新電力会社、参入企業増加で競争加速 電力価格高騰で資金繰り悪化懸念

第5回:「新電力会社」の経営実態調査

株式会社帝国データバンク

2016年4月1日から始まった電力小売りの全面自由化。事業を行う上で登録が義務化されている「登録小売電気事業者」も年々数を増やしている。プレイヤーの増加で業界内の競争が激しさを増すが、昨年末から1月にかけての電力卸売価格高騰の影響を受け、一時は業界最大手だった(株)F-Powerが会社更生法の適用申請を余儀なくされるなど、競争から脱落する企業も出た。多額のインバランス料金について今後支払いを求められる事業者は、資金繰りの悪化が懸念されている。
<調査結果(要旨)>
  1. 小売電気事業者への登録社数推移小売電気事業者への登録社数推移

    「新電力会社」は全国に706社で、2018年の前回調査(497社)比で209社(42.1%)増加。本社所在地を都道府県別に見ると、「東京都」(259社、構成比36.7%)が最多
  2. 設立時期を見ると、2011年以降に設立した企業が389社(構成比55.1%)と半数以上を占め、年別では2015年(71社、同10.1%)が最多となっている
  3. 主力事業別では、電気事業所を含む「その他」(258社、構成比36.5%)が最多。「サービス業」(88社、同12.5%)、「卸売業」(82社、同11.6%)が続いた
  4. 売上規模別では、「10億円以上100億円未満」(181社、構成比25.6%)が最多。「電気事業所」は半数が2期連続で増収
  5. 電力卸売価格高騰を受け、4社に1社が「支払い猶予措置」を利用
帝国データバンクでは、経済産業省・資源エネルギー庁の「登録小売電気事業者」に登録された企業のうち、みなし小売電気事業者(旧:一般電気事業者)を除く「新電力会社」706社(2021年4月7日時点)について、企業概要ファイル「COSMOS2」(147万社収録)などを基に、都道府県別、設立時期、主力事業別、売上規模別等に集計・分析した。同様の調査は2018年9月に続き5回目。
■前回調査はみなし小売電気事業者を含めていたため、前回との比較は、同事業者を除いた数で行った

都道府県別:「東京都」が259社で最多
2021年4月7日時点で登録小売電気事業者に登録をしている「新電力会社」は全国に706社。前回調査の2018年(497社)と比較して209社(42.1%)増加している。

本社所在地を都道府県別にみると、「東京都」(259社、構成比36.7%)が最多。以下、「大阪府」「福岡県」「愛知県」「埼玉県」が続いた。また、地域別で見ると、「関東」(344社、構成比48.7%)が半数近くを占めて最多、以下「近畿」「中部」の順となった。

都道府県別・地域別都道府県別・地域別

設立時期:2015年が71社で最多

 

706社の設立時期を見ると、2010年までに設立された企業が317社(構成比44.9%)。電力業界では、東日本大震災以降、再生可能エネルギーの導入機運が高まり、特定規模電気事業者(PPS)への新規参入が増加した経緯がある。登録小売電気事業者においても、2011年以降の設立が389社(同55.1%)と半数以上を占めている。また、2016年4月に登録小売電気事業者の制度がスタート、そのタイミングに合わせて企業を新設する動きが活発化し、年別での設立社数は2015年の71社(構成比10.1%)が最多となっている。

設立時期設立時期

主力事業別:新電力を主業にする企業増加
706社が手がける主力事業別に見ると、電気事業所やガス事業所、発電所を含む「その他」(258社、構成比36.5%)が最多。次いで「サービス業」(88社、同12.5%)、「卸売業」(82社、同11.6%)、「小売業」(59社、同8.4%)と続いた。また、業種の詳細をみると、最多は「電気事業所」(195社、同27.6%)で2018年調査(112社)から83社増加しており、近年は新電力事業を目的として設立される場合や、電力事業を主業としている企業は増加している。

主力事業別主力事業別

売上規模別:「10億以上100億円未満」が25.6%
706社を売上規模別(5区分)に見ると、「10億円以上100億円未満」(181社、構成比25.6%)が最多。以下、「1億円以上10億円未満」(114社、同16.1%)、「100億円以上1000億円未満」(103社、同14.6%)と続いた。

また、直近3期分の年売上高が判明している企業のうち、電力販売を主業とする「電気事業者」133社を分析すると、2期連続で「増収」となった企業が65社(構成比48.9%)を占めた。電力販売の伸びを受けて半数の企業が事業規模を拡大させていることが分かった。

売上高動向売上高動向

電力価格急騰の影響:4社に1社が支払い猶予受ける
昨年12月から今年1月にかけて電力卸売価格が急騰。市場での調達が困難となったことで、多額のインバランス料金支払いを抱える新電力会社が相次いだ。経済産業省は各社が消費者からの支払いを猶予するなどの対応を取ることを条件に、審査を通った新電力会社に対して電力会社への1月分のインバランス料金を最大9回までの分割支払いを認めるなどの特例措置を発表しているが、4月9日時点で、これら分割支払いの特例を受けている新電力会社は174社(構成比24.6%)と、全体の約4分の1が該当している。

しかし、新電力各社の資金繰りは悪化しつつあり、3月には(株)F-Power、今月には(株)パネイルの倒産が発生している。卸売価格の高騰が各社の資金繰りに与えた影響は大きく、予断を許さない状況が続いている。

インバランス料金の支払いのメドが立たず、倒産に至る新電力が出てくる可能性
電力小売り自由化が始まった2016年4月以降、業界に参入する企業は年々増加しており、2021年4月7日時点で706社に上っている。そしてこれらの過半数は2011年以降に設立、2015年に設立のピークを迎え、近年は2ケタペースで社数が増加してきた。また、電力小売り自由化が浸透するにつれて、新電力事業を主業に据えるベンチャー企業が数を増やし、その半数が順調に業績を拡大させている。

半面、増え続けるプレイヤーによって業界の価格競争も激しくなる一方だ。また、自前の発電設備を持たず電力市場からの調達に頼る新電力会社にとっては、安定した電力確保が死活問題となっている。直近では、昨年末から今年1月にかけての電力卸売価格が急騰。逆ザヤでの電力供給を余儀なくされるほか、電力を調達できなかったことで多額のインバランス料金支払いを抱える新電力会社が多数見受けられる事態に発展した。

経済産業省は電力会社への支払いについて、分割払いを認めるなどの特例措置を取っているが、会社更生法の適用を申請した(株)F-Powerのようにインバランス料金の支払いのメドが立たず、倒産に至る新電力が今後出てくることも予想されている。業界全体の制度見直しも含め、新電力業界の今後が注目される。

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URL
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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月