作家村田喜代子が偏愛する画家たちを紹介した絵画エッセイ第3弾。 作家の鋭い感性が、絵画を読み解く
本書で紹介する画家や絵画は、いづれもクセ者ばかり。クリムト、ホックニー、ワイエス、芦雪、王塚古墳、北斎、藤田嗣治、野見山暁治、黒田征太郎、会田誠、つげ義春の妻・藤原マキ……。作家の鋭い感性が見透かす絵画の奥の、奥の世界を、偏愛する画家へのかなわぬ恋文のように、その熱き思いを痛快に綴ります。
【本書より】
日本画が好きだ。若冲や芦雪に限らない。タイムトンネルが出来たら、絵描き探訪にいってみたい。存在の薄さと軽みこそ日本画の面白さである。
あるいは、ワイエスについて、
「ワイエスの心の根底には、どこか日本人の魂に通底する、一種、澄明な無常観を感じる」と作家は見抜く。
命には水が含まれ、生には無情が貫かれている。ワイエスの絵からは「魂の写実」という言葉がゆっくり浮かび上がってくる。
そして、
李朝民画の精神の到達点は山水図である。…広々とした精神の均衡とでもいうものが漂って、上等だ。上等とは、とびきり格があるのである。
絵画をみるとき、人は絵を通して、自分の裡を見ている。
- カバーは、来年100歳になる野見山暁治のパワフルな作品
カバーに選んだのは、100歳記念の個展が1月9日 日本橋髙島屋を皮切りに、2月北九州市立美術館本館、そして3月2日から京都、鹿児島と、順次、展開される野見山暁治の奇っ怪でパワフルな作品。
「野見山さんの絵はじっとしていない。ぶるぶると微細動し、回転し、飛来し、崩れかける。…形を持たない思念のようなものが、元素の電子運動みたいに飛び跳ねている」
100歳を目前にした野見山画伯の前で、芥川賞作家は驚嘆する。
- 三浦しをんさんも絶賛
「村田さんの言葉は、魔法の呪文。絵の中に入っていくような、わくわくする気持ちを味わえます。」(帯コメントより)
- 商品情報
[タイトル] 偏愛ムラタ美術館 展開篇
[著者] 村田喜代子
[発売日] 2020年10月9日(金)
[定価] 本体2800円+税
[判型/ページ数]四六判・224ページ
[発売] 株式会社徳間書店
[ISBN]978-4-19-865054-4
[商品URL] https://www.tokuma.jp/book/b533969.html
- 目次
・何が出るか。怪人・芦雪
・「無常」というリアリズム ―アンドリュー・ワイエス―
・ホックニーの、大きなオークの木 ―何と深い夕焼けと日没―
・黒田征太郎のアトミック神話
・古墳日和!黄泉の国のパワー
・神を畏れよ!ビザンティン美術の二次元世界
・地図というアルカディア ―世界の古地図―
・天から光が降ってくる
・太陽を背負って帰ってきた! ―奥山民枝の旅―
・李朝民画の静かなる天地
・こんな絵があった。 ーたどり直す戦争画―
・妻が描いた、つげ義春
・戦争はどこへ行った ―会田誠―
・水中の犀と、火中の魚 ―堀晃の海―
・「甲斐大策」という空漠
・白い太陽の来歴 ―後藤愛彦の楽園―
・化け物、乱入! ―野見山暁治、アトリエの屏風の怪―
・あとがきにかえて
- 著者プロフィール
村田喜代子(むらたきよこ)
1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生まれ。1987年「鍋の中」で芥川賞を受賞。1990年『白い山』で女流文学賞、1992年『真夜中の自転車』で平林たい子文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年「望潮」で川端康成文学賞、1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞、2019年『飛族』で谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞。
ほかに、『蕨野行』『この世ランドの眺め』『八幡炎炎記』『屋根屋』『火環』『エリザベスの友達』など著書多数。
本書は『偏愛ムラタ美術館』(2009年)、『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』(2012年)に続く3作目の痛快美術エッセイである。
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