こころにスマイル 未来創造パーク 2年連続キングペンギンの人工授精に成功しました!
4月12日撮影:母親と育ての父親と過ごす赤ちゃん
アドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)は近畿大学生物理工学部(和歌山県和歌山市)および先端技術総合研究所(和歌山県海南市)との共同研究において、昨年に続き2年連続でキングペンギンの人工授精に成功しました。2021年2月6日に誕生した赤ちゃんはDNA鑑定の結果、精子を提供したオスの遺伝子を持つことがわかりました。今回の成功は国内3例目(3羽目)となります。現在赤ちゃんは母親と育ての父親とともにペンギン王国で元気に過ごしています。
<ポイント>
- 近畿大学との共同研究で、2年連続キングペンギンの人工授精に成功
- 国内3例目 (1例目 2018年:鴨川シーワールド 、2例目 2020年/3例目 今回:アドベンチャーワールド)
- 今後はキングペンギンの人工授精の成功の実績を活かし、エンペラーペンギンをはじめ、様々なペンギン種の人工授精にチャレンジ予定
〈人工授精成功までの流れ〉
①キングペンギンのオスから採取した精子を、2020年11月29日~12月7日の期間にメスに計5回注入
②メスは2020年12月15日に産卵し、その後2021年2月6日に誕生
③2月27日、DNA鑑定結果から採精したオスの子と判明
④人工授精中、精子提供オスとメスは同室内にて過ごすが、監視カメラから交尾の様子は確認されず、人工授精による誕生と確定
【人工授精により誕生した キングペンギンの赤ちゃんについて】
■出 生 日 :2021年2月6日(土)
■孵化日数:54日
■性 別:オス
■出生体重:215g 現在は 9,492g(4月15日測定)
■公開場所:ペンギン王国2階
■母親 :2002年2月10日 アドベンチャーワールド生まれ(ペンギン王国で飼育)
■精子提供オス:2009年2月 3日 アドベンチャーワールド生まれ(ペンギン王国で飼育)
~赤ちゃんの様子~
3月24日には体重が5kgを超え、親からの吐き戻しだけではなく、魚を食べるようになりました。現在は、保温性が優れており、周りの環境に馴染みやすく天敵に狙われにくくする保護色の意味合いのある茶色の羽根に覆われています。 この後生後約6ヶ月で大人の羽根に生え変わり、 自力で泳ぐことができるようになります。
【人工授精をする目的】
自然繁殖のみでは、特定の遺伝子に偏るなどの問題があるため、遺伝的多様性を保つためには人工授精の技術も必要となります。今後も、自然繁殖と人工授精の併用を進めていき、種の保存への貢献につなげます。
<キングペンギン人工授精の流れ>
※今回の人工授精は精子を凍結せず使用しています。
【今後の展望】
ペンギンの人工授精を始めた頃は、まだ未知の領域でした。
ここ5~6年で徐々に様々な水族館が人工授精にチャレンジし、成功例が出始め、アドベンチャーワールドでも昨年、今年と2年連続成功することができました。この人工授精の成功実績から研究で明らかになることが増え、その内容を沢山の方々が動物のために活用し、最終的に様々な動物の幸せ、日本国内のペンギン、野生のペンギンの幸せに繋がると考えています。
今後はより手法を確立していくとともに、凍結精子を用いた人工授精や、エンペラーペンギンを含む他種での技術確立にチャレンジしていき、未来のSmileに繋がるように取り組みます。
ペンギン飼育スタッフ 佐藤翔太
【近畿大学との共同研究について】
2017年、世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功した近畿大学(大阪府東大阪市)とアドベンチャーワールドがタッグを組み、展示・希少動物の繁殖のための共同研究をはじめとする産学連携に関する協定を締結しました。遺伝子工学や発生工学を駆使した動物生命科学に特化した研究を行う近畿大学生物理工学部では、精子等の遺伝資源の様々な保存技術開発に取り組み、その研究において、入手困難な野生動物の検体やその遺伝資源の確保を進めていました。一方、アドベンチャーワールドでは、飼育下で繁殖が困難な鯨類(イルカ・クジラ)と、高齢化が進むキングペンギンの精子を人工的に採取する技術を確立していましたが、人工授精につながる、精子の運動性を維持した精子凍結保存方法の開発を必要としていました。両者の想いが合致したことから、新たな共同研究の開始に至りました。今回の人工授精は、精子の活性を維持させる希釈液の使用、および精液注入について、近畿大学
先端技術総合研究所のアドバイスの元実施いたしました。現在は、開発したキングペンギン専用の保存液を使用した精子の凍結保存まで完了しており、今後これを用いた人工授精の成功を目指します。
【種の保存への取り組み】
アドベンチャーワールドでは、野生動物種保存のために配偶子(精子・卵子)の保存を行なっています。野生ではすでに絶滅し、動物園や水族館でしか見られない種も存在する中で、配偶子の凍結保存は未来の技術への貢献であり、種を未来に贈り継ぐ可能性を広げる研究として、大学や企業と連携しながら進めています。
これからも動物のSmile(=しあわせ)を追求し、持続可能な飼育・繁殖計画による生物多様性の実現に貢献します。また、質の高い飼育と獣医療を追求し、動物本来の行動や能力を発揮できる環境づくりも進めていきます。
【アドベンチャーワールド ペンギンプロジェクトについて】
アドベンチャーワールドでは、現在8種類約450羽のペンギンが暮らしています。1978年の開園時にフンボルトペンギンとキタイワトビペンギンの飼育を開始し、1990年から自然界で暮らすペンギンコロニー(繁殖群)を再現すべく、「ペンギンプロジェクト」として本格的に飼育・繁殖研究に力を注いできました。アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギン、キングペンギンと繁殖実績を積み、1997年に世界最大のペンギン、エンペラーペンギンの繁殖研究を開始しました。
【アドベンチャーワールド ペンギン繁殖実績について】
1978年 :フンボルトペンギン初繁殖
1990年 :アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギンの卵を搬入 人工孵化、育雛を行う
1992年 :キングペンギンの卵を搬入。人工孵化、育雛を行う
1994年 :ジェンツーペンギン初繁殖
1995年 :キングペンギン初繁殖
1996年 :アデリーペンギン初繁殖
1997年 :エンペラーペンギンの赤ちゃんを搬入、人工育雛を行う
1998年 :ケープペンギン初繁殖
1999年 :ヒゲペンギン初繁殖
2004年 :世界でも2園館目となるエンペラーペンギンの繁殖に国内初成功
2005年 :エンペラーペンギンの国内初繁殖に対して日本動物園水族館協会より「繁殖賞」を受賞
2006年 :キタイワトビペンギン初繁殖。これにより国内最多となる 8 種類のペンギンの繁殖に成功
2020年 :国内で2例目となるキングペンギンの人工授精に成功
【キングペンギンについて】
■分 類:ペンギン目ペンギン科
■学 名:Aptenodytes patagonicus
■英 名:King Penguin
■生息地:フォークランド諸島、サウスジョージア島などの亜南極圏
■食 性:アドベンチャーワールドでは主にホッケ、シシャモなど
■繁 殖:1 度の繁殖で 1 個の卵を産み、足の上にのせ腹部の皮(抱卵嚢)をかぶせ、オスとメスが交代しながら
52~56日抱卵する。
■寿 命:20~30年
■体 長:85~95cm
■体 重:約15kg
■特 徴:頭や胸元の鮮やかな色が特徴。名前の由来はエンペラーペンギンの発見まで最も大きなペンギンとされ
ていたため、キング(オウサマ)ペンギンと名付けられた。
〇アドベンチャーワールド「SDGs宣言・パークポリシー」https://www.aws-s.com/parktheme-sdgs/
アドベンチャーワールドは、「こころにスマイル 未来創造パーク」として、すべての生命にSmile(しあわせ)が溢れる豊かな未来の地球の姿をパークで体現します。パークという”小さな地球”を通して、関わるすべての人の人生が豊かになるように、動物たちの生命がずっとつながっていくように、自然や資源が循環し再生するように、未来のSmileを創り続けていきます。
〇SDGsについて
SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。社会が抱える問題を解決し、世界全体で2030年をめざして明るい未来を作るための
17のゴールと169のターゲットで構成されています。
2015年9月、ニューヨーク国連本部において193の加盟国の全会一致で採択された国際目標です。
すべての画像