肌の水分測定技術の正確性を向上
京都大学大学院農学研究科との共同研究。化粧品の使用効果を正しく把握し、化粧品の品質を上げるための研究。
■研究の背景
肌の水分量を測定するには、電気的な方法や光学的な方法で測定することが一般的になりつつありますが、肌に塗布している化粧品や肌の上にある成分の影響によって、正しい測定をすることは厳密には難しいと考えられています。当社は2016年に京都大学大学院農学研究科との共同研究で、電磁波のテラヘルツ波が物質を透過する性質を利用することで、化粧品など肌の上にある成分の影響を受けることなく、肌の水分量を測定する技術の開発に成功しましたが、この研究を掘り下げる中で、一定の厚さを超えた塗膜の化粧品や油水分が肌を覆っている場合は、この測定法では精度が低いことがわかったため、塗膜の厚みの影響を受けづらい手法を探索することにしました。
■研究内容
テラヘルツ波分光法を肌の水分量の測定に用いていたところ、塗膜に厚みの出る試料を塗布した際に、水分量が低く見積もられる傾向があることがわかったため、試料と装置の間に障害物となる5μm~20μmの厚みの異なる樹脂製フィルムを載せて水分量を計測してみると、厚みに依存して信号が減弱することがわかりました。そこで、補正指標として異なる2種類の周波数で得た信号の比(Aⅽ)を考案して確認したところ、フィルムの厚さが15μⅿ程度までであれば、厚さの影響を受けることなく水分量の測定ができることがわかりました。※厚みの指標の目安としては、家庭で調理に使用するラップが10μⅿ程度、クリームが肌になじんだ時の厚みも10μⅿ前後です。
ここで見いだされた補正指標が、化粧品の開発現場で行われる角層の水分計測に応用できることを確認するため、実際にヒトの皮膚における試料塗布後の計測を行いました。その結果、厚みが生じるワセリン(油分)を試料として塗布した場合も、角層水分が低く見積もられることはなく、塗布の厚みの影響が軽減されたことが確認できました。この補正指標を利用することで、今後、粘度や硬さの異なる多種類の化粧品が与える肌の角層水分量の変化の評価が可能になると考えます。
■発表タイトル
Measurement of Water Content in the Stratum Corneum Passing Over a Coating Formulation Using Terahertz Attenuated Total Reflection Spectroscopy
和文:テラヘルツ波全反射減衰分光法を用いた塗布物で覆われた角層の水分計測
■発表者
株式会社ナリス化粧品 森田美穂・髙田広之 / 京都大学大学院農学研究科 小川雄一
研究者プロフィール
森田美穂(もりた みほ)
株式会社ナリス化粧品 研究開発部 執行役員 フェロー
博士(農学)
― 略歴 ―
東京工業大学大学院生命理工学研究科を修了後、株式会社ナリス化粧品に入社。研究開発一筋23年目。研究業務では、主に皮膚の老化改善研究に従事し、製品への技術搭載はもちろん、学会や論文など社外への情報発信にも精力的に取り組んでいる。
プライベートでは一児(小3)の母。音読課題の感動作で心を洗ってもらっている。
― 職務経歴 ―
2001年: 入社・研究開発部配属。現在まで主にスキンケア技術の開発を坦当。対象は、化粧品・美容機器・ハミガキなど
2014年: リーダー職。 (課長相当)
2017年:日本美容皮膚科学会学術大会にて優秀演題賞受賞。
2018年:シニアリーダー職。(部長相当)
2022年:執行役員。研究開発部フェロー。京都大学博士(農学)。
過去の研究例
●たるみの原因、重力による皮膚表層の細胞面積の拡大を発見(2018年9月25日)
●青色ダイオード(LED)による育毛作用を発見(2017年8月1日)
●テラヘルツ波を応用、衣服だけでなく化粧品も透過。肌の水分測定可能に(2016年10月12日)
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