外来生物法施行から20年 ペット由来動物の外来種化に関する報告書を発表 日本における動物の外来種化、主因は「ペット利用」と確認
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下 WWFジャパン)は、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)が2025年に施行20年を迎えたことを踏まえ、近年社会問題になっている外来種の定着・拡散において、ペットとして流通する野生動物がどの程度関与しているのかを多角的に検証しました。その結果をまとめた調査報告書『ペット由来外来種:日本における現状と課題』(全55ページ)を、本日2026年2月20日(金)に発表しました。
調査報告書全文(PDFファイル):https://www.wwf.or.jp/activities/data/pet-origin-invasive-species-report_jp.pdf

■調査背景
日本では近年、多種多様な野生動物がペット目的で輸入され、ペットショップ、展示即売会(フェア)などで広く販売されています。しかしその一方で、飼育している動物の逸走や飼いきれなくなったペットの遺棄により、外来種として定着し、さらに在来の生態系、人の健康や農林産業に悪影響を及ぼす「侵略的外来種(IAS)」となる例が相次いでいます。
侵略的外来種は、生物多様性損失をもたらす5つの主要な直接要因のひとつと国際的に位置づけられており、対策の重要性が高まっています。また、世界の野生生物の個体群は1970年から2020年のわずか50年で平均73%減少しており(※)、生物多様性の急速な劣化が進んでいることも、こうした問題への対処が急務である背景にあります。
このような状況を受けWWFジャパンは、ペット利用される野生動物が日本国内で外来種化している課題について、その現状について明らかにし、事例分析や国際的データベースとの照会から見る潜在リスクなどを纏めました。
(※)WWF『生きている地球レポート2024』
■主な分析調査結果
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2015年版生態系被害防止外来種リストや都道府県の外来種リスト等に掲載されている哺乳類・鳥類・爬虫類を分析した結果、哺乳類の32%、鳥類の76%、爬虫類の76%がペット目的で利用されていた。観光施設などでの展示目的と合わせると、その割合はさらに高まる。これはペット市場が外来種の主要な供給源になっていることを示唆するものである。この傾向は海外の研究結果とも整合し、国際的なペット需要が外来種問題を拡大させていることが伺える。
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こうした外来種が他の動物や人へ感染症を広げる恐れがある。
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国内のペットショップや爬虫類フェアで記録された148種のうち、複数の国際的外来種データベースとの照合で26種(17.6%)が確認された。特に日本での取引量が多いボールパイソンやコーンスネークは今後国内で外来種化する潜在リスクが高いことが示唆された。
■考察
本報告書で示した通り、ペットとして持ち込まれた動物が野外で定着し、在来生態系に深刻な影響を及ぼす例は少なくありません。たとえばアライグマは、1970年代以降の大量輸入とペット利用を経て、現在は46都道府県で生息が確認されています。農作物被害は2023年に4.8億円にのぼり、文化財や住宅の損傷、寄生虫や人獣共通感染症のリスクも懸念されます。外来種問題への対策として最も効果的で、かつ社会的コストが小さい方法は「導入前の予防」であることが科学的に明らかになっています。WWFジャパンは、科学的根拠に基づくリスク評価の制度化、高リスク種の輸入・流通段階での管理強化、飼育者による遺棄防止の徹底、そして早期発見を可能にするモニタリング体制の強化を、今後の外来種対策の柱として重視しています。
一度崩壊した生態系を元に戻すことは非常に困難です。野生動物のペット利用が、外来種問題だけでなく感染症リスクや生物多様性の損失にもつながり得ることを社会全体で理解し、予防原則に基づく取り組みを一層加速させることが求められています。
本調査に関わった担当者のコメントは以下の通りです。
■WWFジャパン専門オフィサーのコメント
WWFジャパン 自然保護室 野生生物グループ 若尾慶子(調査企画・第1章執筆)

外来種問題は、生物多様性保全の観点はもちろん、人の健康リスクや経済的損失の面から見ても、より戦略的かつ積極的に取り組むべき課題です。
問題が深刻化してから駆除に追われるのではなく、予防を主軸とするアプローチへ転換することが不可欠です。予防こそが最も費用対効果に優れた対策であるという点を、あらためて強調すべきと考えます。
WWFジャパン 自然保護室 野生生物グループ 成瀬唯(第2・3章執筆)

日本のペット市場で現在多く取引されている種の中には、将来的に日本で外来種となる潜在的なリスクをもつ種が含まれていることが明らかになりました。今後同じような失敗が起きることがないよう、専門家や政府が連携して具体的なリスクを明らかにし、早急な対策を進めるとともに、リスクのある種を扱う事業者や個人飼育者が責任を理解する必要があります。
■ WWFジャパンの野生動物ペット利用に関する取り組み
WWFジャパンは「人と自然が調和して生きられる未来」を目指し、2030年までに野生動物の責任あるペット利用が行なわれ、絶滅の危機にさらされる野生動物がゼロになることを目標のひとつに掲げ活動しています。野生動物のペット化については、今回取り上げた野生動物の外来種化リスクの他にも、ふれあいによる傷害や感染症、密猟・密輸や専門獣医師不足など様々な課題があります。WWFジャパンは事業者や消費者にこれらの課題を知っていただく活動を続けるとともに、課題解決の大きな推進力である法整備が進むよう、引き続き立法者や行政と対話を行なっていきます。
なお、主に以下データを用いて、分析を行ないました。
●国内既存情報の集約と分析
・ 生態系被害防止外来種リスト(2015年版)
・ 国立環境研究所侵入生物データベース
・ 各都道府県の外来種リスト等
●ケーススタディ
・ アライグマ
・ グリーンアノール
・ バーミーズパイソン(米国の事例)
●国際的な以下の外来種データベースと国内市場データの照合
・ GRIIS:各国による外来種の導入・定着状況を含むデータベース
・ EICAT:IUCNの専門家グループを評価した外来種データベース
・ InvaCost:経済コストの観点から外来種の影響を記録したデータベース
・ GIDIAS:IPBESの概念的枠組みを採用した外来種データベース
・ CABI Horizon Scanning Tool:外来種となりうる種を探すことができるツール
■ご参考
・外来生物(外来種)問題
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3557.html
・野生動物のペット利用の課題とWWFジャパンの取り組み
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/5099.html
・フクロウの国内取引調査が示すこと
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5648.html
・ワシントン条約CoP19を前に-日本の両生類ペット取引調査報告
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4966.html
・ペットショップの爬虫類はどこから来たか?―国内市場調査から―
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/44.html
WWFについて
WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年に設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止などの活動を行なっています。 https://www.wwf.or.jp
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