イチゴに似た表面の凹凸を持つケイソウを発見 琵琶湖周辺でも見つかっていた種、実は新種だった!

概要
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福井県立大学大学院の鎌倉史帆さん(現 奈良女子大)を筆頭とする研究チームは、中池見湿
地(福井県敦賀市)から見つかったハフケイソウと呼ばれるケイソウの一種を、Epithemia fragarioides(エピテミア・フラガリオイデス)として新種記載しました。
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種小名の「フラガリオイデス(fragarioides)」は、走査電子顕微鏡で観察すると殻の表面がイチゴ(属名フラガリア (Fragaria))の表面に似た独特な凹凸をもつことにちなんでいます。
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このケイソウは、これまでにも琵琶湖周辺など日本各地の湿地や河川からよく見つかっていましたが、他の似た種と混同されたりして、新種とは考えられていませんでした。
公表論文
【題 名】Epithemia fragarioides sp. nov. (Bacillariophyta): Formal recognition of a diatom widespread across Japan
(日本各地に広く分布するケイソウの新種Epithemia fragarioidesの正式な記載)
【著者名】Shiho Kamakura, Chisato Nakaji, Taisuke Ohtsuka, Tamotsu Nagumo, Shinya Sato
(鎌倉史帆・中地智里・大塚泰介・南雲保・佐藤晋也)
【掲載誌】 Phycological Research, 74: 57-70. DOI: https://doi.org/10.1111/pre.70020
(2026年1月 29日出版)

発見の経緯
ケイソウは、淡水から海水まであらゆる水環境に生育する単細胞生物で、ほとんどが光合成を行い、地球上の一次生産者として重要な地位を占めています。ケイソウの最大の特徴は、細胞がオパールの殻におおわれていることです。殻の形はケイソウの種によってさまざまに異なっています。
鎌倉史帆さんは福井県立大学の大学院に在籍中、後にエピテミア・フラガリオイデスと命名されるケイソウが、中池見湿地(福井県敦賀市)で大量発生しているのを見つけました。そして長期にわたり観察を続け、多くのケイソウで見られる長期的なサイズ変化が、このケイソウではほとんど見られないことなどを明らかにしました。
同じころ、琵琶湖博物館の大塚泰介は、立命館大学びわこ・くさつキャンパス内の湿地から見つかった同種のケイソウの顕微鏡写真を前に、頭を抱えていました。これまでこのケイソウにつけられてきたいくつかの名前が、全て間違いであることに気づいてしまったのです。しかしこのケイソウは、大塚が琵琶湖博物館はしかけ・たんさいぼうの会の仲間たちとともに集めてきたどのサンプルにも、少ししか含まれていませんでした。そこで大塚は、鎌倉さんにこのケイソウについて情報提供するとともに、詳しい分類学的研究を依頼しました。
鎌倉さんは福井県立大学の研究室の皆さんの協力の下、走査電子顕微鏡観察によって殻の微細構造を明らかにしました。特に殻表面にはイチゴの表面を思わせる独特な凹凸があり、よく似た種とは微細構造が大きく異なることを突き止めました。また遺伝子の塩基配列を調べ、このケイソウがこれまでに知られている種と遺伝的に異なることも明らかにしました。そこで研究チームは、このケイソウをEpithemia fragarioides(エピテミア・フラガリオイデス)として新種記載しました。種小名の「フラガリオイデス(fragarioides)」は、イチゴに似た独特な凹凸をもつ表面構造であることから、イチゴの属名フラガリア(Fragaria)にちなんでいます。そして、本種が特に多く出現する中池見湿地をタイプ産地*1として指定しました。鎌倉さんらはこのケイソウを、中池見湿地だけでなく奈良県の池や温泉からも採集しました。さらに研究チームは、これまで日本中の様々な湿地や河川から報告されてきたよく似たケイソウも、同種であることを明らかにしました。
本研究の成果は、見過ごされていたケイソウの多様性の理解に貢献するものです。また、ケイソウは水環境の指標生物としても利用されるため、本種の発見は中池見湿地をはじめ様々な水辺環境をモニタリングするための基礎的な知見となります。
用語解説
*1 タイプ産地
新種を正式に発表する際、その種の世界的な基準となる標本が採集された場所のこと。
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