コロナ禍で苦境の旅行会社、倒産・廃業が前年から倍増 初の年間200件ペースで過去最多更新確実に
2020年度は旅行会社の9割が減収、うち7割が赤字 1年超の需要激減は企業努力に限界も
<ポイント>
旅行会社はこれまで、予約サイトなどネット専業の事業者との競争激化で体力を消耗するなか、新型コロナの流行で強みの団体・法人向け旅行需要を失い、大きな痛手を受けた。一方、政府によるコロナ対策として持続化給付金や雇用調整助成金が効力を発揮したほか、特に2020年7月に開始された「Go Toトラベル」が旅行業界にとって追い風となり、2020年中の倒産や廃業は微増にとどまっていた。
しかし、2021年に入っても単価の高い海外渡航の制限が続いたほか、国内旅行も緊急事態宣言の再発出で稼ぎ時となる3月の卒入学シーズン、5月のGWなど大型需要が2年連続で消失している。こうした厳しい情勢を受け、新規事業への進出で打開を図るケースもあるものの、大手旅行会社でも大幅な減収や巨額の赤字計上といった事例が相次ぎ、苦境の出口は見えていない。旅行会社からも「観光業で人の動きがなく、廃業も出ている」といった声が上がっており、市場退出ペースが今後さらに加速する恐れがある。
旅行会社の業績は9割超で減収、赤字も7割超 オンラインへの対応遅れでダメージさらに拡大
また、減収企業のうち損益動向が判明した企業約300社をみると、約7割が最終損益で赤字、約1割が減益となり、損益面でも影響を受けた企業が8割超に上った。新型コロナの影響で旅行などの移動が大幅に制限され、単価の高い海外渡航や修学旅行など団体旅行も延期や中止が相次ぐなど、全方位で旅行需要が急激に縮小。政府支援策であるGo To トラベルも短期間のうちに停止したことから効果が限定的で、業績への打撃がより大きくなった。
1年超続く旅行需要の激減、企業努力では限界も 需要回復前に体力尽きる「息切れ型」倒産さらに増加
2021年に入り、足元ではお盆シーズンなどの予約が復調傾向といった話題もあるものの、全体では旅行需要が激減したまま出口が全く見えない、極めて厳しい状況が続く。そのため、100店規模の大規模な店舗整理や人員圧縮などの大胆なコスト削減策と、比較的需要の見込める国内旅行へのシフトに加え、本業外の収益確保に向けたテコ入れが進む。
ただ、こうした施策や新規事業の成果が表れるには一定の時間がかかる。既に一時帰休や店舗閉鎖といったコスト削減を行った中小旅行会社も多く、こうした企業では問題の長期化に対応できるコスト削減の上積み策などの選択肢の幅も狭まる。旅行各社からは「ワクチン接種がいきわたり、旅行件数が上がるまで辛抱」など、現在が旅行需要落ち込みの「ボトム」と捉え、コロナワクチンの接種による今後の回復に期待する前向きな声も上がっている。ただ、これまで1年超の忍耐を強いられてきたなか、需要回復より先に経営体力が限界に達するなど「息切れ型」経営破綻がさらに増加する可能性が高い。
- 旅行会社の倒産や廃業、年間200件ペースで急増 1-5月間は90件、前年同期比2倍の水準
- 旅行会社の業績は9割超で減収、赤字も7割 オンラインへの対応遅れでダメージさらに拡大
- 1年超続く旅行需要の激減、企業努力では限界も 需要回復前に体力尽きる「息切れ型」倒産さらに増加
旅行会社の倒産や廃業が急増、 過去初めてとなる200件台到達の可能性も
旅行会社はこれまで、予約サイトなどネット専業の事業者との競争激化で体力を消耗するなか、新型コロナの流行で強みの団体・法人向け旅行需要を失い、大きな痛手を受けた。一方、政府によるコロナ対策として持続化給付金や雇用調整助成金が効力を発揮したほか、特に2020年7月に開始された「Go Toトラベル」が旅行業界にとって追い風となり、2020年中の倒産や廃業は微増にとどまっていた。
しかし、2021年に入っても単価の高い海外渡航の制限が続いたほか、国内旅行も緊急事態宣言の再発出で稼ぎ時となる3月の卒入学シーズン、5月のGWなど大型需要が2年連続で消失している。こうした厳しい情勢を受け、新規事業への進出で打開を図るケースもあるものの、大手旅行会社でも大幅な減収や巨額の赤字計上といった事例が相次ぎ、苦境の出口は見えていない。旅行会社からも「観光業で人の動きがなく、廃業も出ている」といった声が上がっており、市場退出ペースが今後さらに加速する恐れがある。
旅行会社の業績は9割超で減収、赤字も7割超 オンラインへの対応遅れでダメージさらに拡大
帝国データバンクが保有する企業データベースを基に旅行会社の業績を調査した結果、通期予想を含めて2020年度業績が判明した旅行会社約1600社のうち、9割超が前年度から減収となった。減収企業の減収率をみると、3割未満の減収が49.5%(約700社)と最も多かったほか、全体では平均40%の減収となった。一方、前年度から半減以上となった旅行会社は減収企業の約3割、7割超の減収に限っても約1割に上る。
また、減収企業のうち損益動向が判明した企業約300社をみると、約7割が最終損益で赤字、約1割が減益となり、損益面でも影響を受けた企業が8割超に上った。新型コロナの影響で旅行などの移動が大幅に制限され、単価の高い海外渡航や修学旅行など団体旅行も延期や中止が相次ぐなど、全方位で旅行需要が急激に縮小。政府支援策であるGo To トラベルも短期間のうちに停止したことから効果が限定的で、業績への打撃がより大きくなった。
旅行会社1600社のうち9割超で減収、 このうち約半数が3割の売り上げ減となった
「Go To」開始以降も利用者のネット流出が進み、 リアル店舗の浮揚効果は限定的だった
1年超続く旅行需要の激減、企業努力では限界も 需要回復前に体力尽きる「息切れ型」倒産さらに増加
2021年に入り、足元ではお盆シーズンなどの予約が復調傾向といった話題もあるものの、全体では旅行需要が激減したまま出口が全く見えない、極めて厳しい状況が続く。そのため、100店規模の大規模な店舗整理や人員圧縮などの大胆なコスト削減策と、比較的需要の見込める国内旅行へのシフトに加え、本業外の収益確保に向けたテコ入れが進む。
大きなダメージを受けた大手各社は店舗や人員の大幅削減を実施、 デジタルへの集中など経営の立て直しを急ぐ
ただ、こうした施策や新規事業の成果が表れるには一定の時間がかかる。既に一時帰休や店舗閉鎖といったコスト削減を行った中小旅行会社も多く、こうした企業では問題の長期化に対応できるコスト削減の上積み策などの選択肢の幅も狭まる。旅行各社からは「ワクチン接種がいきわたり、旅行件数が上がるまで辛抱」など、現在が旅行需要落ち込みの「ボトム」と捉え、コロナワクチンの接種による今後の回復に期待する前向きな声も上がっている。ただ、これまで1年超の忍耐を強いられてきたなか、需要回復より先に経営体力が限界に達するなど「息切れ型」経営破綻がさらに増加する可能性が高い。
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