設備投資計画がある企業は58.0%、前年度より増加

脱炭素に向けた設備投資を行う企業は1割未満にとどまる

株式会社帝国データバンク

 設備投資動向は、新型コロナウイルスなどの影響で国内外経済の先行き不透明感が拭えないなか、省力化・効率化などを見据えたデジタル化や地球環境への対応などがプラス材料として期待されている。また、政府は引き続き新型コロナウイルスへの対策補助事業として設備投資支援などを進め、「令和3年度税制改正大綱」ではデジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素に向けた投資促進税制を創設するなど、設備投資に関する政策を積極的に推進している。
そこで、帝国データバンクは2021年度の設備投資計画などに関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2021年4月調査とともに行った。
<調査結果(要旨)>
  1. 2021年度に設備投資を行う予定(計画)が『ある』企業は58.0%で、前回調査(2020年4月、52.8%)から5.2ポイント増加となった。規模別においても、すべての規模で前年から増加しており、特に大企業で伸び幅が大きい。業界別では『製造』が70.1%でトップとなり、前回調査からの増加幅(同9.2ポイント増)においても最も高かった
  2. 設備投資計画の内容では、「設備の代替」(41.0%)がトップ。以下、「既存設備の維持・補修」(33.2%)、「情報化(IT化)関連」(30.3%)、「省力化・合理化」(27.8%)と続く。新型コロナウイルス下の特別融資によって積極的に設備投資を行うという意見がみられつつも、一方で今後の返済を見越して設備投資に足踏みしているといった声も少なくない
  3. 主な資金調達方法は、「自己資金」が43.2%で最も高い。金融機関からの借り入れは長期・短期を合わせて3割超となり、自己資金と金融機関からの借り入れが企業の資金調達おける大部分を占めている。また、設備投資予定額の平均は1億2,572万円となった
  4. 設備投資を行わない理由では、「先行きが見通せない」(55.0%)が前回調査から9.4ポイント減少したものの最も高い。次いで「現状で設備は適正水準である」(32.6%、同7.3ポイント増)は大幅増となった。中小企業では「借り入れ負担が大きい」や「手持ち現金が少ない」の割合が大企業より高く、資金面の懸念により設備投資を控えている様子がうかがえる

設備投資計画が『ある』企業は58.0%、「予定している」「実施を検討中」で前年より増加

 2021年度(2021年4月~2022年3月)に設備投資を実施する予定(計画)があるか尋ねたところ、設備投資計画が『ある』(「すでに実施した」「予定している」「実施を検討中」の合計)企業は58.0%となり、前回調査(2020年4月実施)から5.2ポイント増加となった。設備投資を「すでに実施した」企業は6.2%で同0.1ポイント減とほぼ横ばい、「予定している」は30.5%(同3.1ポイント増)と「実施を検討中」は21.3%(同2.2ポイント増)は増加となった。総じて、企業の設備投資計画は新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)によって先行き不透明感が増していた時期の2020年度計画と比較して、上向いている傾向がみられた。
 

2021年度の設備投資計画2021年度の設備投資計画

 設備投資の予定(計画)が『ある』企業を規模別にみると、「大企業」が69.7%、「中小企業」が55.6%、「小規模企業」が44.9%となった。すべての規模で前回調査より高く、特に大企業は中小企業、小規模企業より増加幅が大きい。業界別では、『製造』が70.1%でトップとなり、前年度からの増加幅(同9.2ポイント増)においても最も高かった。企業からは、「作業時間の短縮に向けて、AIやロボットによる自動ラインの導入を検討中」(機械・同部品製造修理、群馬県)や「無利子無担保での融資を受け、新型コロナ収束後に戦力となる設備投資を考えている」(動力伝導装置製造、福島県)などの前向きな意見が聞かれた。

2021年度の設備投資計画が『ある』割合 ~ 規模・業界別 ~2021年度の設備投資計画が『ある』割合 ~ 規模・業界別 ~


設備投資の内容、前回調査と同様に「設備の代替」や「既存設備の維持・補修」が上位

予定している設備投資の内容 (複数回答)予定している設備投資の内容 (複数回答)



 2021年度に設備投資の予定(計画)が『ある』企業に対して、予定している設備投資の内容について尋ねたところ、「設備の代替」が41.0%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「既存設備の維持・補修」(33.2%)や「情報化(IT化)関連」(30.3%)、「省力化・合理化」(27.8%)が続いた。前回調査からは「新製品・新事業・新サービス」(18.6%)が3.9ポイント増で最も増加している。また、燃費改善や環境対策など脱炭素関連となる「省エネルギー対策」は7.4%となり、近年は政府主導で積極的に施策を進めているものの、1割未満にとどまった。

 



 設備投資の内容を従業員数別にみると、「301~1,000人」「1,000人超」といった比較的規模の大きい企業は「情報化(IT化)関連」がトップとなるなど、企業規模が大きいほど取り組む割合は高い傾向がみられる。従業員300人以下のそれぞれの区分では「設備の代替」が最も高く、「既存設備の維持・補修」も企業規模を問わず割合が高い。企業からは、「フリーアドレス化や在宅勤務も考慮した席数への変更など、オフィスのリニューアルを実施」(家庭用電気機械器具卸売、愛知県)や「社内データのクラウド化を実施予定」(塗装工事、広島県)のような積極的な意見があげられた。また、新型コロナ下において「新型コロナ関連の助成金もあり、投資をできる限り進めていく予定」(野菜作農、徳島県)という声がある一方で、「新型コロナの特別枠で融資を受けたが、今後は返済もあり先行きが見えないため投資を抑えたいのが本音」(湾港運送、大阪府)などさまざまな意見がきかれた。

予定している設備投資の内容 ~従業員数別、上位5項目~(複数回答)予定している設備投資の内容 ~従業員数別、上位5項目~(複数回答)


企業の資金調達方法、金融機関からの長期借り入れは減少し、補助金・助成金が伸長

 2021年度に設備投資の予定(計画)が『ある』企業に対して、主な資金調達方法を尋ねたところ「自己資金」が43.2%で最も高かった。「金融機関からの長期の借り入れ」(25.8%)や「金融機関からの短期の借り入れ」(5.0%)といった金融機関からの調達は3割超となり、自己資金や金融機関からの借り入れが資金調達の大部分を占めている。自己資金では従業員数が多い企業ほど活用しており、金融機関からの借り入れは中小企業で高い傾向がみられる。また、「補助金・助成金」は、従業員数が少ない小規模企業で高い。
 新型コロナの影響で金融機関の融資環境が大きく変化した2020年度(2020年4月調査)の資金調達方法と比較すると、「金融機関からの長期の借り入れ」(前回調査31.3%→今回25.8%)を活用する割合は減少している。

主な資金調達方法 ~ 従業員数別 ~主な資金調達方法 ~ 従業員数別 ~

設備投資額は「1,000万円以上5,000万円未満」がトップ、平均は1億2,572万円

 2021年度に設備投資の予定(計画)が『ある』企業に対して、予定している設備投資額について尋ねたところ「1,000万円以上5,000万円未満」が27.3%で最も高い。特に従業員数が「21人~50人」「51人~100人」の企業で3割超となった。次いで、「100万円以上500万円未満」(20.2%)が続き、「5人以下」「6人~20人」の企業で割合が特に高い。また、設備投資予定額における全体の平均は1億2,572万円となった。

設備投資予定額 ~ 従業員数別 ~設備投資予定額 ~ 従業員数別 ~

設備投資を行わない理由、「先行きが見通せない」は減少するも前年度に続いてトップ

 


 2021年度に設備投資を「予定していない」企業に対して、設備投資を行わない理由を尋ねたところ、「先行きが見通せない」が55.0%でトップとなった(複数回答、以下同)。前回調査(2020年4月調査、66.4%)から9.4ポイント減少となったものの、依然として半数超の企業が先行き不安を理由に設備投資を予定していない結果となった。大企業、中小企業ともに減少するも、引き続き中小企業の方が高い傾向は続いている。それに対して、2番目となった「現状で設備は適正水準である」(32.6%)は前回調査(25.3%)から7.3ポイント増加した。新型コロナ以前の活発な設備稼働状態まで回復していないことが一因と考えられる。また、中小企業では「借り入れ負担が大きい」「手持ち現金が少ない」の割合が大企業より高く、資金面への懸念から設備投資を控えている様子がうかがえる。企業からは、「やりたいことはあるが、見通しが全く立たないなかで投資計画は立てにくい」(旅館、愛媛県)のような意見が多くみられた。

設備投資を予定していない理由 ~上位10項目~(複数回答)設備投資を予定していない理由 ~上位10項目~(複数回答)


まとめ

 本調査結果では、2021年度に設備投資の予定(計画)がある企業は、新型コロナの影響で先行きが不透明だった2020年度計画より増加した。その内容の多くは前回調査から大きく変わっていないなかで、政府が推し進める脱炭素に向けた設備投資の意識は伸長していない結果となった。
 設備投資を行わない理由としては、「先行きを見通せない」とした企業は前回調査より減少したものの、依然として高水準にある。新型コロナはワクチン接種の拡充などが期待されるものの、一部地域では3度目の緊急事態宣言が発出されるなど依然として収束目途は立っていない。設備投資計画や、そこで肝要となる企業の先行き判断に関しては、しばらくは新型コロナの感染動向やそれにともなう政府の判断に左右されるだろう。また、新型コロナに基づく特別融資を頼りに設備投資を行うとする声がある一方で、返済への懸念によって躊躇している声も多い。企業では手元資金を厚くする動きもみられるなか[1]、資金の使い道が設備投資に向けられるかが注目される。

[1] 帝国データバンク「新型コロナウイルスによる企業業績への影響調査(2020 年度 4-12 月期決算速報)」、現預金手持日数による

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URL
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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月