地域資源を活用した循環型バリューチェーン実証結果について
~琵琶湖で大量繁茂している水草等の堆肥化から循環型農作物を栽培・販売し、地域資源の循環を実現~
NTT西日本グループは、持続可能な”食と農”の実現に貢献するため、2021年6月から地域資源の堆肥化、及び有機肥料等を活用した循環型農作物の栽培と販売の実証を実施し、以下のとおり成果を得ることができました。
1. 背景
農林水産省は、持続的な食料の安定供給と農林水産業の発展を目的に”みどりの食料システム戦略※1”を推進し、2050年までに日本の耕作地に占める有機農地面積を約25%(100万ha)へ拡大を図ることをめざしております。
そのような目標の達成に寄与するため、NTT西日本グループでは、2020年7月より、株式会社ウエルクリエイト(本社:福岡県北九州市、代表取締役社長:中𠩤 信子 以下、ウエルクリエイト)、アサヒバイオサイクル株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:千林 紀子 以下、アサヒバイオサイクル)、一般社団法人SOFIX農業推進機構(代表理事:久保 幹、以下、SOFIX機構)とともに「地域資源循環の取組み※2」を推進してまいりました。
そしてこの度、生産から消費にいたるバリューチェーンをつなぎ、地域循環型社会の実現のため、吉田農園株式会社(本社:滋賀県長浜市、代表取締役社長 吉田 道明、以下、吉田農園)をフィールドとした地域資源の堆肥化から循環型農作物の栽培・販売における一連の実証を行いました。
※1 農林水産省が推進する生産力向上と持続性の両立をめざした持続可能な食料システム
※2 関連ニュースリリース(2020.8.6) https://www.ntt-west.co.jp/news/2008/200806a.html
2. 本実証の概要
本実証においては、琵琶湖に大量繁茂し地域課題となっている「水草」や、農業の中で発生する「もみ殻」「米ぬか」等の地域資源を、『地域食品循環資源ソリューション※3』の活用により有用な堆肥生成が可能か、検証を行いました。また、生成された堆肥等によって、農地の地力向上が図れ、有機農法においても従来からの慣行農法と比較し遜色ない農作物の栽培が可能かについても検証しました。加えて、昨今、エシカル消費※4が広がりを見せる中、収穫した農作物を「循環型農作物」として販売し、エシカル消費に対する動向や農家の新たな販売手法を調査しました。
※3 食品残渣発酵分解装置「フォースターズ」と堆肥化促進材「サーベリックス」により食品残渣から堆肥を生成するソリューション。NTTビジネスソリューションズが提供。
※4 消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと
図1: 本実証事業において構築をめざす”有機系地域資源リサイクルによる循環社会”
◆ 地域資源の堆肥化実証:2021年6月1日~ 9月30日
◆ 有機肥料等を活用した農作物の栽培と販売実証:2021年10月1日~2022年2月28日
4. 実施方法
<地域資源の堆肥化>
吉田農園に設置した食品残渣発酵分解装置「フォースターズ」※5に「水草(滋賀県提供)」・「もみ殻」・「米ぬか」を投入し、合わせて堆肥化促進材「サーベリックス」※6によって発酵温度の上昇や減量化を促進させ、堆肥を生成します。また、生成した堆肥は、『SOFIX(土壌肥沃度指標、Soil Fertile Index)診断技術※7』(以下、SOFIX分析)を活用し堆肥の有用性を検証しました。
また、本実証における全体コーディネートや関係プレイヤーとの調整、本実証で得られる各種データ収集・分析をNTT西日本グループにて実施しました。
◆ 実証に用いた技術等
・ 食品残渣発酵分解装置「フォースターズ」 ※5
ウエルクリエイトより提供を受けた食品残渣発酵分解装置
・ 堆肥化促進材「サーベリックス」 ※6
アサヒバイオサイクルより提供を受けた独自の微生物を配合した堆肥化促進材
・ SOFIX診断技術 ※7
立命館大学で開発された土壌の肥沃度を診断する分析技術
図2: 地域資源の堆肥化実証の流れ
生成した地域資源由来の堆肥と、SOFIX機構から指導を受け施肥した有機肥料を活用し、吉田農園にてブロッコリーの栽培を行いました。従来からの慣行農法と比較するため、栽培区画を分け、SOFIX分析や食味分析を通じ、土壌成分や農作物の品質を評価しました。 加えて、収穫したブロッコリーは、道の駅※8において「循環型農作物」として価値を付け、従来の慣行農法のブロッコリーより1~2割高い価格設定で、生産者の吉田農園が販売し、栽培~販売における各種データ収集・分析をNTT西日本グループにて実施しました。
※8 浅井三姉妹の里(滋賀県長浜市内保町2843)
図3: 「循環型農作物」としての販売イメージ
5. 実施結果
<地域資源の堆肥化>
本実証では、地域資源:約37トン(水草:約35t、もみ殻・米ぬか:約2t)から、約3tの堆肥が生成され、約92%と高い減量率が確認されました。また、生成された堆肥は、十分に発酵させることで成分の向上が確認でき、不足成分を他の資材で補完することで、農地に有効な堆肥として活用が期待できます。(別紙:表1参照)
<有機肥料等を活用した循環型農作物の栽培と販売>
本実証においては、地域資源由来の堆肥・SOFIXの有機肥料の活用により、土壌中の各種成分の向上が確認できました。(別紙:表2参照)また栽培したブロッコリーの品質は、化成肥料を活用した慣行農法と遜色ない結果が得られました。(別紙:表3参照)加えて、ブロッコリーの販売においては、1~2割高い価格設定の中、従来の慣行農法で栽培されたブロッコリーと同等の販売実績を残すことができました。
本実証を通じ、「地域食品循環資源ソリューション」が食品残渣以外の「水草」や「もみ殻」・「米ぬか」等の地域資源のリサイクルにも有用に作用したことから、大量繁茂が課題となっている琵琶湖の水草をはじめ、各地域で扱いに苦慮する有機物の資源化への新たな仕組みとしての活用が期待できます。
6. 今後の展開について
NTT西日本グループは、本実証実験により得られたノウハウ等を活用し、地域資源や土壌・肥料成分といったデータベースの構築や、生産者と消費者をつなぐ販路マッチング等の仕組みの構築をめざします。また、有機資源をバイオ炭に再生し農地へ施用して土壌を改良するとともに炭素貯留によりカーボンネガティブ※9をも実現する「地域食品資源循環ソリューション(バイオ炭化タイプ)※10」の展開も図り、今後も地域資源循環による持続可能な“食と農”の実現をめざしてまいります。
※9 排出量を吸収量で相殺(カーボンニュートラル)するのではなく、排出量より吸収量を多くすること
※10 関連ニュースリリース(2022.2.2) https://www.nttbizsol.jp/newsrelease/202202021300000508.html
図4: 提供するバイオ炭化窯の外観
(別紙)
表1 地域資源由来堆肥の成分変化
※基準値:一般社団法人SOFIX農業推進機構がこれまでの分析データの基に定める良質な堆肥の基準となるデータ
表2 ブロッコリー圃場の土壌成分変化(施肥前後)
・地域自然由来堆肥の活用により、ブロッコリー圃場における各成分の向上が確認され、うち、「総細菌数」「全炭素量」「全窒素」「C/N比」の3項目でSOFIX機構の定める基準値を上回ることが確認された。
※基準値:一般社団法人SOFIX農業推進機構がこれまでの分析データの基に定める肥沃な土壌の基準となるデータ
表3 ブロッコリーの成分分析結果
B区画:本実証で生成した地域資源堆肥を中心に不足する成分を化学肥料で補った栽培区画
C区画:SOFIX機構から指導を受け施肥した有機肥料を中心とした栽培区画
・化成肥料を活用したA区画と有機系資材を活用したB・C区画を比較した場合、3区画とも遜色ない結果が確認された
※DB平均値:分析を依頼した機関の保有データベース・ブロッコリー検体数:32検体の平均値
農林水産省は、持続的な食料の安定供給と農林水産業の発展を目的に”みどりの食料システム戦略※1”を推進し、2050年までに日本の耕作地に占める有機農地面積を約25%(100万ha)へ拡大を図ることをめざしております。
そのような目標の達成に寄与するため、NTT西日本グループでは、2020年7月より、株式会社ウエルクリエイト(本社:福岡県北九州市、代表取締役社長:中𠩤 信子 以下、ウエルクリエイト)、アサヒバイオサイクル株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:千林 紀子 以下、アサヒバイオサイクル)、一般社団法人SOFIX農業推進機構(代表理事:久保 幹、以下、SOFIX機構)とともに「地域資源循環の取組み※2」を推進してまいりました。
そしてこの度、生産から消費にいたるバリューチェーンをつなぎ、地域循環型社会の実現のため、吉田農園株式会社(本社:滋賀県長浜市、代表取締役社長 吉田 道明、以下、吉田農園)をフィールドとした地域資源の堆肥化から循環型農作物の栽培・販売における一連の実証を行いました。
※1 農林水産省が推進する生産力向上と持続性の両立をめざした持続可能な食料システム
※2 関連ニュースリリース(2020.8.6) https://www.ntt-west.co.jp/news/2008/200806a.html
2. 本実証の概要
本実証においては、琵琶湖に大量繁茂し地域課題となっている「水草」や、農業の中で発生する「もみ殻」「米ぬか」等の地域資源を、『地域食品循環資源ソリューション※3』の活用により有用な堆肥生成が可能か、検証を行いました。また、生成された堆肥等によって、農地の地力向上が図れ、有機農法においても従来からの慣行農法と比較し遜色ない農作物の栽培が可能かについても検証しました。加えて、昨今、エシカル消費※4が広がりを見せる中、収穫した農作物を「循環型農作物」として販売し、エシカル消費に対する動向や農家の新たな販売手法を調査しました。
※3 食品残渣発酵分解装置「フォースターズ」と堆肥化促進材「サーベリックス」により食品残渣から堆肥を生成するソリューション。NTTビジネスソリューションズが提供。
※4 消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと
図1: 本実証事業において構築をめざす”有機系地域資源リサイクルによる循環社会”
3. 実証期間
◆ 地域資源の堆肥化実証:2021年6月1日~ 9月30日
◆ 有機肥料等を活用した農作物の栽培と販売実証:2021年10月1日~2022年2月28日
4. 実施方法
<地域資源の堆肥化>
吉田農園に設置した食品残渣発酵分解装置「フォースターズ」※5に「水草(滋賀県提供)」・「もみ殻」・「米ぬか」を投入し、合わせて堆肥化促進材「サーベリックス」※6によって発酵温度の上昇や減量化を促進させ、堆肥を生成します。また、生成した堆肥は、『SOFIX(土壌肥沃度指標、Soil Fertile Index)診断技術※7』(以下、SOFIX分析)を活用し堆肥の有用性を検証しました。
また、本実証における全体コーディネートや関係プレイヤーとの調整、本実証で得られる各種データ収集・分析をNTT西日本グループにて実施しました。
◆ 実証に用いた技術等
・ 食品残渣発酵分解装置「フォースターズ」 ※5
ウエルクリエイトより提供を受けた食品残渣発酵分解装置
・ 堆肥化促進材「サーベリックス」 ※6
アサヒバイオサイクルより提供を受けた独自の微生物を配合した堆肥化促進材
・ SOFIX診断技術 ※7
立命館大学で開発された土壌の肥沃度を診断する分析技術
図2: 地域資源の堆肥化実証の流れ
<有機肥料等を活用した農作物の栽培と販売>
生成した地域資源由来の堆肥と、SOFIX機構から指導を受け施肥した有機肥料を活用し、吉田農園にてブロッコリーの栽培を行いました。従来からの慣行農法と比較するため、栽培区画を分け、SOFIX分析や食味分析を通じ、土壌成分や農作物の品質を評価しました。 加えて、収穫したブロッコリーは、道の駅※8において「循環型農作物」として価値を付け、従来の慣行農法のブロッコリーより1~2割高い価格設定で、生産者の吉田農園が販売し、栽培~販売における各種データ収集・分析をNTT西日本グループにて実施しました。
※8 浅井三姉妹の里(滋賀県長浜市内保町2843)
図3: 「循環型農作物」としての販売イメージ
5. 実施結果
<地域資源の堆肥化>
本実証では、地域資源:約37トン(水草:約35t、もみ殻・米ぬか:約2t)から、約3tの堆肥が生成され、約92%と高い減量率が確認されました。また、生成された堆肥は、十分に発酵させることで成分の向上が確認でき、不足成分を他の資材で補完することで、農地に有効な堆肥として活用が期待できます。(別紙:表1参照)
<有機肥料等を活用した循環型農作物の栽培と販売>
本実証においては、地域資源由来の堆肥・SOFIXの有機肥料の活用により、土壌中の各種成分の向上が確認できました。(別紙:表2参照)また栽培したブロッコリーの品質は、化成肥料を活用した慣行農法と遜色ない結果が得られました。(別紙:表3参照)加えて、ブロッコリーの販売においては、1~2割高い価格設定の中、従来の慣行農法で栽培されたブロッコリーと同等の販売実績を残すことができました。
本実証を通じ、「地域食品循環資源ソリューション」が食品残渣以外の「水草」や「もみ殻」・「米ぬか」等の地域資源のリサイクルにも有用に作用したことから、大量繁茂が課題となっている琵琶湖の水草をはじめ、各地域で扱いに苦慮する有機物の資源化への新たな仕組みとしての活用が期待できます。
6. 今後の展開について
NTT西日本グループは、本実証実験により得られたノウハウ等を活用し、地域資源や土壌・肥料成分といったデータベースの構築や、生産者と消費者をつなぐ販路マッチング等の仕組みの構築をめざします。また、有機資源をバイオ炭に再生し農地へ施用して土壌を改良するとともに炭素貯留によりカーボンネガティブ※9をも実現する「地域食品資源循環ソリューション(バイオ炭化タイプ)※10」の展開も図り、今後も地域資源循環による持続可能な“食と農”の実現をめざしてまいります。
※9 排出量を吸収量で相殺(カーボンニュートラル)するのではなく、排出量より吸収量を多くすること
※10 関連ニュースリリース(2022.2.2) https://www.nttbizsol.jp/newsrelease/202202021300000508.html
図4: 提供するバイオ炭化窯の外観
(別紙)
表1 地域資源由来堆肥の成分変化
・食品残渣発酵分解装置にて一次発酵を行った後、堆積発酵を踏まえることで、堆肥の各成分の向上が確認され、うち、「全窒素」「総細菌数」「含水率」の3項目でSOFIX機構の定める基準値を上回ることが確認された。
※基準値:一般社団法人SOFIX農業推進機構がこれまでの分析データの基に定める良質な堆肥の基準となるデータ
表2 ブロッコリー圃場の土壌成分変化(施肥前後)
・地域自然由来堆肥の活用により、ブロッコリー圃場における各成分の向上が確認され、うち、「総細菌数」「全炭素量」「全窒素」「C/N比」の3項目でSOFIX機構の定める基準値を上回ることが確認された。
※基準値:一般社団法人SOFIX農業推進機構がこれまでの分析データの基に定める肥沃な土壌の基準となるデータ
表3 ブロッコリーの成分分析結果
A区画:従来からの化成肥料による栽培区画
B区画:本実証で生成した地域資源堆肥を中心に不足する成分を化学肥料で補った栽培区画
C区画:SOFIX機構から指導を受け施肥した有機肥料を中心とした栽培区画
・化成肥料を活用したA区画と有機系資材を活用したB・C区画を比較した場合、3区画とも遜色ない結果が確認された
※DB平均値:分析を依頼した機関の保有データベース・ブロッコリー検体数:32検体の平均値
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